見た目の印象を、一変させてしまう眸―――「鬼眸(き が ん)」・・・

それが過去に、リリア=クレシェント=メリアドールが、シュトゥルム=ドミチェリ=ナグゾスサールより受けた、「(のろい)」の正体でした。

 

まるで魔族の様な、得てして不気味なモノは、リリア当人ですら厭だったものでしたから、それが他人だったらば、どれだけ不気味がられた事でしょう。

 

それに他人は、「気にはしない」とは云いながら、どこか遠巻きにし―――どこか侮蔑をしている・・・

そう―――嘗ては自分達が、「公主」と呼ばれていた人物に対し、そうしてきたように・・・

 

だからリリアは、それからと云うモノ・・・滅多と他人前(ひ と ま え)には出て来なくなってしまったのです。

(けれどリリアの代わりは、夫であるハミルトンが務めてくれたため、どうにか事なきは得た様です。)

 

 

とは云え・・・いつまでもそうしているわけにもいかず、意を決したリリアは、ロマリア国のユリアに、この相談を持ちかけたのです。

 

 

 

ユ:(!)リリアさん・・・その()―――

リ:いやハハ・・・ちょっとヘマしちゃってね―――・・・

 

ユ:これは・・・「カース」の一種ですね、それでどう云った者達に―――・・・

 

 

 

対面での相談事だったので、知られないと云うわけにもいかず、ユリアもまた、今回はどう云った用件で、リリアが相談を持ちかけたかを理解しました。

それに、リリアをこんな目に遭わせた「首謀」を、知るに至っては・・・

 

 

 

ユ:なるほど―――「グリフォン」の・・・

  あの者達が、もう既に、ここまで行動範囲を広めていたとは・・・

リ:え・・・? ユリアさんは知っているんですか?

 

ユ:知っているも何も―――わたくしは元々、そう云った存在でしたから・・・

  でも、今回はリリアさんの活躍のお陰で、彼らの出鼻は挫かれたと見ていいですわね。

 

  それよりも・・・手を講じなければならないのは、あなたの()の方・・・

  あんなにも美しかった「碧蒼(ターコイズ・ブルー)」の眸が・・・汚らわしい闇の色に染まってしまうなんて―――

 

  でも、御心配なさらずに・・・(さいわい)、こちらには「名医」がいますから。

 

 

 

リリアの身に起きた不幸を、親身になって心配してくれるユリア・・・

けれど、元々の彼女は、一時期、宇宙を席巻していた、有名な悪の組織・・・「黒衣の未亡人(ブ ラ ッ ク ・ ウ ィ ド ウ)」の首領だっただけに、

そうした「悪のネットワーク」にも通じていた事にも、無理らしからぬ処があった様です。

 

それよりも、ユリアが紹介した人物を、実はリリアも知っていたのです。

それもそのはず―――()だ、自分が現役の将校で、幾多もの戦場を疾駆していた時代、非常に世話になっていた「軍医総監」でもあったのですから。

 

しかもこの人物、実は以前にもこのお話しに登場済み・・・

そう―――市子が失明寸前までの重症だった時に、治療をしてくれた・・・あのヘライトスだったのです。

 

それに彼は、現在ロマリア国に籍を置いている、ヴァンパイア達とも深い関わりがあったのを知っていた為、

リリアも、それを頼って、ユリアに相談を持ちかけていたのです。

 

そこで・・・早速、ヘライトスに診て貰う事になったのですが―――・・・

 

 

 

リ:えっ?? お金を取るの??

 

ソ:何もそう驚かなくても〜当たり前じゃないですか〜。

キ:そうです、何も私達も、慈善事業(ボ ラ ン テ ィ ア)でやっているわけじゃないんですから。

 

リ:それにしても・・・請求金額(こ     れ)―――1億プラティーネって・・・ちょっと多過ぎじゃない?

 

ヘ:そんなはずはありませんでしょう―――第一あなた様は、今までにも随分と、パライソに貢献してきたではありませんか。

  ですから、今までにも随分な報奨金等が、あったはずです。

  そこを思えば・・・1億と云う額は、実に些細なモノでしょう。

リ:「些細」〜〜って・・・あのねぇ―――そんな、他人事(ひ と ご と)みたいな事、云ってくれちゃってるけれど、

  こっちも、エクステナーに移ってからの費用は、莫迦にならないのよ?

 

ヘ:・・・では、この話しはなかった事に―――

 

リ:あ、あっ―――ちょ、ちょっ・・・わ、判ったわよ!

  ああ〜ん、もう・・・馴染みだったから、すっかり油断しちゃってたわ・・・。

 

 

 

なんとも、当時でも破格の金額を請求されてしまい、お陰で、思わぬ出費に「青息吐息」のリリアが・・・

けれど、これからの事を思うと、背に腹は代えられなかった為、この症状による治療費を、全額前払い―――しかも、「即金」で支払ったのです。

 

 

ところが・・・この「(のろい)」―――当時のヘライトス達の技術を(もっ)てしても、完治するのにはとても困難を極めていたと見え、

治療を始めてから、(およ)そ一年と半月後には、支払われた全額が、リリアの手元に戻されたのです。

 

その意味を即座に理解し、リリアは―――・・・

 

 

 

リ:どうしたの・・・ヘライトス―――どうして、返金を・・・

ヘ:申し訳ございませんが、リリア様・・・今の私共の技術では、とても完治までは見込めない為、こうして返しに参りました。

 

