≪五節;遺された言葉≫
〔では、それにしてもなぜ―――ガラティアは、こんなにも回りくどい事を・・・?
その理由は、ベェンダーから手渡された、一つの記録媒体に収められていたのです。
そして、それを再生してみた処・・・〕
ガ:『ん〜〜・・・ちゃんと映ってるかな〜? でもまあいいや―――映ってなかったら、も一回やればいいことだしw
ふんじゃ・・・始めるよ〜ン♪』
ジ:姉さん・・・こう云うモノはちゃんと編集して送ってよ―――
ガ:それじゃまず―――これからの相談なんだけどね・・・。
ア:はい―――わたくしなら構いません。
既に覚悟は出来ております・・・。
ガ:うん―――非常に云い答えだ。
それじゃ・・・あんたの娘に対して、遺す言葉を述べて貰おうか―――
ア:・・・ジョカリーヌ―――いえ、女禍・・・あなたがこれを今見ていると云う事は、あなたは自分の巡宙艦(クルーザー)であるシャクラディアに戻り、
わたくしはそこで、仮初(かりそめ)の終焉を迎えている事でしょう・・・
〔でもそこで・・・哀しむ事は不要です―――
その理由を、今ここで申すわけには参りませんが―――・・・
あなたは、これから本当になすべき事を―――ガルバディアを統一し、人々の暮らしが安定した・・・次の段階へと進むべきなのです。
いつまでも、「王」とか「貴族」などが、世を統べるモノではない・・・その象徴(シンボル)としての「王侯貴族」は必要かもしれませんが、それもいずれは・・・
そう・・・これからは総てが平等に―――
富める者も・・・貧しき者も・・・その格差が縮まる事こそが、あなたが望んでいた理想ではありませんか―――
それに、もうその基盤と云うべきモノは整いました・・・あとは、あなたのその手で―――
民衆の持つ潜在能力を奮い立たせ、真の・・・人民達の為に立ち上がるべきではないでしょうか―――
無論・・・そうした時に、大きくなり過ぎてしまった「女皇」としてのわたくしは邪魔―――
老兵は・・・ただ・・・静かに消え去るべきなのです・・・。
アヱカが―――生前撮ったと思われる映像・・・
そこにはジョカリーヌの姉であるガラティアも映っており、この瞬間が訪れるであろうことを予見して、撮られたモノである事が判るのです。
そしてその映像には、とても重要な事―――・・・
最早、王侯貴族による統治や支配は必要とはせず、民衆たちの手に委ねるべきなのではないか・・・
つまり、民主政治のあり方を、切に説いていたのです。
ジョカリーヌも、頭の中にはその事は既に前提としてありました。
10万年前―――その事を始めようと、雌伏していたと云うのに・・・
その事を阻んだ者達―――カルマの手によって計画は先送りにされる結果となり、その事は同時に・・・各地に諸勢力を勃発させるきっかけともなり、
先ずは自分達が根を張っているこの大陸・・・ガルバディアから始めなければ―――と、思っていた矢先に・・・
次々に不都合な事件が重なり合い、殊の外自分がやり遂げようとしていた事が至難の道であった事を、思い知ったモノだったのです。
そして今―――かつての最大の宿敵でもあり・・・現在では最大の協賛者からの協力を受け、ようやくにして出発点に立つ事が出来たのです。
あとはいつ・・・どのタイミングで―――民衆たちを奮い立たせるような檄文を発し、有志を募れるか・・・
また、果たしてその有志が、どこまで自分達の手で―――自分達の暮らしを良い方向に導いていけるか・・・そこなのですが、
そうした心配は、今まで自分達が見てきた事―――いかなる逆境にも耐え、強権にも屈しない強い姿をこの目に収めてきた・・・
随分と遠回りな道程(みちのり)だった―――と、思う反面、そうした彼らの姿を見ることにより、遠回りではなかった事に気付く自分がいたのです。
ともあれ―――偉大なる皇国の女皇の薨去だけは、曲げられない事実であるとし、須らく公表し終えた後は・・・
その大いなる死は、国葬によって大々的に祀り上げられた・・・と、云われたのです。〕
To be continued・・・・