いくら悪業の限りを尽くしても、何れは「天罰覿面」と、なる時が来る―――
その実禄を、リリア達はしっかりと、両の網膜に焼き付けたモノでした。
それにしてもそこには、一種異様な空気が、漂っているのでした。
『第七銀河太陽系第三惑星「地球」担当管理官』
ジョカリーヌ=サガルマータ=ガラドリエル
『第七銀河系太陽圏方面管区取締統括責任者』
ジィルガ=エスペラント=デルフィーネ
『第七銀河系統括理事長』
ガラティア=ヤドランカ=イグレイシャス
この、三人もの女性が、背負っている「肩書き」こそは、「第七銀河系」の「治安」「警察」は本より、
「流通」「経済」「教育」「司法」等―――「運営」全体を任されていた事に、他なりませんでした。
しかし、それこそが、ジョカリーヌの本来の役目・・・
「一つの惑星」・・・と、云う、限られた内で細々と経営をしていくのではなく、もっと広域的に―――・・・
つまり、何れは、他の「宇宙」を相手に手広くやって行こう―――と、云うのが、目的なのであり、
「地球」も、そう云った意味では、「フロンティア」と云う「開拓事業団」の、「事業拠点」の一つでもあったのです。
とは云っても、「地球」は、どちらかと云えば「辺境」に属しており、そう云った意味では、「宇宙海賊」達の格好の「根城」にも、なり易かったのです。
その事を証明する、判り易い事例として挙げられるのは、現在から100万年前の過去、「地球」に「事業拠点」を築こうとした「フロンティア」と、
やはり同じく、「地球」を自分達の「根城」にしようとした、「ブラック・ウィドウ」の間で、激しい衝突を起こしてしまったのです。
結果としては、「フロンティア」が「ブラック・ウィドウ」の撃退に成功し、「地球」は、「フロンティア」の管轄下に置かれたわけですが・・・
この「衝突」のお陰で、「フロンティア」側も甚大な被害を被り、どうにか自力で「開拓事業」を起こそうとした時には、100万年もの時間を費やさねばならなかったのです。
そして今回も、「広域指定犯罪組織」に指定されていた、「グリフォン」の構成員二人が、
ジョカリーヌ達の監視の目を盗み、「隠れ家」を作ろうとしていた処、何者かに邪魔に入られてしまった・・・
その「何者」かこそ、500年前の当時、活躍をしていた『リリア』だったと云う事なのです。
それに、「グリフォン」の上級幹部だった「ナグゾスサール」も、当時は、まだ未開だった「エクステナー大陸」に目を付け、
そこから自分達の「根」を張ろうと画策していたのですが、偶然、当時の『リリア』と出くわし、互いの主張が食い違って、衝突をしてしまった―――
それがどうも、真相だった様です。
こうして―――その後の歴史を見る限りでは、「リリア」にしろ、「ナグゾスサール」にしろ、その存在の確認が取れなかったことから、
「共倒れ」・・・或いは「相討ち」になってしまった・・・。
けれどそれでは、前回のお話しで、ジョカリーヌが云っていた、「友人の殺害」とは、大きく食い違ってきてしまうのです。
では、ジョカリーヌほどの人物が、虚偽申し立てをしたのか―――
実はそうではなく、結論からすると、「嘘は吐いていない」のです。
その説明は、これから為されるのですが・・・取り敢えずは―――
リ:・・・なあ、しの―――お前・・・確か、親父さんの仇、取りたかったんだよなぁ。
し:あっ・・・え〜〜と―――
・・・なんかもう、どうでもよくなっちゃった―――て、ゆうか・・・
市:そうですね、なんだか見ていて、非常に気の毒に思います。
た:〜よ、のう・・・あの御仁も、なにもここまでせんでも―――
秋:あ゛〜〜・・・
(〜に、しても・・・こりゃ、ひでぇ―――ってなもんじゃねえな・・・。
後の報告も、なんだか面倒な事になりそうだし・・・見なかった事にするしかねぇかな、こりゃ。)
蓮:(それにしても・・・拙者達が束になろうとも、敵わなかった相手を、まるで赤子の腕を捻るが如き―――とは・・・)
見るも無残な姿にされ、今まで、亡父の仇憎し―――で、動いた者でも、一気に溜飲を下げてしまう始末・・・
それどころか、そんな目に遭わされた者に対し、同情の視線まで注がれてしまっていたのです。
ですが・・・これで後は、グワゴゼウスを、「(宇宙の)警察機関」に引き渡せば、万事解決・・・丸く収まるのです。
・・・が―――
なんとここで、ガラティアが、「ある提案」を持ち出してきたことから、展開が二転三転としてきたのです。
では・・・ガラティアが持ち出してきた、「ある提案」―――とは・・・
第百話;思惑と思惑の狭間で
ガ:ちょ―――いと待った。
ジ:はい? なんでしょう・・・姉さん。
ここで後は、三者立ち会いの下、犯罪組織の構成員を、宇宙の警察機構に引き渡すだけ・・・の、段取りになって来た時、
ガラティアが、待ち時間を利用しての、ある「とんでもない事」を云い始めてきたのです。
その事に、ジョカリーヌは勿論、一度は溜飲を下げたしのも、大反対をするのですが・・・
実は、ガラティアの真の目的は、妹の顔見たさだけに留まらず、ここ最近、自分が提唱する「ある理論」を確立させる為の、実証検分を行おう―――と、していたのです。
しかも、その「理論」を確立させる為に、「実験台」となった人物は―――・・・
ガ:ねえ〜リリア殿・・・ちょいと、こいつと「勝負」をしてみる気はないかい。
リ:・・・は? 私―――が? こいつと??