リ:どうして―――どうして、そんな・・・

ヘ:代わりに―――と、云っては何ですが、この話しは、マエストロ様やガラティア様の方にもしておきました。

  ですから、この私個人の手から離れ、今では三者共同によって、この治療法の確立に専念をしている処なのです。

  なに・・・宇宙一の頭脳と評するあの方達ならば、きっと何か良い手立てが見つかりますよ。

 

 

 

早い話し、リリアが受けた「(のろい)」は、ヘライトス一人ではどうにもならなかった・・・

そこでヘライトスは、この話しをジィルガやガラティアに持ち込んだのです。

 

すると二人は―――持ち込まれたカルテやデータを見るなり、リリアが受けた「(のろい)」の厄介さを、即座に指摘したのです。

 

 

 

デ:これは・・・結構根が深いわね。

  遺伝子レベルまで融合しちゃってるじゃないのよ・・・。

ヘ:ガラティア様と同じ様な事を―――・・・

 

デ:あら、お姉さまも?

  それじゃ、打つ手は一つね―――所謂(いわゆる)、「末代まで祟る」レベルを、「そうであると錯覚させる」ようにするのよ。

  まあ〜気の長い話しになってくるけど、こう云ったモノは、結論だけを急ぎ過ぎてしまって、(かえ)って深刻化するケースもあるからね。

 

 

 

()しくも二人とも、同じ結論に達し、同じ治療法を云ってのけた―――

けれど、その事は逆に、その治療法が限りなく正解であることを示していたのです。

 

そしてその事を、ヘライトスはリリアに打ち明けました。

 

残念ながら・・・リリア自身や、次の子の代―――そして、曾孫(ひ ま ご)の代までは、色濃く残ってしまうけれど・・・

年代を経た子孫には、影響が出難(で に く)くなってくるだろう―――・・・

しかし、非常に興奮をしたりなどして、感情や精神に異常を()たした・・・と、身体機能が感知した場合は、その限りではない・・・

―――と、念は押されたのです。

(而してその事とは、現代のリリアが持つ、例の特徴「そのもの」でもあるのです。)

 

 

第百五話;未来への作用・後篇

 

 

しかし―――ここに一つ疑問として残ってくるのは、現代のリリアの名も、どうして「そう」なのか・・・と、云うと・・・

 

 

 

ガ:要するにだね、あの子は、自分が受けた例の「(のろい)」の事を、子孫であるあんた達に、忘れて貰いたくはなかったんだよ。

  だから・・・現代(い ま)のリリア殿もそうだし、リリア殿のお母上も、そのまたお母上も「リリア」・・・

  そして、「ナグゾスサール」って云う「家名」は、一体どんな奴から、こんな仕打ちを受けたのか・・・も、忘れて貰いたくなかったんだろうねぇ。

 

  しかし、まあ〜・・・それと、今回の一件と、密接な関係があっただなんてねぇ〜〜いやぁ、偶然とは怖い怖いw

 

ジ:姉さん・・・ウソ()かないでください。

 

ガ:あ゛はw バレた?ww

デ:バレますわよ〜、大体、さっきからお姉さまの頬、緩みっぱなしじゃないですか。

 

た:いやはや、それにしてもですな―――今となっては、そなたらの云う、「条件」の方が気になるのじゃが・・・

 

ガ:なに、難しい事を云おうってんじゃないんだよ。

  あんたらもそろそろ、地球の外に出てみないかい―――ってことなんだよ。

 

 

 

ある程度の覚悟はしていた・・・とは云え、そんな突飛もない事を云われたのでは、皆、言葉を失ったモノでした。

でも、よく考えてみれば、ジョカリーヌ達が進めていた計画は、まさにその事の突端であり、「いつかは・・・」と、思っていたことだったのですが、

その「いつか」は、思わずも直近の話しになってきていたのです。

 

それに、そうした事は、ジョカリーヌの方から止めてくれるだろう・・・と、思っていたのですが、

ジョカリーヌにしてみれば、二人の姉が降臨してきた時点で、「ある計画」が発動するモノだと思っていたのです。

 

では、その「計画」とは―――・・・

 

 

 

ジ:私達はこれから、宙外(そ と)から交流を求めてくる者達と、接触をする準備に入る。

  「文化」や「物流」など、元々「地球」にはないモノが、清濁(せいだく)併せ呑む(かたち)で入ってくるけれども、

  そんなモノを、「水際」で見定めることも重要なんだ。

 

デ:その為に―――「地球」の衛星である「月」を、そうした「関門」に定め、私達の許可を得た者達と、交流を深めよう―――と、こう云う事なのよ。

 

ユ:でも・・・一部には、「()だ早計に過ぎる」と云う意見もあるのですが。

  お忘れですか、もう既に、「地球(こ ち ら)」としての意見は出ているのですよ。

 

 

 

実は・・・ジョカリーヌは、常磐を訪れる前、エグゼビア大陸のトロイア国を訪問し、ここ最近で、「北の評議員」になったばかりのイリスを説得し、

この計画実行を了承する為の許可を得ていました。

 

そして・・・残るはあと一人―――

けれどリリアは、敬愛する人物が、何に向かって邁進していたかを知っていた為、敢えて異論は差し挟まないでおいたのです。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと