≪四節;待ち望まれた平和な光景≫
〔確かに―――第一部では、カルマとの抗争が主としてあり、云わばその終焉を持ってパライソ国の大陸統一・・・と、云う事になるのですが、
そんなに容易(たやす)く、一つの大陸が一の勢力の下に収まることが出来るのだとするならば、それこそは似非話(えせばなし)―――ご都合主義と云うもの・・・
そう・・・これからは、気になるそのあとの展開―――事実上、他の国家勢力・・・いわば「列強」と対立していたカルマは崩壊、
これにより、ガルバディア大陸に住む総ての住人に安息な・・・平和が戻り始めた―――そんな頃のお話しなのです。〕
ゼ:(ゼシカ;故あって女皇以前のアヱカと知り合い、その伝手でシャクラディア城の保全を務めるようになった、本当は身分の高い人)
―――お早うございます、今日もいい天気ですね。
民:ああ―――これはゼシカさん、毎日精の出ることで。
ゼ:いえ―――これもお勤めですから。
あ・・・消耗したパーツの交換とか、やっときますね。
〔戦が主体だった「本篇」の「第一部」では、その活躍の場が乏しく出演が程遠かったゼシカ=ノーム=ヴェスティアリ―――
しかし彼女自身は、皇城シャクラディアの管理を女皇陛下から一任されており、
また街の構成や保全関係などを一手に引き受けていた「作匠大夫」でもあったのです。
そして今日も―――ある家庭からの依頼で、保全のためのパーツ交換をして回るゼシカの姿が・・・
彼女の努める「将作大匠府」は、主に公的建築物の造営などや土木関係にあり、
この大陸での治水工事や、こう云った高度な技術の修繕などを全般的に取り扱う機関でもあったのです。
そうこうしているうちにひと仕事を終え、昼食を摂る為に国営の食堂へと入るゼシカ・・・
どうして、国の官である彼女が、シャクラディア城内に設けられている大食堂ではなく、町中にある大衆食堂的な処を利用しようとしたのか・・・
実は、それにはわけがありまして―――〕
ゼ:お疲れ様―――結構繁盛しているようね。
ヤ:(ヤノーピル;実はこの者は人間ではなく、レイヴンと云う種族。 しかしやはり故あってアヱカとゼシカと知り合い、国営の食堂の一店舗を任されるようになる。
なお、ゼシカとは種族を超えた夫婦中でもある。)
よぉ、お前かぁ―――どうした、一仕事終えたのかい、じゃあ・・・一杯ひっかけていくかぁ?
ゼ:ゴメン―――まだこのあと三区画ぐらい回らなきゃいけない処があって・・・
ヤ:なんだって―――お前、折角部下と云う奴らがいながら、そいつらを動かしゃいいじゃねえか。
ゼ:そうは云うけどね―――やっぱこの街全体は、私の第二の故郷みたいなものだから・・・
それにね―――やっぱ私じゃないとダメな部分もあるんだ。
ヤ:ヘヘッ―――そう云うだろうと思ったよ、ヘイお待ち! この後疲れにくいように、鶏ガラのスープ多目にしといたぜ。
〔この―――国営の食堂で働く、一人の有翼人の料理人・・・
彼と云う存在もまた、ゼシカとアヱカの影響によってパライソの人間となった、ヤノーピルと云う存在なのでした。
しかもヤノーピルとゼシカは、お互いの相性もよく相思相愛でもあったことから、女皇であるアヱカが直々に認めた異種同士のカップルの第一号でもあったのです。
その仲の好さは周囲の評判ともなり、またこの時でも互いを思い遣っているいい一場面だったのですが・・・
すると―――?〕
誰:・・・そのトリガラスープ、もしかしてきのうのおフロでとったヤツみぅ?
ヤ:ぁあ?! そりゃねぇ〜ぜ―――乃亜さんよぅ・・・それに第一、オレはトリじゃなくてレイヴンなの!
そんなこと云ってるとキツネ丼にして食っちまうぞ?!
乃:(乃亜;フェザーテイル・フォックスと云うスピリッツの一種。
愛らしい姿はしているが、古(いにし)えの皇・女禍の官吏でもあったと云う事から、すでに桁外れの時間を過ごしていることが判る。)
むっ・・・あたちはキツネじゃないでし―――みぅ。
誰:コ・ラ―――乃亜ったら・・・そんなこと云ってやのぷ〜さんからかわないのみゅ!
ヤ:コみゅさん〜・・・オレのことやのぷ〜なんて呼ぶなって―――
ゼ:ウフフ―――今日は、長吏さん。 今日はうちの人の手伝いをしてくれてるのね。
コ:(コみゅ;前述の乃亜と同じ種属、しかも会話を見る内ではコみゅの方が姉であると見られる。)
エヘヘ〜・・・人手が足りないから〜って、やのぷ〜さんからたのまれちったのみゅ。
乃:ねぇちゃん・・・えらいでし―――みぅ。
ゼ:ふぅ〜ん・・・それじゃあさ、長吏さん達のお勧めメニューって・・・ナニ?
コ:そぉ〜〜ですねぇ―――やっぱり・・・
乃:おやこどん―――でしね、みぅ。
ヤ:親子・・・って―――そりゃ厭がらせかい。
ゼ:あ〜そう―――ま・・・参考までに聞いておくわ・・・(ははw)
〔以前からの、このお話しのマスコット的存在―――癒しの定番とも云える愛くるしい姉妹・・・コみゅと乃亜。
その二人が、この食堂にお手伝いに来てくれていたのです。
―――と、これを見ても判るように、パライソでは外征・防衛を行う武官たちの活躍もさることながら、
彼女たちのような内政の内でも、さらに民たちに与(くみ)した行政官の草の根の活動は、まさにこの国の屋台骨ともなるべき重要なものでもあったのです。
しかし―――今回のお話しは、こう云ったことではなく・・・むしろそのあとのこと―――
そう、昼食を終え、午後の仕事をやり終えたゼシカの―――・・・〕
ゼ:(えっ?ナニ―――このアラート・・・)
―――な、なんなの?これ!!
〔内務行政官であり、文官でもある彼女の携行していたツールのアラートがけたたましく鳴り、それを見た・・・
最初はどこかの異常を伝える発信だと思っていたのに、モニターには彼女ですら信じ難いある事実が映し出されていたのです。
ではその信じ難い真実とは―――・・・
その日・・・いつもより早めに出ていた薄色の月は、すでに朱に染まっていた―――と、云われていました。〕
To be continued・・・・