ガ:それに、あんたは強い者には眼がないんだろ〜う?
そこでだね―――私が提案するんだが・・・リリア殿とグワゴゼウスとの、「真剣勝負」―――
リリア殿が勝てばそれでよし・・・だけど、グワゴゼウスが勝っちゃった場合は、今回の事には「恩赦」を与えよう―――と、こう云う事なんだよ。
ジ:ン・なっ―――なんですってええ??
こっ・・・こんなヤツに、「恩赦」―――赦すと云うのですか!!?
し:そ・・・そんなの納得いきません! だったら、ボクが代わりに―――
ガ:お前の方は、どうなんだい・・・条件としては、これほど好いのは、ないと思うんだけどねぇ〜♪
一体、何を云い出したりするものかと思ったら、ガラティアは、リリアとグワゴゼウスの、「一対一」の真剣勝負をセッティングしたのでした。
しかも、勝利した者に与えられる条件としては、一方的に、グワゴゼウスに分があった・・・
つまり、グワゴゼウスが勝てば、「無罪放免」も有り得る―――と、までしたのです。
その事には、異論は紛糾しましたが、ガラティアは敢えてそれらを耳に入れず、当事者の一人であるグワゴゼウスに訊ねたのです。
すると、当然のように、こんな・・・またとない絶好の機会―――「好餌」を逃す手はなく、
グワゴゼウスは、なんら疑うことすらなく、ガラティアからの「提案」に、乗ったのです。
ですが・・・ガラティアの性格をよく知る、この二人―――ジィルガとユリアは、
俄然、乗り気でこの提案を出した者の真意を、ようやく理解する処となり・・・
デ:(なるほど―――それでお姉さま、態々こんなヤツの為に、降臨きたわけね。)
ユ:(だとしたら・・・この人に秘められた、特性とは―――)
リリアが、グワゴゼウスに刃が立たないのは、先刻実証済み・・・
だからこそ、絶好の条件を提示されたグワゴゼウスは、ガラティアからの提案に、好反応を示したのです。
ですが・・・それが、仕掛けられた「罠」―――だったとしたら・・・?
それが、先程の、ジィルガとユリアの「思惑」だったり―――なにも、ガラティアも、「不利な条件での勝負」を、申し立てたわけでもなかった・・・
つまり、この勝負で、リリアが勝利することは、「総てを識りし者」であるガラティアにしてみれば、既に分かっていたことだったのです。
では・・・なぜ、ガラティア自らが、実証検分を行わないといけなかったのか―――・・・
それは・・・リリアが秘めていると云う、「ある特性」―――
彼女自身ですら、まだ気付かないでいると云う・・・だから、あと、ほんのひと押し―――背中を押してやる役目・・・
それが、ガラティアだったのです。
とは云え―――心配する者を余所に、一対一の真剣勝負は始められ・・・
グ:フフフ―――これは、敵ながら感謝せねばなるまい・・・。
先に、礼を云わさせて貰うぞ―――
ガ:おや、そいつはありがとう・・・
けどね、感謝したいのは、寧ろ私の方なんだよ♪
なにしろ、近く「学会」があるからねぇ〜―――♪
そこで、私が新たに提唱する「理論」が、認められるという「証明」を、あんた自身の身体で、して貰えるんだからねぇ〜〜♪
グ:―――なんだと?!!
ガ:始めえぇ〜!
ガラティアの本性が垣間見えた瞬間―――「謀られた」と覚ったグワゴゼウス・・・
しかし、時すでに遅く、真剣勝負の幕は、切って落とされたのです。
=続く=