宇宙を席巻―――また、地球をも自分が所属する犯罪組織の足掛かりにしようとした悪党は、ここに捕まりました・・・。
―――が、同時に、数多くの疑問も、そこで噴出してきたのです。
その最たる例が、奇しくもその場にいた、リリア=デイジィ=ナグゾスサールに係わるモノだったのです。
どうして―――地球出身の彼女が、『ナグゾスサール』と云う、縦しんば「外宇宙」とも思われなくもない「姓名」を名乗っていたのか・・・
どうして―――現在を生きる彼女が、『リリア』と云う、500年ほど前に実在したと云う、人物の「名前」を名乗っていたのか・・・
その事が、これから明らかにされようとしていたのです。
リ:いや〜っはは・・・これで良かったん・・・だよ、な?
し:そうですね・・・お父の仇は討てなかったですけど、これで良かったんです・・・よ、ね。
人間とは、誰しも、自分の手に余り過ぎる事実・現実に直面した場合、これを回避しようとする傾向にある・・・これを「現実逃避」と云うのです。
今の二人は、自分の目の前で起こった―――或いは、起こしてしまった当人でもあった為、とても現実には受け止められはしなかった事でしょう。
ですが、これらの事実は、実際に起きた事象であり、そこから逃げてばかりはいられないのです。
しかしそれは、リリアやしのだけに限らず、蓮也や市子・・・そして、秋定も同じ事が云えたのですが、
只一人、たまもだけは、流石に年齢も経験も豊富だったものと見え・・・
た:(年齢のことは、あまり触れて欲しくはないのじゃが・・・)
それより、ガラティア殿・・・と、申されましたかな、お主は色々と事情を知っておりそうじゃから、そろそろ話して貰えぬか―――のう・・・?
ガ:フフ―――どうやら、興味は尽きない・・・と、云った処の様だね。
いいだろう、今回は特別に大盤振る舞いだ。
ジ:―――姉さん?!!
デ:お姉さま・・・
ガ:但し・・・条件がある。
条件付きの情報公開―――これには、余り賛同しかねるモノだと思いましたが、
有耶無耶のままではいられなかった為、条件の提示の方は後回しで、その提案を受け入れたのです。
それでは・・・今回の「核心」の部分―――
なぜ、今回の因子が、「リリア」なのか・・・
それは、「このお話し」の「主人公」だから・・・と、云ったような、「ご都合主義」などではなく、
現在から凡そ、500年前に起こった、「ある事件」が、物事の発端となっていたのでした。
あれは―――・・・現在から凡そ500年前・・・
地球のほぼ中央に位置する、「ガルバディア大陸」を中心に、
「西」の「ランド・マーヴル」、「東」の「ロマリア大陸」が、「ある意志」の下、一つになった頃の出来事でした。
当時、リリア=クレシェント=メリアドールは、ガルバディア大陸を統一した「パライソ国」の官僚の一人であり、
また、ランド・マーヴルを統一した「マグレヴ」の発展にも貢献した、名のある人物でもあったのです。
それに、三大陸でも指折りの美人でもあり、武芸の腕にも長けていた・・・
しかし、その事に彼女は満足しなかったのです。
それと云うのも、外見などでちやほやされるのは、自分の中身を知られていないからであり、
確かに、知人や伴侶などは、リリアの「良さ」と云うモノを知ってはいましたが、所詮それは、限られた内での話しであり、
そんな事に、リリアは満足はしなかったのです。
それに、リリアは―――この世に生を受けてからの性格が、元からそうだったと云うのではなく、
「そう」思うようになり始めたのは、紛れもなく「後天的」・・・つまり、何者かによって「作用」されて来てしまっていたのです。
そして、その「何者か」・・・も、すぐに判明する処となり―――
リ:あ・・・そう云えば―――私も、この人に会ったお陰で、「そう」思うようになって来たもんなぁ〜。
ジ:いや・・・私は何も、そう意識したつもりはなかったんだけど―――・・・
ユ:ウフフ・・・何を申されているのやら・・・
