≪五節;涕を振り払って―――それでも私たちは明日を征く≫
〔すると、ここで――――・・・〕
リ:(―――と、は言ったモノの・・・私もこの場をどうにかしないと・・・)
キ:・・・・・ちっ、つまらねぇ――――
なんだか、急に興が削がれちまったぜ―――今日のところは退くかぁ〜・・・
リ:(え・・・っ、こ、こいつ―――??)
キ:フ・・・ン――――命拾いをしたなぁ、キサマら・・・
このオレ様はなぁ、無駄な足掻きをする奴のほうが好きなんだ・・・。
そうだろうがぁ〜? なまじ―――無抵抗な奴を縊り殺すより、
無駄だと判りながら向かってくるやつのほうをそうすることのほうが・・・快感だろうがぁ〜〜―――??
リ:くっ―――・・・このぉ〜〜・・・・
(・・・い、いけない―――いけない―――今はこいつの挑発に乗っている場合じゃあないわ・・・
それに―――向こうから退いてくれるというのなら・・・)
キ:フフン〜〜―――キサマも・・・次に合うときまで、せいぜい腕を磨いときな―――
ハ〜〜―――ッハッハッハ!
〔“殿”とは―――最も華があり、同時に過酷でもある任務でした・・・。
しかも、今回は敵の中でも大将筋が出てきていたこともあり、やもすれば現在の自分の命は『風前の灯』・・・
――-にも、似たり・・・とも思っていたところに、
なんとも望むと望まないとにもかかわらず、早くも一興が失われたおかげで、向こうの方でも撤退の意思表示をしてくれたのです。
しかし―――その言葉の端々には、明らかに“挑発”と、取れなくもないものが潜まされており、
一時(いっとき)はリリアも抗戦の構えを見せたのですが、所詮桁の違うレベルの差異に、命を粗末に扱うのは無用―――と、思い、
今は昂(たか)ぶる気持ちを収めたのです。
そして――― 一日経ったクレメンスでは・・・〕
イ:ああ・・・ジュヌーン―――ジュヌーン・・・・(ポロポロ)
セ:(イセリア―――・・・)
――――あ、リリア。
リ:(一晩中・・・泣きはらしたのね―――)
ねぇ・・・イセリア、ちょっと聞いて頂戴。
イ:・・・え―――?(ぐ・・・ず)
リ:あなたが―――今、そんな状態では、この戦線を維持していくのはとても難しいと思うの。
そこで、私の権限で、この砦を放棄することにしたのよ。
イ:・・・え? この・・・砦を・・・放棄・・・する??
なぜ―――・・・あの人が眠るこの地を・・・棄てなくちゃならないの!!?
(キッ――)私は納得がいかない―――!!そんなに棄てたければあなたたち二人でするがいいわ!!
私は―――私の夫になろうとしていた人を、弑したヤツを・・・許しておくわけにはいかない―――!!
〔そこには―――愛しの人を失い、一晩中泣きはらした者がいました・・・。
そして、そんな者を気の毒そうに見つめる者も・・・
けれども、ただ一人―――今ある物事を的確に見つめ直し、それに対処しようとする者からは、
そんな者からしてみれば、とても辛辣とも取れる言葉・・・『砦の放棄』の宣言が―――
そのことに猛烈に反発するイセリアなのですが―――・・・
すると、その時――――〕
パチンッ―――☆
イ:(え―――?)
セ:(な―――・・・)リ―――リリア??!
リ:・・・ナニを甘ったれた事を云っているの―――
最愛の人を失って哀しいのは、何もあなただけではないのよ??!
戦というものは一人だけでは行えない―――私たちに従ってくれる兵士がいてこそ出来るの・・・
それを―――・・・
・・・今回の戦闘では、多くの将兵が死んでいったわ―――その数だけね!哀しみはあるのよ!!
何もあなただけが悲劇のヒロインではないのよ―――?!!
イ:・・・リリア――――
セ:――――・・・。
リ:・・・そこへいくと―――“領土”や“砦”は逃げはしない・・・
奪われたなら、取り返すまで―――でも、今は時期的にも悪いわ。
あの・・・『七魔将』の一人でもあるキュクノスが、この地に居座っている以上は―――ね。
だから、ここは―――ひとまづハイレリヒカイトへ戻って、臥薪嘗胆するべきだわ。
〔不意に―――“月”の宿将の平手が、“雪”の宿将のホホを捉えた―――
そのことに、その場に居合わせていた“花”の宿将は、驚きを禁じえませんでしたが・・・
次にリリアの放った一言は、現状のハイネス・ブルグ軍の士気を、如実に物語っていたのです、
また同時に、多くの悲しみがそこで生じていたことも併せて―――・・・
そして―――リリアは続けたのです。
“土地”などの不動産のものは、また『次回』がある―――と・・・
しかし・・・実はそのことは、彼女自身の言葉などではなく、
古(いにし)えのとある雄将・・・『帝国の双璧』の一人が、言っていたことを拝借しただけなのです。
こうして―――クレメンス方面での戦役は終息へと向かい・・・
大きな痛手を被った三将の軍は、一路、王都・ハイレリヒカイトへと退き上げて行ったのでした。
その―――三・四日後・・・実にあっけないことに、ハイネス・ブルグ側の砦『クレメンス』は、
カ・ルマ軍バロアの守将、ヨミの手によって陥落させられたのです。〕
To be continued・・・・