}59章{
【それぞれの胸中】
リリアとセシルは―――『亡命してきた』事の由を揚言したイセリアに対し、何も余計な事を言わなくてもいいのに・・・と思っていたのに対し、
イセリアは―――そのことを揚言する事で、今の自分たちが国際的にもどのような立場にあるのか・・・を知らせておきたかった―――
婀陀那は―――イセリアが揚言するまでもなく、リリアたち“雪月花”の三人がこの地に集っている事を掴んだ時点で、確信に至った・・・
タケルは―――そんな彼女たちを見て、ただほくそ笑むばかりだったのです・・・。
【その翌日】
果たして―――あの『亡命してきた』ことを揚言したイセリアは、翌日に婀陀那に呼ばれることとなり、
ならば―――ということで、徹底抗戦する気構えでいたのではありますが・・・
婀陀那の思惑はまた別のところにあり、東方出身者である彼女たちを、クー・ナ方面のカ・ルマ勢の防壁として利用しようとしていたのです。
【ある調略】
ですが―――イセリアとしても、なぜに自分たちが、自分たちを見限った処に・・・と、思えなくもない事もあり、
あまりいい顔をしなかったのですが。
そこのところの事情は婀陀那のほうでもわかっていたがために、イセリアには知る由もないあることを承諾する気になったのです。
それこそが<六節>のあの件。
【計略の裏側】
自分たちを―――不適合な場所に追いやった・・・
しかもその場所とは、この度自分たちが見限って棄ててきたばかりの故国であったのですが。
その者は、大事の前の小事だとして取り合わなかった―――
その者とは、命令を下した婀陀那であり―――この計略を考え付いたタケルであり・・・
そのときイセリアは気付くのでした―――この・・・“ヴェルノアの公主”と、“シノーラ家の嫡流”・・・
この二人の確かな戦略眼と手腕に・・・
そして―――なんと自分たちは、小さな井の中ばかりでなく蛙だった・・・と、云う事に・・・
【“白羽の矢”】
この件――― 一見すると、どこもおかしくないように見えるのですが・・・
実を云うとこの言葉の真の由来は、『自然の神々に生贄に差し出す生娘のいる家の門に立てられた矢』のことであり―――
そう、とどのつまり―――婀陀那は、自分自身をその『生娘』に見立てて、イクに皮肉を云っていたのです。
【フ国・録尚書事】
この度―――リリアたちがハイネスに戻ったのと同時に、フ国ではある最高級施政官の就任の儀が行われた・・・
しかしその者はフ国譜代の人間ではなく、云うなればある者を頼ってこの国に参じた者であるという。
それに、その者の容姿は、この世で二番目に実力のある列強の当主に恐ろしく似通っているという・・・
この国、フ国の最高施政官―――録尚書事に任ぜられた者・・・婀陀那=ナタラージャ=ヴェルノア・・・
その婀陀那某が慕った人物こそ・・・・アヱカであることを、余人は知らない―――
【イクの肚を読んでいたアヱカ】
―――なんて・・・そう云ってしまったら、我らがアヱカ姫が、かな〜り腹黒い人だと思われてしまいますので、
ここで弁解を―――
アヱカがイクをそう感じてしまったのは、件の酒宴の後の事で、
あたら中書監に就いていたこともあり、そういった類の書類に目を通しやすかったのではなかろうか。
それに―――今度はヴェルノアの公主にでさえも、その職を預けようとしている・・・
その言動などを整理分析していく間に、その結論に辿り着いたのではなかろうか。
【時期遅れの初詣】
―――とはしてしまいましたが・・・何もあの場所が『神社仏閣』ではないのであることは、皆様もご存知の通り。
では・・・アヱカ―――ならびに女禍様は、この時期にどうしてあそこへ行こうとしていたのか・・
それからは次回の件であります。
【四征将軍/四鎮将軍】
またもややってまいりました―――
リリアちゃんの『征北』、セシルちゃんの『征西』、イセリアちゃんの『征東』―――
ミルディンの『鎮北』、ギルダスの『鎮東』―――
以上を見てのように、いづれも“征”や“鎮”の跡に必ず『方角』がついてくるのが『四征将軍/四鎮将軍』であり、
<征>には、 征伐 の意味も含まれており、各方面の外的に対してそれぞれが配置される特徴があるのです。
また<鎮>には、 鎮圧 するの意味があり、こちらはどちらかといえば、防衛が主任務だったといえましょう。
共に二品官。