ほんの少し前の宇宙で・・・ある存在の名が噂になり、ある特定の者達を戦々恐々とさせていました。

 

なぜならば、その存在とは、「暗殺者」であり、その業界では「ウイッチ」の名で呼ばれていた、非常に有名な者だったのです。

 

そう・・・もうお分かりの様に、「特定の者達」とは、「暗殺者」に、契約時に決められた金額によって、命を狙われる羽目になってしまった者達の事。

その多くは、「大企業家」や「大資産家」が占めていたのです。

 

だからこそ、大金持ち達は、その名を聞くと、夜も枕を高くして眠れたものではなかったのです。

 

冷血にして無慈悲―――決して、命乞いの際の、金品の取引などでは、説得できるような融通の利いた性格ではない・・・

 

しかしながら、その事は逆に、依頼をする側の「商売敵」や、大企業家や大資産家に、非常に深い恨みを持つ者達にしてみれば、

「確実性」は非常に重要であり、仕事が惹きも切らなかったのは無理らしからぬ処でもあったのです。

 

 

ところが・・・ここ数年の間、その暗殺者の活動は、あれだけ騒がれていたにも拘らず、まるで音沙汰が無くなってしまったのです。

 

その「きっかけ」は、「ある依頼」を境に―――でした・・・。

 

それにしてもどうして、依頼された件に関しては、常に「パーフェクト」で、仕事を終えさせた後も、その痕跡すら残さない仕事ぶりに関しては、

後の捜査を担当する「警察機関」にしてみれば、頭痛の種ともなる一因でもあったのに・・・

 

そんな「ウイッチ」が・・・「ある依頼」を境に―――

惑星「クーレ」に住む富豪、「ロックフェラー家当主殺害」を期に、口の端にも昇らなくなったのは、どうして・・・

 

それに、実は、この「依頼」に関しては―――「impossible(未 遂  ・  未 完)」のままなのです。

 

ならば・・・「ウイッチ」は、この「依頼」に失敗し―――そこで生を終えた・・・そう勘繰られなくもないのですが、

一部の機関内では、そうした、根も葉もない・・・デマの様なモノが横行していたのも、また事実だったのです。

 

しかし・・・それはデマなどではなく―――そう云い切って差し支えのない、動かぬ証拠である「写真」が、

とある星系の、軍部関係者の間で取り沙汰されていたのです。

 

 

それは・・・「ウイッチ」が初めて依頼に失敗し―――その時期の前後に、「ある富豪」・・・「ロックフェラー家」で撮られたと見られる、一葉の「写真」でした。

 

では・・・その「一葉」に隠された、「秘密」とは―――・・・?

 

 

 

曹:―――何でありましょうか、大佐殿。

佐:同志軍曹・・・これを見たまえ。

 

曹:「一葉の写真」―――で、ありますか。

  これが何か・・・

佐:見て、何か気付かんか―――・・・

 

 

 

それは、「写真」―――それも、「ロックフェラー家当主」と、「お抱えのメイド」らしき人物が、収まったモノ・・・

「普通」に見れば、別にどうと云った事のない、ありふれた「一葉」でしたが・・・

 

そこに、異様なる雰囲気を醸し出している「者」を、「戦争」を生業(なりわい)としている者達は、見逃しませんでした。

 

そう・・・「ウイッチ」は―――

 

 

 

曹:実に、良い眼をしております・・・

  てっきり足を洗ったか―――死んだモノと思っておりましたが・・・

佐:フ―――・・・奴が、そう簡単にくたばるわけがなかろう。

  だがまさに、これは「野獣の眼」―――それも、「血に飢えた」・・・な。

  それを、この「一葉」は、ものの見事に証明してくれている。

 

  それに・・・どこの誰が、あんな噂を流したのか―――これで見当が付くと云うモノだ。

 

 

 

その「写真」には、「ロックフェラー家当主」と共に、お抱えである一人の「メイド」が映り込んだモノでした。

そして、その(なか)の二人は、仲睦まじげに笑っていたのです・・・。

 

ですが・・・よく目を凝らして見ると―――その(なか)の一人は、その笑った表情の奥底に隠された、獰猛性・狂気を、隠しきれないでいたのです。

 

そう、つまり・・・「暗殺者」は、事の経緯がどうであれ、現在では、ロックフェラー家が召抱える、メイドになっていた・・・

 

しかし、それはどうして―――?

