≪六節;“鵺”のもう一つの諱(いみな)・・・『雷獣』≫
〔そして、ユミエ自身は―――――〕
ユ:はっ―――!
ガサッ―――!
ゴ:おっ?? あっちのほうで音がしたぞ?
ザザ・・・・ザザザ〜〜―――!
オ:へっ――― バカめ、どの地点に逃げてるのか・・・モロバレだぜ。
よぉし・・・三手に分かれて追い込むぞ。
〔自分たちのいた木の枝より、少し離れた地点に、派手に音がするように下り、
しかもこれまた、妖魔たちに分かるように、音を立てながら移動したのです・・・・
ナゼ―――・・・彼女ほどの手練が、こんな初歩的なミスを??
そうこうしているうちにも、袋小路に追い込まれ・・・ですが―――しかし???〕
ザ――――・・・・
グ:ククク―――・・・もう逃げられんぞ・・・・
ゴ:けっ―――! よく見りゃあ女じゃねぇか!! よくもオレ様の頭を足蹴にしやがったなぁ??
いいか―――・・・手前ェら・・・絶対手を出すんじゃあねぇぞ!! この女ァ・・・犯し殺してやるァ!
オ:へっ―――へっ――― その後は、おいら達も輪姦(まわ)せろよ・・・・
ユ:(ニィ・・・)ねぇ――― あなた達・・・今、頭の中で、疚(やま)しい事しか、考えていないようだけど・・・
どうしてこれが、私に誘(おび)き寄せられた―――― と、思わないの・・・
グ:な―――なんだと?
ゴ:オレ達が―――・・・・
オ:誘き寄せられたぁ―――?!
ユ:そうよ・・・お前達は、今からこの“鵺”の『一角雷針』によって・・・・死ぬの――――
〔その女がそういうと――― 急に周囲の草木が騒ぎ出したか・・・の、ように思えたのです。
そして――― その女独特の得物、“一角雷針”と呼ばれる、一見して針のようなものを幾つも出し・・・〕
ユ:はいっ―――
ヒュ――― ヒュ―――――
ト・トス・・・
グ:うっ―――ぐおっ?? (って)なんだぁ?こりゃあ・・・
ゴ:へっ―――痛くも痒くもねぇぜ! こんなちゃちなもので、おれ達を刹そうなんざ・・・
オ:虫が良すぎるのだよ〜〜!
ユ:あら―――そう――― かわいそうに・・・あなたたち、知らないのね、
“鵺”がどういう生物なのか・・・
グ:へっ――――??
ゴ:な―――なんだと??
オ:ど・・・どういう・・・セイブツ??
〔“鵺”とは――― スズメ目に属する虎鶫(とらつぐみ)の異名・・・・
そして、ある魔獣――――
顔は猿
手足は虎
身体は狸
尻尾は蛇
啼き声は虎鶫
と、いう合成生物(キマイラ)の一種・・・・
=雷獣;ヌエ=
でもあるという・・・・。
そして、その異なる名を持つ女は――――〕
ユ:それより―――あなた達・・・私の針をそんなに喰い込ませて・・・本当に痛くないの?
グ:は―――???
ゴ:っッ・・・たりめぇよ! 何しろオレ達は・・・・
オ:お前ら人間とは、体の造りが違うんだってばよ〜〜―――
ユ:そう・・・・痛くないの・・・・。
(フフフ―――・・・)それは当然よ・・・ね、なんてったって、あなた達の神経節・・・私の針で寸断されてるんですもの・・・
〔その身に、鋭利な針を幾つも喰いはぜらせているのに、痛くもない理由とは――――・・・
それは、痛みに対して鈍感というわけでもなく・・・妖魔だから、人間とは身体の構造が違う・・・・と、いうわけでもなく、
その神経が断たれているから――――
そう、その女は嘯(うそぶ)いたのです。〕
ユ:そして・・・最後の一針を、ある経絡に打ち込むと・・・どうなると思う・・・?(ニイィ・・・)
グ:ヒっ??! あ・・・アブね〜ぞ?? この女・・・
ゴ:にっ・・・逃げ――――
オ:ひょえぇ〜〜〜!
ユ:何を今更―――! この顔を見た者を、生かして返すとでも思っていたのか!!
さぁ・・・篤と味わうがいい! 『雷刃』(らいじん)と呼ばれた我が術技を―――!!
〔その女―――自身を“鵺”と呼んだ女が冷たく笑った刹那――――
この三匹の妖魔たちは、自分達の背筋に寒気がするのを覚え・・・その場から逃げ出そうとしたのですが―――
諜報を生業としている者がしてはならないこと・・・・
自分の顔を見られたまま―――識られたまま、相手に去られることに、
ユミエは最後の一投を、ある経絡『精鋭孔』に打ち込むことにより、その者達の身体に痛みを―――
その身体に電流がほとばしるが如く甦らせた・・・・
つまりは、一度相手の神経節を断ち、再び痛みを甦らせる、この術技こそが、
“鵺”の操る『雷刃』と呼ばれるモノだったのです。〕
ユ:(フフ・・・)悪いわね、私の憂さ晴らしに付き合わせちゃったりして・・・。
〔ナゼ・・・このとき“鵺”こと、ユミエはそう嘯いたのでしょう・・・
それは、先ほど言い置いていたことにも関わりがあるのですが・・・そう、『自分の顔を見られたまま―――』に、抵触すること・・・
なぜならば――― もし、それが“わざと”自分の顔を、相手に見せていたとしたなら??
始末―――刹す理由を正当化できる・・・・
その女は、総てを分かっていながら、妖魔たちに素顔を晒し、そして刹した―――・・・・
それは、女に隠された残虐性を物語っていたことに他ならなかったのです。〕
To be continued・・・・