【補章U−2――――『九章』;宗教国家】
≪一節;“非戦”・“非暴力”の国≫
〔一方――――その頃・・・・
自国、ラー・ジャの南に位置する、『列強』の一つに入国を果たしてユミエは・・・〕
ユ:さて―――と・・・関もくぐった事だし、後は着替えをして、
シャルナにある、ヴェルフィオーレ(大聖堂)と呼ばれる宮殿(パレス)に、
『白雉』(はくち)を迎えにいかなきゃ―――・・・
〔そこは―――・・・7つある、列強の中で、『非戦・非暴力』をその旨に掲げた宗教、
―――マハ・トマ―――
を国教とし・・・
その国家の元首たる者は、同時にその“宗教”の“教主”でもあるという。
その国の西には、南北を縦断する山脈“ヴァーナム”があり、(ちなみに、この山脈は、北に隣接するラージャに続いている)
さらに、都“シャルナ”から東南東の外れには、霊験あらたかな山、“霊山・ゾハル”が存在するという―――
何よりこの国は、深緑の杜に覆われ、常に神秘なる霧―――“ミスティック・ミスト”が立ち込め・・・・
その神々しさたるや、筆舌し難いものがあったようです。
その―――神秘なる国こそ・・・
―――サ・ライ―――
そして今、この国の国主の下へ、侍女の一人が―――・・・・〕
ナ:(ナユタ=ディーヴァ=シルメリア;5,160歳;?;
この世界の、他のどの元首達よりも長命、それゆえに、多くの喜びや、哀しみを見てこられたことでしょう・・・
そして、事実上“神に最も一番近い人物”と賞される。)
いかが―――・・・しましたか、シズネ・・・・。
シ:(シズネ=アン=レーゼ;21歳;女性;まるで透けるような、透明感のある美の持ち主。)
はい・・・実は、教主様にお目通りを―――と、願っている御仁がおられるので、そのお取次ぎを――――と・・・
ナ:そうですか――― 一体誰なのでしょうか・・・・
とりあえずは、逢ってみる事にいたしましょう。
〔どうやら、この宗教国家の教主様の、ありがたい説法を説いてもらうためか・・・誰か人が訪れたようです。
果たして、それは誰なのか―――
よく見ると、プラチナ・ブロンドの髪を靡(なび)かせ、身には白いドレス・シャツに、真紅のスカートを穿いた・・・・
―――一人の少女―――
と・・・
その傍らには、あのキリエが―――・・・
それを見たナユタの反応は。〕
少:(ニコ・・・)
ナ:こっ―――・・・これは・・・
一体、どなたが見えられたかと思えば・・・。
ヱ:(ヱリヤ=プレイズ=アトーカシャ;彼女については多くを語らじ、『補章T』を参照の事。)
(クス・・・)あら、案外とビックリしないものですね、少しは期待していたのだけれど・・・。
ナ:――――ご冗談を・・・あなた様に比べれば、私など、まだまだ若輩者でありますれば。
〔一見すると、分相応ではない彼女達の会話、5,000年と言う永い年月を生きてきた人物をして、“若輩者”と言わしめた根拠とは・・・・
それはそれとして―――
少女―――ヱリヤを、ナユタに引き合わせたあの侍女は―――・・・〕
シ:(・・・まさか、ゾハル山の主と、その従者が・・・・ここにこられるとは・・・・)
今の世に、何か変革か訪れようとしているのでしょうか――――?
〔すると、その時――――〕
ヒョ――――― ヒョ―――――― ヒョ―――――――・・・・・
シ:(はっ――!この禽の啼き声・・・)
虎・・・鶫(トラツグミ)!!
〔虎鶫(トラツグミ);別の名を、『鵺』(ぬえ)と呼ぶ・・・・。
その、禽の啼き声に反応し、足早に定められたある地点――――コンタクト地点に移動するシズネ・・・・
そう、誰あろう、このシズネこそ、タケル所属の諜報機関『禽』の一羽、『白雉』(はくち)だったのです。〕
シ:やはり・・・こられていたのですか、副長――――
ユ:お久しぶりね、白雉――――
そんなことより・・・上手くやっているようね、似合っているわよ、その服。
シ:ありがとうございます―――
ユ:ところで・・・私が今ここにいる時点で、なんの事かは、分かっているでしょうけれど―――・・・
シ:“帰巣”―――の件ですか・・・分かっています、分かっていますが―――・・・
ユ:(ン?)どうか・・・したの?
シ:はい、これが普通の日なら、難なく応じられるのですが―――
実は、今、サ・ライに滅多と見えられない客人が、お目見えしているもので・・・
ユ:・・・・誰、なの?
シ:“お山”―――と、言えば分かるでしょうか?
ユ:ゾハルの―――!? あそこの・・・主が?!! ここへ―――?!!
シ:はい・・・。(コク)
ユ:そう・・・それは実に厄介ね。
シ:はい、それに、今ここで抜けたりしてしまえば、今までやってきた事が、水泡に帰してしまう惧(おそ)れがでてきます。
ユ:そう・・・そうね、残念だけど、今回は諦めるしか他はなさそうだわ。
シ:いえ・・・それは早計に過ぎることと思います。
ユ:どうかしたの?
シ:恐らく・・・今回お山の主がこられたのは、一時的なもの・・・逗留はしないものと思われるからです。
ユ:でも・・・時間がかかるでしょう?
シ:確かに――― そこで、私めから提案させて頂くのには、
この会合が済み次第、もう一つの・・・フでの活動を、再開させたいと思っているのです。
ユ:フ―――・・・か、確かあそこはあなたと・・・
シ:はい、もう一羽―――鳳(おおとり)―――が勤めさせていただいております。
ユ:昔から―――息・・・というか、水が合うものね、あなた達二人・・・・うらやましいわ。
シ:お褒めの言葉と、とっておきます。
ユ:そっか――――分かったわ・・・。
それじゃあ、私も次のヴェルノアへと急ぎましょう。
〔先の梟――――ナオミに続き、ここでも仲間とは合流は出来なかったようです。
でも、あとのほうで、ガルバディアの中央にある フ国 で合流することを約束にし、
この二人は別れたのです。〕