全く別の場所で進行する、二つの展開・・・そのそれぞれが、やがて一つに交り合う時、そこには様々な可能性が見出されてくるのです。
各宙域からの交流契約を獲る為に、ジョカリーヌと共に、地球の窓口とも云える、「月の裏側」に来ていたリリア達は、
必然的に、ある報道を耳にするのでした。
ジョ:―――なんだって?! グワゴゼウスが釈放??
そんな莫迦な・・・
リ:グ・ワ・ゴ・ゼ・ウ・ス・・・ああ、あいつね。
またあいつ、なんかやらかしたのか? それより、「釈放」ってなに・・・
デ:「保障金」・・・まあ早い話しが、多額の金銭を積めば、捕まえた奴を野に放てられる―――と、云う、悪党にとってはとても素晴らしいシステムだ。
リ:あにい〜? それじゃ―――私が苦労してあいつを捕まえたのは、一体なんだったんだよ!
デ:正確には、お前ではないだろうが。
だがまあ・・・この先、ひと荒れもふた荒れもしそうだな。
折角、ガラティア・ジィルガ・ジョカリーヌの三人が、「グリフォン」の幹部である、ストゥク=カイエン=グワゴゼウスを拘束したと云うのに・・・
他の何者かの謀らいで、すぐに野に放たれたと云うのは、他ならぬジョカリーヌやリリアにしてみれば、大変ショックな報せでした。
なにより、こうしてまた一人、悪党が更生されずに、野に放たれたと云う事は、宇宙の秩序を遵守するジョカリーヌにとっては、甚だ遺憾であり、
すぐさま姉である、ジィルガに連絡を取ってみた処・・・
ジィ:「そうなのよ〜全くもう―――なんてことしてくれちゃったのかしらねぇ・・・と、云いたいところなのだけど、
こんな事もあろうかと、もう既に手は打ってあるのよ。」
ジョ:本当ですか―――?!
ジィ:「ええ〜。」
「そ・こ・で―――これから示す、ある人物に会って欲しいのだけれど・・・いいかしら?♪」
ジョ:え? ・・・ですが、その間ここは―――・・・
ジィ:「ああ〜ら、だから、デイドリヒちゃんを、そこへと向かわせたでしょう?」
一番上の姉であるガラティアの次に、物事をよく識る人物・・・他者は、彼女の事を、総じて「マエストロ」―――と、呼ぶのです。
しかも、ジィルガの情報収集能力は、姉の「それ」をも凌いでいると云われており、その為、「洞察」「観察」「予測」等の能力値が特化しており、
姉や妹が、立ち居ることが難しい、「闇社会」等にも顔が利く人物でもあったのです。
それに、ジィルガが、自分の部下であるデイドリヒを、ジョカリーヌの下へと送り込んだのも、強ち、今回の様な事を視野に入れていた―――とも、思えなくもなかったのです。
とは云え、「外宇宙との交渉」と云う、一見一聞にしても大変な作業を、デイドリヒ一人で行うと云うのは、到底無理なのでは・・・と、思われた時―――
デ:フ・・・何を今更、私と対峙した事のあるお前達なら、私の正体など知っているはずだろう。
市:そう云えば・・・複数の腕を持つ―――
ジィ:「そればかりじゃないのよね〜この子は♪」
「ほら、フードを取って、見せてお上げなさいな♪」
ジィルガからそう促され、被っていた外套のフードを取ると、そこには・・・同じような顔を、もう二つ者の姿が―――
「多面」にして、「多手」―――得てしてそれは、常磐でも昔から伝わる、或る意味では「神族」としても捉えられている、「ある存在」を彷彿とさせていたのです。
蓮:「阿修羅」・・・すると、そなたは、「神」の類か??
デ:フッ・・・なんとも面映ゆい。
だが、この身体的特性のお陰で、多数を同時にお相手出来てね―――
専ら、私の一族は、こちらの方面で重宝されているのだよ。
まあ・・・私は、その内でも出来損ないで、ヤンチャぶりが目立っていたので、ああ云う事に駆り出される機会が多かったわけだが・・・
これで納得が行ったかな。
常磐に、旧くから伝わる「神仏像」の一体に、「阿修羅」なる存在がありました。
その存在は、元々、戦闘を得意としており、ある面では「神」の類、ある面では「鬼」の類として、二面性のある捉え方をされてきたモノでしたが、
或る宗教では、「仏陀」の教義に入り、神の眷族となった―――と、云う、少し曰くつきの存在でもあったのです。
そんな存在と―――身体的特徴を同じくにするデイドリヒも、「そうではないか・・・」と、思いたくもなるのですが、
デイドリヒ本人の口からは、自分の一族達は、こうした身体的特徴を有意義に活かし、多方面で活躍しているのだと説明があったのです。
しかし、そう・・・そんな彼がいるのだとしたら、どうしてもっと早く―――最初から、そうしなかったのか・・・
その事については、今度はジィルガから説明があり―――
ジィ:「ちょっと、今回の裏を取るのに時間が必要だったのでね―――「サラスヴァティ」に、今回の真相について、全容を洗わせていたのよ。」
「サラスヴァティ」―――この名を聞いて、「ピン」と来た方は、多いのではないだろうか・・・
そう、ジィルガは―――・・・
ジョ:「サラスヴァティ」が・・・? すると姉さんは、もう既に―――・・・
リ:はあ? 何云ってんだよ―――全っ然、判んね〜よ!!
