≪五節;真に知っておかなければならないこと≫
ヱ:本当に・・・あなたは、あの―――・・・
ア:一応はそういうことにしておいてください―――
わたくしも、今更ながらカルマの方に走れと云われても、あちらではただ浮いている存在なだけでしょうから―――
ヱ:あ・・・ああ〜〜―――いや、そう云うのではなくて・・・
ア:よろしいのですよ―――・・・
ところで大公爵、幾分か話しが逸(そ)れてしまいましたが・・・
ヱ:・・・はあ? この方が―――ヱニグマだ・・・ってコトではないのか??
大:―――当たり前だ、そのようなことならば、余が汝に話しおきさえすればよいまでのこと・・・
ヱ:むう・・・ならば、本題というのは何だというのだ―――
大:それはな・・・これのことだ―――
〔今の女皇陛下が、ヱリヤが知っているヱニグマなる存在である―――・・・
そのことは、もはや重大な案件ではなくなりつつありました。
けれども、その代わりに浮上した重大案件・・・
それが、一つの培養層に保存されている、何者かの生殖器官―――
そう、それが、すでにタケルの精を受けさせた後の、女禍のモノであることを知らされ、
今回の「女皇疾患」の件に係わり、やがては「女皇懐妊」となっていくことを、ヱリヤは知らされたのです。
それに―――・・・〕
ヱ:―――なんだって? あなたがこの場所に・・・?
ア:そうです―――
わたくしのこの身体には今まで通り女禍に入って頂いて、日常の執務などをこなしていただく一方、
後日にはわたくしが懐妊をした―――と触れ込んでしまえばよろしいのです。
その間にも、この受精卵の面倒を見るのは、アストラル・バディとなったわたくし自身、
そして、これより十月十日(とつきとおか)の間、この施設に何者も立ち入れさせないよう、厳重なる警備が必要となってくるのです。
そのためにわたくしは、大公爵にそのことのお願いと、あなた方二人には最低でも知っておいて欲しかったのです。
ヱ:そういうことだったのですか・・・。
ところで今―――「あなた方二人」・・・と? まさか、シュターデンのヤツ―――・・・
大:ああ、わが娘なら、余と一緒に来させておいた。
ヱ:なるほど・・・あいつの意志はなかった―――と、云うわけか・・・。
ア:それはそうと・・・あなた方二人は、女禍も云われていたように、仲がよろしいのですね。
ヱ:・・・え? ああ―――いや・・・
それにしても―――なんだか、手強いのがまた一人増えたような・・・
大:それは云えておるな―――余も、汝のことを知っていただけに尋常な気持ちではなかったのだからな。
〔総てを―――肚の内に何も残さないよう、総てのことをそこで話した・・・
でも、古(いにしえ)のことに詳しい二人でも、ある程度時間がかかったというのに、
果たして現在で理解力のあるタケルや婀陀那たちが、どれだけ判り合えてくれるだろうか・・・
それに、それ以外の者達には、どれだけ説明が必要となってくるか―――・・・
そんな、莫大な時間の浪費をすることを、アヱカは望んではいませんでした。
だから、最低限のことを知っておくのは、限られた人間でよい・・・
大衆には、「女皇懐妊」の噂をちらつかせておけば、事足りるものとしていたのです。
そのことをよろしく汲んだヱリヤは、しかしながら重大なことを知ってしまった重圧に潰されはしないか・・・と、思うのですが、
そんな重みで轢死してしまった事案もないことから、その考えをすぐに払拭させ、
これからは影から官たちの行動に目配せをしていくこととなったのです。
そして―――・・・歳月は過ぎ行き・・・
十月十日(とつきとおか)余り経ったある日、無事女皇は、珠のような女の赤ちゃんを出産したのです。〕
To be continued・・・・