<50章>
【今ここでヴェルノア軍と対峙しなくてはならない理由】
今ここでは語られない・・・・決して語られることの莫きある二つの熱い想い・・・
そしてその応答えが――― 一つの国家の軍を介してなされようとしていた・・・と、いうこと。
(早い話、アヱカの身に宿る“あの方”はそのことをよく分かっていたのですよ)
【“古えの皇”、『名将』を斯く語りき】
真に『名将』の誉れを受けるべきは、敵兵を何千何万と殺しうる事ではなく、
味方の将兵をいかにして、どれだけ損害のないようにコトを収められるか・・・
生命をどれだけ奪うか―――と、云ったことではなく、どれだけ活かして帰ってこられるか。
そのことに“古えの皇”は多大なる賛辞を贈ったのです。
―――と、ここで余禄なのではありますが、当時この賛辞を受けた者が・・・
『大尉・驃騎将軍・帝国の双璧“槍”』
『御史大夫・車騎将軍・帝国の双璧“盾”』
『丞相』
―――の、三方なのである。
【行っても必ずしも実を結ぶとは限らない外交に赴く者の胸中】
―――とは申しても、実のところの今回の合戦の意味合いと、この外交の意味合いを、
アヱカの身に宿っている“あの方”は知るところであり、結果もどうなっているかも判った上で申している事。
では―――・・・ならばどうしてそのことを、依り代となってもらっているアヱカには打ち明けなかったか・・・
早い話、この方も“ちょっとドッキリ”が好きなのでして、
久方ぶりに再会をする・・・その顔が驚くのを見たかったのではないか? とも、取れなくはない一場面ではある。
【アヱカのちょっとした憤り】
それが“国を亡くする者の胸中”なのであり、いくら近隣諸国に名をとどろかす『ヴェルノアの公主様』であっても、
どうしてそのことを分かってもらえないのか―――と、いうこと。
【今更ながらに気後れする婀陀那】
・・・なのではありますが―――実際のところでは、再会を心待ちにしているのはみえみえ。
【極度の緊張で一時的に失言症になってしまったアヱカ】
自分でも気付かなかったこと・・・それは、フ国に勝るとも劣らない“列強”の―――
諸百官が居並ぶ殿中に、緊張のあまりに声が出なくなってしまった・・・と、いうこと。
しかし―――そのことで、予期せざる事態になってくるのではありますが・・・
【階(きざはし)を降りてくる公主様・・・】
その『予期せざる事』がこれ―――と、なると、やはりご自分の前でモノも云わない(云えない)事に立腹したのか・・・
ともとれなくもないのですが―――
【≪八節≫でいうところの『件の三人』】
タケルと婀陀那と・・・・女禍様の事。
【ギルドの女頭領=公主様=婀陀那】
こんな処で・・・他国において無様な醜態を晒したこの身―――
そうであるにしても、公主様はなんら卑下をするでもなく、逆に労わりのある言葉を投げかけられてくれた・・・
しかも―――・・・
どこか聞き覚えのあるお声・・・そう思って顔を上げてみれば―――
そこには懐かしの顔・・・以前アヱカが身を潜ませていた『夜ノ街』のギルドという機関の女頭領―――
そう・・・今ここに、ある“縁”は顕在化をなし、やがて一つの大きな光となって総てを導いていくのです―――