≪五節;最短最速の克服法≫
―――失礼いたします。
レ:あ・・・あなたは―――!
マ:え〜〜? でもこの人確か〜〜―――
ユ:あなたが・・・あの魔の山脈を克服する術を知るというのですか―――左将軍様・・・
キ:はあ? 私はただ―――ママーシャからの呼び出しに答えてここに着たまで・・・
それよりあなた達がどうして陛下の―――・・・
ヱ:そんなことより―――キリエ、お前最近山登りはしているか。
キ:トラッキング・・・でしたらば、36年前を最後にしていませんが―――
〔入口の葵と茜の確認を受け、入室をしてきた人物―――
それは、パライソ国上級武官である左将軍のキリエだったのです。
しかし、そこにいた=禽=の誰もが、キリエがあの魔の山脈を克服する術を持ち合わせているとは、到底思えなかったのです。
それに―――キリエの上官であり母であるヱリヤからも、一つ解釈を違(たが)えればお遊び的なモノと捉えられなくもなかった・・・
事実キリエは、そちらの方で捉えてしまい、しばらくはやっていない―――と、こう答えたのです。
ところが―――・・・〕
ヱ:いや―――違う・・・もう一つの「アルペン」の方だ。
キ:あれは・・・レクリエーション的な感覚であるトレッキングのように気軽にするべきものではありません。
それにやるとならばそれなりの装備に―――あと、身体づくりにも時間が必要となります。
ヱ:そんなことは判っている―――私が聞いているのは、「最近登っているのかいないのか」・・・だけだ。
キ:―――登ってはいません、少なくともここ10万年は・・・
〔キリエとヱリヤの母娘の会話を聞き、その場にいた=禽=たち・・・いや―――マグレブの民たちは落胆をするしかありませんでした。
そう・・・キリエの発言が虚ではないならば、10万年と云う途方もなく長い歳月(としつき)の期間をやっていないという事は、
それまでに得た経験も総て反故になってしまっているのではないか―――と、思いたくもなっていたようなのですが・・・〕
ヱ:お前たちも―――なにを落胆しているのかは判らないが・・・
私たちにとっての10万年とは短い年月の流れだ、それしきのことで私の娘の技術が損なわれているわけではない。
ユ:技術―――とは・・・やはり?!
キ:その前に―――全く話の内容と云うものが見えてはこないのですが・・・
ヱ:フ・・・なんだ、相も変わらず鈍い娘だ―――
だが・・・まあ、お前も少なからず感じてはいるであろうこと―――アルペンを・・・12,000級の連峰を短時間で克服する術・・・
「アルパインスタイル」(最速攻略法)を会得したお前ならば可能―――だ、と思ったのだが・・・
キ:アルパイン―――・・・それに12,000級の連峰・・・と、云う事は、あのヴァーナムをですか?!
〔正直、中々話の内容と云うものが見えてきませんでした―――
それと云うのも場所が女皇陛下のお部屋であり、見れば丞相や大将軍―――双璧の二人もいれば、マエストロとプロフェッサーもいる?!
しかも、自分の母から質された―――まるで天を支えるかのような連峰の、最短最速の克服法・・・アルパインスタイル―――
あの技術のことを教えてやってほしいという。
それにしても・・・この技術の名称を、今更聞くこととなろうとは―――・・・
キリエは、10万年以上昔に、当時の仲間たちと一緒に編み出し、そして同時に多くの哀しみを背負いこむこととなるこの技術の伝授を、
腕が疼いてくる感覚と同時に、また躊躇(ためら)いもしたのです。
だから・・・こんな言い方でしか、表現が出来なかったのでしょうか。〕
キ:そう・・・ですか―――
ではあなたたち・・・死ぬ覚悟はできているんでしょうね。
To be continued・・・・