≪七節;「人間」になることの定義≫
〔女禍が―――その過去より持ち続けていた願望とは、「人間になること」なのでした。
それというのも―――実は・・・
この方々・・・女禍を含める三人の姉妹たちは、「人間」よりも霊的因子が高位である、「ノーブル・エルフ」と呼ばれる種なのでした。
この種属は―――かつて、宇宙開闢の刻よりその存在が確認され、非常に稀であるとされており、
かつ能力的にも、他の種族たちと比べても格段に優れていた事から、しばしば<神>と同義に扱われていたのです。
―――が・・・
女禍がかねてから望んでいた―――「人間となる」こと・・・
でもそれは、云い換えるなら―――高い霊的因子を棄て、数段も低い存在になりたがった・・・
もし―――このことが他に知られれば・・・殊の外女禍の姉たちに知られれば、ただで済まされるはずがない。
自分を思い留めさせるために、あらゆる手を講じてくるに違いない―――
そういうこともあり、あたら叶わぬ願い―――だともしていたのです。
けれど・・・過去に宿敵と呼んだ存在が、こんな事をするものとは思いもよらなかった―――
「縁(えにし)」とは、全く不思議なもの―――そう思っていたのでした。
ところで、ではどうして女禍が「人間」という存在に惚れ込んでしまったのか―――
それは・・・過去においても、また現在においても、喜怒哀楽の激しいこの種族を気に入ってしまった・・・
その存在同士が合致しあったときには、まづナニを於いても自分の身を盾にしてまでも庇おうとするのに、
一度(ひとたび)損ねたりすると、まるで存在自体を憎しみ合うかのように、忌み嫌い続ける・・・
また、そうかと思えば他人を労わり、慈しみ、愛し合う・・・
でもその裏では、妬み、羨ましがり、楽をしたい―――と思っている・・・
どんなに蔑(さげす)み―――どんなに貶めても、決して「悪」には染まりきらない愛しき存在たち・・・
どんなに手を焼かされ、困らせられようとも、どこか自分と同じ「性善」なモノを垣間見れたとき―――
やはり自分は、自分の願望を―――夢を―――棄てきれないものだと実感した・・・
そしてこのまま・・・この場にいる者達の手に、総てを委ねる事としたのです〕
To be continued・・・・