{80章}

 

 

【珍妙な光景】

何とかリリアからの問責を切り抜けたタケル・・・

けれども、彼の本当の正念場は、主君であるアヱカにどのようにして伝えるか―――で、あったわけで、

それは予測に反せず、あたら謝るようにして報告したことを叱責されたのです。

 

しかも、この様子を見ていた婀陀那も、半ばタケルを揶揄するような物言いをしてしまい、

これまた同じくアヱカから叱責を受けた・・・と、云うこと。

 

それに、この二人はアヱカよりも上背があって、

その二人が揃いも揃って小さな主君よりも小さくなって謝っていた・・・

と、いうのを、そう捉えたのだという。

 

 

【アヱカを尋ねてきた不審な二人】

男と女・・・それも騎士特有の鎧を着込んでおり、二人の会話から兄妹ということまでは特定できた・・・

しかし、この二人―――実はすでに死んだ者でありまして、

この物語の一話目で、華々しく玉砕したあの兄妹の護衛・・・

ガムラとマサラ―――だったのです。

 

しかし・・・なぜ―――?

 

一度死んだ人間が、昔日と同じく動いているのか・・・

それが実は、以前にも話題とした 屍術師<ネクロマンサー> の忌むべき業(わざ)であったのです。

けれども・・・?その業(わざ)は、未然に防がれていたはずなのでは―――??

 

 

【屍騎士<デスナイト>】

その大儀はほぼ 歩く屍体<ゾンビー> と同じなのですが、

あまりにも不憫に思ったある方からの施しにより、ココロというものを与えられた・・・

そのココロは、以前と変わりのないもので、自分たちが心配している者への気持ちを露わにさせてくれた・・・

 

けれども―――

 

自分たちは、すでに不義の存在・・・この世にはあってはならない者―――

ではどうすれば・・・

そのとき、“総てを知りし者”である方より授けられた計画により、

ならばその者と一度だけ会うことを赦そう―――

あの子も、判らないはずじゃないだろうから、こちらの意図していることを汲んでくれるはず・・・

 

かくて、ガムラとマサラは、アヱカに会うことは出来たのですが―――・・・

 

 

【哀しき“宿”】

現在の自分たちの有り様とは、実に不思議なもので・・・

片腕や片足を切られてもなんともない―――しかし、疼くような痛みは感じるのです。

それに、お膳立てが小気味の好いように揃えられていた・・・

なるほど―――ここまでは“総てを知りし者”であるあの方の筋書き通り・・・

しかし、そんな彼らでも、アヱカの辛そうな表情を見るのには忍びなかった―――

“屍人”であり、“歩く屍体”である彼らであっても―――・・・

 

 

【タケルの機微】

その彼らと剣を交わらせたとき、ふと感じた違和感―――

確かこの者達は・・・アヱカの命を奪いに来たはず―――

なのに、その剣には殺気というものは込められてはいなかった。

 

そのことをどうもおかしい―――と、感じたタケルは、

物は試しに片腕片足を切り、あることを尋ねてみたのです。

 

そう・・・“痛み”を感じるか―――と・・・

そして返ってきた答えが、よもや“屍人”では考えられなくもない、

“痛みを感じる”というものであった。

 

するとなると、即座にこの者達の真の目的を汲み取り、剣を納めたタケルがいたのです。

 

 

【何かに反応をして目覚めた女禍様】

この原因は二つ挙げられるのですが―――

まづ一つは、二人の屍騎士のかもし出す不浄の存在感―――

もう一つは、“清廉の騎士”であるタケルの闘気と、緋刀貮漣を感じて―――

とも思われなくもないのですが・・・

 

実はそうではなく、この方の宿っている人物といえば―――?

つまりは、アヱカのうちに秘められた何か・・・を感じ取ったからではないだろうか。

(もう一つ余禄的に―――この“秘められた何か”とは、 哀しみ などの感情的なものではなく、もっと別な“何か”。

そのことが、実は<78章>のあのコトに係わってくるものでありまして〜・・・もうこれ以上は勘弁。)

 

 

【もう一つ甦っていたもの・・・“落涕”】

その二人に―――“痛み”と、同時に甦っていたもの・・・それが 涕 。

もう存在の役目を終えていたというのに・・・

両の眼(まなこ)から溢れ出る涕・・・

うれしくて―――うれしくて・・・止めようにも、止められない熱いもの・・・

 

そして、今回のことが誰がやったことなのか、朧げながら判り始めた者は―――

“魂を鎮める”術を使い、この者達を光の中へと誘(いざな)った・・・

 

彼らの・・・涕だけを遺して―――

 

 

 

 

 

 

 

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