「サラスヴァティ」とは、総ての「芸術」「文化」に通じ、知能・知性の象徴であるともされている「女神」であり―――「ディーヴァ」の一人・・・
そして、いかなる電波侵入防壁を無効化し、侵入する・・・「電脳侵入」の天才にして、情報収集のプロフェッショナルだったのです。
つまりジィルガは、事態がこうなる事を予測し、自身が創設した「秘密機関」を活用していたのです。
第百十三話;交り合う接点
それはそうと―――こちら、惑星・オンドゥでは・・・
署:署長〜! 本庁から、例の書類を提出するよう、矢の催促です―――!
マ:判ってるわよ〜〜今、作っている最中だってーの!
署:署長〜! 社会に貢献した人物の表彰式―――どうします?!
マ:だぁ〜かぁ〜らぁ〜! 今、書類の作成中だって云ってるでしょうに!!
―――あんた、暇してるんだったら、代理で行ってきなさい。
・・・ああ〜ん、辺境の分署だから―――って、ちっとは楽出来ると思ってたのに〜〜嘗めてたわ・・・。
辺境の分署とは云えど、オンドゥは流通・交通の要衝であり、実に様々な事件や事故が舞い込んできていたのです。
又、それにより署長の仕事も多種多様にしてあり、警察の仕事への情熱・意欲も、やや冷めかけていたマリアにとって、この現状は溜息が出るばかりだったのです。
でも・・・こんな時にでも、容赦なく署長への連絡は鳴り止むことなく・・・
署:署長〜! 「内線5番」に、バルディア様から入ってます―――!
すると、その途端・・・書類を作成していたマリアは、すぐさま筆を置くと、署長室と署内を完全に遮断し、外部からの接触を一切断ったのです。
そして、これから為される彼女達の会話に、注目をして頂きたい―――・・・
マ:「ドゥルガー」です・・・それにしても、随分とお久しいですね―――「先輩」。
いえ、今はこう呼ぶべきなのでしょうね・・・「シャクティ」。
バ:「元気そうで何よりだよ。」
「それより、簡潔に済ませてしまおう。」
「お前も知っての様に、「イルツスカヤ」に飼われた「グワゴゼウス」のことなんだが・・・
奴をどうしても、法廷に引き摺り出し、今までの分相応の罪科を償わせたいとしている方々がいてな。」
「その方をサポートするよう、その方の姉・・・我々「ディーヴァ」を創設された方から、直接依頼があった。」
「その役目・・・「パールヴァティ」と共に、引き受けて貰えるな。」
マ:仰っている内容は判りましたけど―――確か、マエストロ様のご一族でしたら、私達の出る幕なんてないと思うんですけど?
バ:「さすが・・・だな、「嗅覚」は衰えていないようで、安心したよ。」
「つまりはそう云う事だ、今回は「それ」が目的ではない。」
「これから、「サラスヴァティ」が収集した情報を転送するから、穴があくほど目を通しておいてくれ。」
それは・・・「宇宙警察機構」の、本庁勤めであり、嘗ての「先輩」でもある、現在は「刑事部本部長」にまで出世をした「キャリア組」と・・・
地方の一分署署長との会話ではありませんでした。
そう、そこにあったのは、「ディーヴァ」と云う、秘密の捜査機関の「指揮官」と、「実務遂行者」のやり取り・・・
そこで、少なくとも見えてきたのは、今回の「ディーヴァ」の役目は、
保釈されて、束の間の自由を謳歌しているグワゴゼウスを再び捕える為、動き出そうとしている「フロンティア」の一理事の補佐をすること・・・。
それは、情報提供面だけではなく、万が一の事を想定し、その理事の身辺警護から、あわよくば・・・グワゴゼウスを、こちらの手で―――
と、云う考えも、少なからずあったようなのですが・・・
それを、「ドゥルガー」であるマリアは、「ディーヴァ」の創設者であるジィルガの事をよく知っていた為、
その「妹」である、ジョカリーヌの補佐に関しては、必要ないのでは・・・と、意見をしたのです。
だとするならば、今回彼女達に下された指令とは、何だったのか・・・
その謎を紐解く為、「シャクティ」である、バルディア=ヤーデ=ロスチャイルドは、「サラスヴァティ」が今回収集してきた情報・・・
今回、ジョカリーヌが再びグワゴゼウスを捕える為、選んだ者達と―――更にその内の、「ある者」の情報を添付したファイルを、
これからサポートする「ドゥルガー」と「パールヴァティ」に開示したのです。
すると・・・その情報を見るなり、マリアは一言・・・
「これが、今回の「本命」―――」
その言葉は、未だ「猟犬」の眼光が褪め上がっていない、歴とした証拠でもあったのです。
=続く=