≪五節:異郷の姫君≫
〔それは、ガルヴァディア大陸がパライソ国の下に一つとなり、それから僅かばかりの平穏さを取り戻してきた頃のことでした・・・。〕
シ:お頭―――! 姫様―――! 一大事でございます!!
ナ:どうしたんだシズネ・・・お前がそんなに取り乱すなんて、らしくないぞ。
姫:それより―――私のことをどうして姫と・・・もはやこの地ではそうではないというのに。
〔その日は、一日の始まりから慌ただしさがありました。
それと云うのも、いつもは大人しく物静かな印象を与えるあのシズネが、ナオミ達がいる酒場まで駆けこんできたのですから。
しかし―――いつもは大人しいシズネがこうまで慌ただしい原因とは・・・〕
ナ:なっ―――・・・なんだって??! 母国からの通信が・・・途絶えた?!
ル:そんな莫迦な―――僅か二週間前までは、元気な返事が返ってきたというのに・・・
シ:私も―――そう思いました・・・けれども、五日前に放っていた私の形代が、未だに帰ってこないのです・・・
レ:それは確かにおかしいわ・・・いつもは一日あまりで帰ってきたというのに―――
ユ:そうね・・・それも、カルマが滅んだ今―――?
姫:・・・と、云う事は―――お父上やお母上、それに大臣たちの身に何かが?!
シ:・・・状況から鑑みて、そう捉えるのが妥当でしょう―――
ですが・・・あの「魔の山脈」に隔てられていては、確認を取ることも―――・・・
〔シズネが飛ばしていた形代―――それは、故国を離れた自分たちと、自分たちの本当の出身国である故国とを繋ぐ唯一の手段・・・
それが、最近返ってこないのだという―――
そのことを、ひょっとすると自分たちの故国に何かがあったのではないか・・・と、心配するのですが―――
読者諸兄にはお気づきになられただろうか―――?
ナオミやルリを含む、計六名の本当の姿を・・・
それに筆者は、これまで幾度となく=禽=のことを書いていくのに、「この大陸の人間ではない」―――と、してきたことを・・・
そう・・・それが―――これから明らかとなっていくのです。〕
To be continued・・・・