≪六節;どこか―――見たことのある光景≫

 

 

〔その―――どこか・・・ある処にて。〕

 

 

エ:へぇ〜〜ッぶしっ!!(ぐす・・・)

 

へ:おや―――お館様・・・お風邪、ですか??

 

エ:えっ??!(どっきん

  いっ・・・いゃあ〜ただのくしゃみ―――そう!誰か私の噂でもしてんだよ〜。(アセアセ)

 

へ:――――そうですか・・・。

エ:そ・・・そうなんだよ〜・・・。

 

―――ピ・ピッ―――

 

エ:へ???

ソ:6度5分・・・平熱より少々あるようです―――・・・。

 

へ:ほほう―――

 

エ:ええっ?!・・・って、ソシアル?

  お前―――いつの間に・・・私の体温・・・・・を―――・・・

 

へ:今のは、このたび開発をされた、赤外線で御熱を測るものです。

  主な使い方としては、この器具を耳の穴に当て、このボタンを押すだけで測れるという、

  まさに優れものでして―――

 

ソ:そうそう―――つまり、これでは、氷水につけたり〜とかで、ズルは出来ないようになっておりますので・・・

 

エ:うっ―――グッ・・・・

 

へ:それにしても・・・・いけませんなぁ〜〜〜―――エルム様。

  微熱とはいえ、平熱よりも少し高いようではないですか・・・。(ニへら)

 

エ:えっ―――あっ・・・いや、あの〜これは、そのぉ〜〜―――・・・

 

ソ:それより・・・もうお裸で寝るのは控えて下さらないと・・。

  夜半に、お布団を掛けなおさなければならない身にもなってください。

 

エ:う゛・・・・ぎ・・・・・。(滝汗)

 

 

〔そのどこかある処―――とは、ご多分に漏れず、『ヴァルドノフスク』のお城の中。

 

そこで、城主であるエルムがくしゃみをしたから、彼女の下僕兼かかりつけの医師のヘラィトスが、

自分の主の身を案じ、検査を行おう・・・と、したのです。

 

でも、当のエルムのほうは、何か後ろめたいようなことがあるのか・・・中々行わせない様子―――

と、ところが・・・ヘラィトスの助手であるソシアルが機転を利かし、

当時の最新技術を駆使して創られたという、ある魔法術具を使い、体温を測ったところ・・・

 

なんと―――普段の平熱よりも、1度8分も上だったようです。

そこで―――〕

 

 

へ:・・・・・さて――――ソシアル・・・

ソ:はい―――すでに準備の方は整っております・・・。

 

―――がっし―――

 

 

エ:えっ??あ・・・・あれ??

  ち・・・ちょいとお待ちよ、あ・・・あんたたち、私を誰だと思って―――

 

へ:・・・・エルム様―――私どものほうも、あまりこのようなことは、言いたくはないのですが・・・

  また、あのお方とお会いした折に、風邪持ちのヴァンパイア・・・だと、嫌われますよ―――?

 

エ:い゛い゛っ――――え゛え゛え゛〜〜??そ、そんっなぁぁ〜〜――――!!(半泣)

 

へ:・・・・さあ―――そんなことより、これから洗礼を受けるのです・・・(クふふふ・・・)

 

エ:ええっ―――い・・・・イヤイヤ!やめてよぅ・・・

そんな―――そんなぶっ太くて、鋭いヤツ・・・わ・・・私の躰に挿入するなんてぇ〜〜〜!!

 

 

ソ:(そこまで言うかなぁ〜〜〜―――普通・・・)

へ:往生際が・・・・悪いですよ、お館様―――

 

ソ:あっ―――“お方様”・・・

 

エ:えっ―――?あの人??(ぽ

 

 

〔そして―――今回のヘラィトスの看立てで、“風邪”と診断されたエルム。

 

しかし―――単なる“風邪”とはいえ、それは『万病の因』ではあるので、

早期の治療が必要―――と、そう判断したヘラィトスは、なんともぶっ太い『お注射』なるものを取り出し、

それを両手にエルムに迫ってきたのです。

 

すると―――果たしてエルムは・・・それを見た途端になにやら怯えだし、

何とかしてその場から逃げよう・・・と、するものの、ソシアルの口から漏れた、“気になるあの人”の事を聞き、

そちらのほうに振り向いた、その途端――――〕

 

 

へ:それっ―――

 

プ・チュ〜〜〜―――――

 

エ:あ・・・・れ?誰もいないじゃな―――・・・(クル)あ゛〜〜〜ッ!!

  わ・・・私の腕にいぃぃ〜〜〜??!

 

へ:はぁ〜〜―――い、エルムちゃ〜ん、よくガマンできまちたね〜〜

  はぁい、ごほうびの『ペロx2きゃんでぃ』でちゅよ〜〜??

 

エ:う゛っ・・・・ぐぐぐ・・・・・

  ひ―――人を゛ぉ〜・・・小バカにしよッてぇぇ〜〜〜っ(涙声)

 

  こっ―――こんなものっ!!

 

ソ:・・・・それ棄てたら、もうこれからは、おやつ&甘いものは禁止・・・(ボソ)

 

エ:(ピたっ)・・・だ、誰が棄てるっていったよっ!!ぽぉずだよ、ポーズ!!(ペロペロ)

 

 

へ:(はぁ〜〜全くもって難儀な―――)ああ――――そうそう・・・

  ご就寝前には、ちゃんと歯磨きをしてくださいね、さもないと―――・・・・

 

ソ:今度は、牙抜かなきゃならなくなるかも―――・・・・(ボソ)

 

エ:わ――――分かってるわよっ!もう・・・(プリプリ)

 

 

〔下僕達二人からのからかいに、さすがのエルムもカチンときたのでしょうか・・・

折角貰った、ごほうびの飴を、一旦は棄てる構えを見せたのですが・・・

同時にソシアルからの忠告に、それはポーズであることが判明。

 

半ば下僕たちから、白い目で見られながらも、好物である『甘いもの』にむしゃぶりつくのですが―――

主治医のヘラィトスからの忠告と、その助手ソシアルの警告にも似た言葉に、半分むくれながらもその指示に従ったのです。

 

 

こうして――――ヴァルドノフスクの宵は、深々と更けてゆくのでした・・・。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued・・・・

 

 

 

 

 

 

 

あと