 

 

 

ミ:メイベル―――ちょっとこっちへいらっしゃい。

メ:はい―――なんでしょうか、ミリヤ様・・・

 

 

 

それはそうと―――場面を一転させて・・・

ここは、クーレにある、ロックフェラー邸での一場面・・・

 

当家が召抱えるメイドであるメイベルが、主人であるミリヤからの呼びつけで、彼女の下に参じた様です。

 

・・・と、これを見る限りでは、極自然な流れ―――の、様に、見えなくはないのですが・・・

 

実は、それが間違い・・・つまり、メイベルはまた、何かしらの失態をやらかして、

見かけの上でも、自分よりも年端のいかない、大富豪の幼き当主から、お説教を受けていたのです。

 

そう、メイベルは、メイドであるにも拘らず、不器用でした・・・。

お料理・お掃除・お洗濯・・・と、云う、メイドに欠かせないスキルは、何一つ持ち合わせてはおらず、

おまけに・・・何もない処でよく転ぶ―――等の、そう云った、軽微の失態をやらかすに際しても、よく他人を巻き込んだり・・・と、「天然お騒がせ娘」でもあったのです。

 

では、なぜ・・・彼女は、自分に不釣り合いな、この職に就いた・・・?

なぜ・・・ミリヤは、当家に召抱えても、得の一つにもならないメイドを、雇い入れた・・・?

 

それは「秘密」―――

ならば、その「秘密」こそが、彼女達の「ファースト・インプレッション」に、あったのだとしたら・・・?

 

 

第百九話;初めての出会いは、刺激的に

 

 

彼女達の最初の出会いは・・・奇しくも、暗殺者「ウイッチ」が、その活動を休止せざるを得なくなった、まさに「あの時」にあるのでした。

 

そう―――メイベル=ヴァイオレット=フォルゴーレこそは、()の暗殺者「ウイッチ」であり・・・

さある「依頼」により、「ロックフェラー家当主」ミリヤ=アゲット=ロックフェラーの命を、狙っていたのです。

 

つまり、メイベルは、最初にして最後の、「Mission−Impossible(依    頼    失    敗)」を冒した経緯により、

今ではすっかり、ロックフェラー家の飼い犬になり下がってしまっていたのです。

 

只一つ―――メイベルの弁護の為に云うのならば・・・

実はメイベルは、依頼を「失敗」したのではなく、未だもって、その依頼は「継続中」でもあるのです。

 

だとしたら・・・なぜメイベルは、自分にとって不都合・不名誉とも云える風聞を、否定しないのか―――

なぜ・・・命を狙っていたはずの、当家の当主の下に、仕えるような真似事をしているのか・・・

 

それは・・・まさに、メイベルが、ミリヤの命を奪うべく、彼女の寝室に侵入した時から、始まったのです。

 

 

自分の眼下にて―――涼やかな寝息を立てている一人の少女を見て・・・メイベルは、少なからず動揺をしていました。

今回の依頼人から聞かされていた、「標的(ターゲット)」のイメージとは、何千年と、ロックフェラー家の当主として君臨し、

周辺宙域の政治・経済を裏で操る、「老獪な黒幕」・・・の、はず―――だったのに・・・

 

その「老獪な黒幕」と、この少女の名は、驚くまでに一致をしていたのです。

 

すると・・・自分の命を奪うのに、躊躇(た め ら)いをみせていた暗殺者に気付いたのか・・・

ミリヤが目を覚まし―――・・・

 

 

 

ミ:・・・・・・フ・フ―――深夜のご訪問なんて・・・また随分と久方ぶりだこと。

  そうね・・・ここ最後に覚えているのは、1500年前のことだったかしら・・・。

 

 

 

1500年前―――と、一口に云うけれど・・・そこにいた少女の(なり)をした者の姿は、少女の姿のままでした。

 

しかも、延命調整や生体強化を行っている感じも見受けられなかった―――・・・

 

ではどうして、目の前の人物は、少女の姿のままで居られたのか・・・

 

その「謎」は、ミリヤの出生から―――彼女が持つ異能まで、次々と明らかになって行くのです。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと