広大なる―――大宇宙・・・大銀河・・・
そこには、「広大」であるが故に、様々な思考や思想があり、そしてまた、「善」と「悪」とに偏った者達も集ったモノでした。
その内でも、明確な位置づけにある「善」と「悪」―――つまり、「警察機構」や「犯罪組織」等は、旧き時代から反目しあってきたモノだったのです。
ですが・・・「善」を司る、警察内部でも、「汚職」や「腐敗」が広まり、
云ってしまえば、「警察」そのものが、「犯罪組織」の出先機関になり下がってしまう処も、そう少なくはなかったのです。
そこで―――太陽系方面を管轄するジィルガは一計を案じ、「正規の警察」が踏み込めない事件を解決するため、「正規ではない警察」・・・
所謂、「秘密の」警察組織を立ち上げる事を、計画したのでした。
而してその組織は、「外部」の犯罪組織は云うに及ばず―――「内部」の、警察組織の腐敗した部分も排除する・・・
その為には、「超法規的措置」―――つまりは、「殺人」すらも厭わない、「粛清の為の組織」でもあったのです。
けれど、勿論こうした措置は、「容疑者逮捕」が困難だと想定された場合、現場レベルの判断で―――
それも、当事者が、事後責任を持った上で臨む事が、前提条件とされていたのです。
そして、この組織の活躍ぶりは、「内」「外」問わず広まることとなり、否応なく、心に邪しい事を抱える者達の心胆を、寒からしめるまでになり―――
その者達より、畏怖と侮蔑の意を込め、こう―――呼ばれたのです・・・
第百二話;Diva
「ディーヴァ」・・・それは、「歌姫」や「舞踏をする姫」の他に、ある宙域では、戦闘や様々な能力に特化した、「古の女神」―――と、呼ばれていました。
それに、この「ディーヴァ」を構成する者達は、様々な職に就いていたのです。
例えば・・・銀河系第13分署の署長である、マリア=ルヴィ=モルガンは―――・・・
マ:最近、業績があまり伸びていない様ね。
―――そう云えば、昨日、強盗に入られたと云う、コンビニエンスの聞き込みは誰が? それに・・・容疑者の手配は??
警:署長〜〜無茶云いなさんなって―――只でさえ、人員削減された上に、それに反比例して・・・
警:私らの仕事の量ばっか増えて来て―――はぁ〜い!今から行きますって・・・
はあ〜あ、郵便の誤配・・・うちの管轄じゃないのにな・・・。
マリアが署長を務めている13分署―――その分署がある惑星「オンドゥ」は、それなりに経済が流通し、それなりに住民がいた処でした。
なのに・・・分署に配属された人員は、驚くほど少なく―――とてもではないけれども、周辺宙域で起こった事件は尚の事、この惑星で起こった事件の対応でも手一杯だったのです。
それに、こんな状況だと判っているからか・・・力なく肩を落とすマリア―――
その眸には、最早「ヤル気」の光の片鱗すら見い出せる事はなく、冴えない管理職を演じたモノだったのです・・・。
そんなマリアも、警察に入り立ての頃は、他の誰よりも、熱く―――正義感に燃えた一人・・・
だった・・・の、ですが・・・
永年蓄積―――更には、報道される数々の不祥事を目の当たりにするに至り、嘗ての熱い正義感はどこへやら・・・
今では、すっかりと、やさぐれた態度が板についてしまったのです。
ですが・・・先程も紹介したように、こんなにもだらしのない―――頼りのない彼女が、「非合法警察組織」の、エース・エージェントだとは・・・
余人は、知るべくもなかった事でしょう・・・。
それに、先程の説明にもあったように、「ディーヴァ」なる組織は、「警察官」だけではなく、他の職業・・・
例えば―――・・・
児:おはよ〜ございまーす! シスター様。
シ:はい、お早う・・・
いつも元気ね〜だからと云って、あんまり急いじゃダメよ―――急ぐと・・・
児:あっ!
・・・〜いったあぁ〜・・・ああぁ〜〜ん・・・
シ:ほらほら、云ったばかりじゃないの―――
でも、一人で立てるでしょ。
児:・・・うん―――
シ:ほぉら―――偉いわね〜一人で立てたじゃない。
それじゃ・・・先生と一緒に、行きましょか。
児:―――うんっ!
惑星オンドゥにある、「教会」―――「ハタルドーミ」・・・
その「教会」に務める「修道女」ヘレン=サピロス=カーネギーは、同じ「教会」の敷地内にある「修道院」の先生でもあり、
また、子供たちにも人気があるのでした。
それに・・・今のやり取りを見ても判るように、ちゃんと子供達の目線まで下りて、優しく諭してあげていた・・・
だから、子供達にも人気があり、子供達は皆、優しいヘレンが大好きだったのです。
でも―――お忘れでしょうか・・・
今回のお話しの内容は、何の変哲もない、シスターや警官の有り様を描いたモノではなく、
「表」ではない―――「裏」にて暗躍する者達の、活躍ぶりを描いているのだと云う事を・・・
では、得てしてなんの繋がりすら見えない、二人に共通する項目とは―――・・・?
マ:―――はい、こちら13分署・・・
・・・誰かと思いましたら―――ええ、その時間帯なら空いていますが・・・
はい、判りました、では、23:00に、中央の噴水に―――ですね・・・
それで―――今回の相棒のことなのですが・・・
13分署の署長室に入ってきた、一本の連絡―――・・・
その連絡の対応一つを取ってみるのに、どうやらマリアは、深夜に「好い人」と、「おデート」―――と、云う感じもしないでもないのですが・・・
それがそもそもの間違い―――
それと云うのも、今の「連絡」、それ自体が―――・・・
そんなマリアも、黒革のロングコートを羽織り・・・
この彼女の出で立ちを見ても判るように、この「深夜の待ち合わせ」が、「恋人達の逢引き」等ではない事が判るのです。
だとしたら・・・マリアは、一体誰と待ち合わせていたのか―――
それは、「相棒」―――
つまり、あの時入った「連絡」とは、マリアが所属する、もう一つの組織―――「ディーヴァ」のモノだと云う事が判るのです。
そうしている内に、マリアの下に、もう一人の仲間が―――・・・
しかも、その「仲間」とは、なんと―――・・・
ヘ:はあ〜・・・まぁた、あんたと組まされる事になろうとは・・・ね。
マ:なによ、その言い草―――それはこっちのセリフよ。
それに第一・・・私達は同じ惑星に住んでいるんだし、私達を統括する「シャクテイ」にしてみれば、都合いいことこの上ないでしょ。
へ:あ゛〜〜・・・ん・で? 例のコンビニ強盗のアジト―――割れたの?
マ:ええ〜お陰さまで・・・とは云っても、警察の力じゃなくてね、私達「ディーヴァ」の一人でもある、「サラスヴァティ」の手によって・・・なんだけどもね。
ヘ:・・・案外、当てになんないわね―――警察って・・・
マ:あ〜ダメダメ―――大体、捜査内容とか、相手に駄々漏れなんだもの。
それにね〜〜そんな事やってくれちゃってるのが、寧ろ上層部の連中なのよ?
うちの連中なんか、それはも〜よくやってくれてるわ、それとあとね・・・・
ヘ:あ゛〜はいはい―――判った判った・・・
(まずった・・・地雷踏んずけちゃったよ・・・)
少し大きめの黒眼鏡を掛けているとは云え、今回のマリアの「相棒」とは、ハタルドーミ教会のシスター、ヘレンなのでした。
しかも、ヘレンの口調も、昼間の優しいモノとは正反対・・・
それに、マリアとは長い付き合いでもある事が、二人の会話からは見え隠れしていたのです。
けれど・・・教会の修道女であるヘレンが、どうして「裏社会」などに・・・
そのことを、簡単に―――しかも明確に説明してしまうと、
実は、ヘレンは、シスターが本職などではなく、寧ろこちらは、「本来の職」を隠す為の、云わば「隠れ蓑」・・・
では、そんなヘレンの「本職」とは―――
泣く子も黙る「賞金稼ぎ」・・・
ですが、一度「ディーヴァ」からの要請がかかると、「パールヴァティ」としての役割を全うするのです。
そして、一方のマリアも、昼間の冴えない管理職とは別の顔―――・・・
「ディーヴァ」のエージェント・コード、「ドゥルガー」として、仲間の「パールヴァティ」と共に、今回の任務・・・
コンビニ強盗に鉄槌を下すべく、事件の解決に臨むのです。
=続く=