≪七節;弑逆と簒奪≫

 

 

〔その男は、内心雲に昇り詰めるような心地でありました。

 

元々自分達の組織を束ねていた、大元の組織の(トップ)の生まれ変わりが、紆余曲折しながらも、自分の下に舞い込んできている・・・

これは最早、自分に対し、総てのモノを与え給うたる「天意」なのではないか―――と、そんな勘違いを起こしても、無理らしからぬことでした。

 

だからこそ、ヴェロー・シファカの(おさ)である「ニド」こと、ニコライ=ドヴォルザークは、自分に与えられた絶好の機会を逃すことなく、ある暴挙に出たのです。

 

そう―――・・・〕

 

 

ニ:―――失礼する。

帝:何事だ、ニコライ・・・こんな早々から、全官僚を招集するとは。

  そのような式典、礼典は、当分組まれてはおらぬ筈・・・

 

ニ:フフフ―――そう云っていられるのも、今のうちだ・・・老いぼれめが。

帝:なっ―――なんだと?! おのれ・・・貴様、自分の君主に向かって、なんと云う口の利き方をするのだ! この無礼者め―――

 

ニ:フン・・・これと云って、何の取り得もないお前が、この国の皇帝になれたのは誰のお陰だと思っている。

  この我ら、「ヴェロー・シファカ」の後ろ盾があってこそだったろうが。

  それを・・・ククク―――まさか、自分一人の力でなれたモノよ・・・と、そう思っていたのでは、あるまいよ・・・なぁ。

 

 

〔ロマリア帝國皇帝並びに、全官僚が集う中、宰相たる者は、物怖じもせずに、自分の主である皇帝に向かって、傲岸不遜の限りをそこでぶちまけました。

その彼の豹変ぶりを・・・皇帝は―――官僚は―――皆、眼を丸くしながら見つめていたのです。

 

いつもならば・・・何一つ文句を云うでもなく、上から与えられた仕事は、着実にこなしてきた、穏健な宰相・・・

()してや、今の様な暴言や、礼を失したかのような態度は、今までにも一度として見せてこなかったのですが、

なにが彼を、そうまでにさせたのか―――・・・これが彼の、本性だったのか・・・

 

その疑問も(さなが)らにして、この目に余る行為をする宰相を、赦せなかった、この国の軍人の一人―――大佐は、

この光景を見て、ある事を思い出していました。

 

以前、この国のことを嗅ぎまわり、(あまつさえ)、国家その者を転覆させようとしていた一族―――ヴァンパイア・・・

その者達を追い詰めた時、ある興味が湧く事実を漏らしていたことを、この時になって思い出していたのです。

 

その、気になる言葉(ワード)とは・・・「あの組織」――

 

当初は、その者達が、苦し紛れに放った言葉か・・・と、思ってはいましたが、

ここにきて、それは思いの外、「真実」であったのだとの思いに至ったのです。

 

そして、現実として、その謎の組織の(おさ)は、今までにも、一度たりとて自分達に逆らわなかった、「イエスマン」同然の男―――

それが、この国の宰相であったこと・・・

しかも、彼自身の口からは、最早言い逃れさえもできない、「反逆」の意志が―――

 

だから、大佐は―――・・・〕

 

 

ニ:・・・何のつもりかな、大佐―――

佐:それはこちらの科白だ・・・今まで通り、従順な(いぬ)の振りをしていればよかろうモノを―――

 

ニ:ククク・・・それで―――? この私に、何かしようとでも云うのかね。

佐:本来ならば、反逆罪は逮捕―――と、云う事だが・・・貴様だけは特別だ。

  今のこの場で、即刻射殺だ!!

 

 

〔大佐の判断により、指揮下にあった兵士達が、暴挙を起こした宰相を取り押さえる為、取り囲み始めました・・・。

その所為(せい)もあってか、現場は異常に緊張した雰囲気(ムード)に包まれ、いつ触発してもいい状況に陥っていました。

 

けれども、当の宰相に、随伴をしていた女性はどこ吹く風か・・・

そんな彼らを見た処で、怖じる感じさえ見せず、ただ刻々と、状況が推移しているのを、見護っている感じさえしていたのです。

 

そして・・・結果は、最早言わずもがな―――この世に、悪が栄えた歴史など、ありはしなかったのです・・・。〕

 

 

 

 

To be continued・・・・

 

 

 

 

あと