そのあなたに、一番に感化されたと云うのは、このわたくしだと云いますのに・・・
パライソ国初代統治者「女皇」の跡を継いだ「大皇」・・・ジョカリーヌ=サガルマータ=ガラドリエル。
この人の「人間性」が、「過去のリリア」に作用していたのは、先ず間違いはなかったのです。
閑話休題―――・・・
では、500年前の当時、リリアの身に起こった「ある事件」とは・・・
第百三話;未来への作用・前篇
或る時、リリア=クレシェント=メリアドールは、偶々、シャクラディアに来ていたガラティアに会い、そこである提案をしたのでした・・・。
リ:失礼します―――
あの・・・ガラティア様、折り入ってご相談があるのですが。
ガ:ふむ―――なんだろう。
リ:実は・・・ですね、私も、女禍・・・いえ、今はジョカリーヌ様ですが、あの方の為にお役に立ちたいと思っているんです。
ガ:ふぅん・・・でも、リリア殿は、随分とあの子や私達の為に、貢献してくれているじゃないか。
リ:確かに・・・そう―――なんですが・・・
正直な話し、ここではちょっと物足りなくなってきちゃったんです。
ガ:フフ―――面白い事を云う子だ・・・
「物足りなく」なってきてはいても、決して「三大陸」は狭くないと云うのに・・・
けど―――どうやら、リリア殿の「開拓魂」に、火が付いちゃったみたいだしね。
そうだねぇ・・・じゃあ、取り敢えず一つ頼みごとをするとしよう。
リ:本当ですか?! 有難うございます―――!
そこで、ガラティアから示された場所が、この当時、まだ「フロンティア」も手を付けていなかった場所・・・
「南方」の、「エクステナー大陸」だったのです。
それに、リリアが、「フロンティア」が関与している場所から離れたかった、本当の理由と云うのが、
正直―――「英雄扱い」には、うんざりとしていた・・・
街中や、街道を歩いていても、他人からの羨望の視線を集めてしまう・・・
確かに当初は、優越な気分に浸れはしましたが・・・ある程度の期間が過ぎてくると、逆に鬱陶しさを感じて来てしまった―――
それに、「英雄」は、どこで何をしていても、「善」でなければならない・・・
喩え、モノの弾みなどで、信用を失墜させるような行動をとってはならないのです。
そんな事に、急に窮屈感を覚え始めたリリアは、良き夫であるハミルトンと相談をした結果、
今まで慣れ親しんだ大陸よりも、自分達も知らない・・・未知の土地に移り住むことで、可能性を見出そうと云う事に決めたのです。
つまりそれは・・・新天地での「挑戦」―――
知らない土地、知らない人達、知らない環境の内で、何かしらの可能性を見出そうとする事は、
まさしく「開拓魂」そのモノでもあったわけなのです。
こうして・・・住み慣れた土地を離れたリリアとハミルトンは、仲間達から心づくしの贈り物を手に、
新天地である「エクステナー大陸」の、「ラダトゥーィユ」と云う場所に、着いたのですが・・・
リ:はぁ〜〜殺風景―――見事に何もないわね・・・
ハ:ですが、逆に遣り甲斐も出てくると云うモノです。
それに・・・住人がいないと云うわけでもなさそうですしね。
取り敢えずは、ガラティア様から頂いた、「ハウス&プラントユニット」を展開させる事にしましょう。
元々、優れた官僚であり、長年連れ添ってきた、良き夫であるハミルトン―――
そんな彼は、実にドライな性格で、何があっても動じなかったので、同僚の女性からは時折醒めた目でしか見られていませんでした。
けれど、そんな処が、リリアとは相性が好かったモノと見え、この夫婦が喧嘩―――口論になった処は、皆無と云っていいほど見られなかったのです。
そして、ラダトゥーィユに移り住んでから、2・3年の内は実に順調に行ったモノでした。
作物の収穫も・・・周辺住人との交流も巧く行き、やがては、二人の人柄を慕って、近隣に集まる者達も増えてきました・・・
が―――・・・
そんな時に、この「事件」は起こったのです。
=続く=