今回こそは・・・法廷に引き出し、二度と出てこれないよう、永久的に監獄に繋いで置こうと意気込む、ジョカリーヌとその仲間達。
そんな彼女達を援助するよう、「姉」が選んでくれた者達に会う為、惑星・オンドゥに降り立ってみれば・・・
リ:うっひゃ〜すっげ・・・人が多勢いるのな!
市:そ・・・それも、人様々ですね・・・。
ジ:そうだね―――ここは、周辺宙域の中継を兼ねている。
だから、「人」も「物」も、「流通」が頻繁な処でもあるんだ。
けれど、そんな処の欠点の一つとして、犯罪が多いのは仕方がない事なのかもね・・・。
「宇宙港」に着くなり、種々様々な「人種」の出迎えを受けるジョカリーヌ達。
その内でも、未だ見慣れない「宇宙人」の在り方に、眼を丸くするリリア達がいたのです。
牛の頭をした者もいれば―――昆虫の頭をした者もいる・・・角が5本も6本も生えているかと思えば、目玉を幾つも持っている者までいる・・・。
地球上では、それらは皆、「人外」や「魔物」・・・そして、「鬼」の類として認識されてきたものなのに、
それが、一歩宇宙へと出れば―――これが、「グローバル・スタンダード」・・・
どちらかと云えば、まともな人間の形をしている自分達の方が、珍しいのではないのかとも思えてきたのです。
そんな・・・周囲りに気を取られている間に、どうやら今回、協力をしてくれる人物が現れたモノと見え・・・
誰:あ〜の〜・・・申し訳ございませんが、ジョカリーヌ様・・・ご一行様でございましょうか?
ジ:ああ・・・はい、そうですけど―――では、あなたが・・・
誰:はい、今回あなたさま方を援助するように、云いつかりました・・・
マ:マリア=ルヴィ=モルガンと申し上げます。
一見して穏やかそう―――で、穿った見方をすれば、螺子が一本抜けているかのような印象さえ与える人物・・・
それが、初めてマリアを見た者が持つ、彼女の共通の印象なのでした。
けれど・・・その彼女が、嘗てはこう呼ばれていた事があるのを―――知る者は、数少ない・・・
第百十四話;猟犬
「宇宙警察機構」の現職警官であり、また、このオンドゥにある「第13分署」の署長でもあるマリアは、所謂「駈け出し」の頃から、「猟犬」の別名で呼ばれていました。
「猟」を・・・「獣」を「狩る」―――「獣」・・・
執拗さ、獰猛さ、攻撃性―――そのどれをとっても、マリアに並ぶ者はおらず、
そのまま手柄だけを立てていれば、「勝ち組」に名を連ねていたモノを・・・
それを、ふいにしてしまったのも、また彼女自身でもあったのです。
云うなれば、その当時のマリアは、人一倍、正義感の強い人間だった・・・
その、強い―――いや、余りにも強すぎた正義感ゆえに、次第に、「UP」上層部に対しても、反抗の機会が目立ち始めてしまったのです。
その当時の様子をよく知る、マリアの同期連中は、部下から、現在のマリアの就業態度を批難する度毎に、こう漏らしていたのです。
刑:―――ねえ、先輩・・・なんだって刑事部のオレ達が、一分署の署長からの依頼で、こんな事をしなければならないんスかねぇ。
刑:まあ・・・そうぼやくな。
部長からは、当分何も云ってきやせんよ―――そう云う仕組みになっている・・・。
刑:(〜・・・。)大体―――あのマリアって女、ありゃ一体何なんですか・・・
刑:フ・・・「猟犬」―――てな、本庁じゃあ有名な、相当のワルさ・・・。
刑:「猟犬」―――?! ・・・って、あの?!!
何かの間違いなんじゃ・・・
刑:違っちゃいねえよ―――本当の事さ・・・
刑:・・・じゃあ―――なんだって、そんな女が、分署の署長なんかやってるんですか・・・
刑:・・・まあ―――「猟犬」だからなぁ・・・「飼い主」の手に、噛みついちまった・・・ってなわけなのさ。
分署の署員達は、ひっきりなしに入ってくる事件の一報や、その対応に追われていました。
そこで今回、一時的に「UP本庁刑事部所属」の刑事二人を貸し出して貰っているのですが、
どうも若い方の刑事は、本来自分達の管轄ではない仕事をやらされている事に、不満を漏らし始め、
マリアとは同期の、自分の先輩刑事に愚痴を溢していたのです。
しかも―――当のマリアは、自分の点数稼ぎの為か・・・「開拓事業団」である、「フロンティア」の幹部を接待する為に、本来の職務を放棄している・・・
そんな、根も葉もない噂の事を、鵜呑みにしてしまっていたのです。
―――と、そんな事を、云われている事を知ってか知らずか、マリアは、ジョカリーヌ達に協力をする為、
彼女達を、ハタルドゥーミ教会へと誘うのでした。
その道中で―――・・・
リ:―――なあなあ、ジョカリーヌさん・・・あんなのが、頼りになる・・・んっ?!
ジ:どうしたんだい、リリア。
リ:(?!)いや・・・なんにも―――
それよりさぁ・・・本当に―――ん・んっ??
市:・・・どうかしたんですか?
リ:いやぁ・・・気の所為かなぁ―――なんか、さっきから、背後がチリチリするかんじがしてさぁ・・・
おっかしいなぁ〜・・・
「ウ・フ・フ・・・まずは、「及第点」―――と、云う処かしら・・・」
「これは、先が愉しみになってきたわね。」
正確に云えば、「猟犬」の、その「牙」は、もがれたわけではありませんでした―――
ただ・・・「飼い主」の云う事を聞いていても、「ご褒美が与えられない」事が判り、
ならばせめて、「飼い主」の目の届く範囲内では、「牙」を剥いて反抗することは、なくなってしまった・・・
ただ・・・それだけのこと―――
ですが、「猟犬」は、「猟」をする時の様に、感覚を鋭く研ぎ澄まし、俊敏に動ける準備を整えていたに過ぎなかったのです。
ともあれ、これから当分の間、ジョカリーヌ達が宿泊することになる、ハタルドゥーミ教会に着いた処・・・
マ:すいませ〜ん―――お邪魔しまぁ〜す・・・。
修:はい―――あら、早かったですね、まだこちらは、準備が出来ていないんですのよ・・・。
リ:「準備」?? ―――なんの・・・
マ:あなた方の、当面の目的が遂げられるまでは、ここを自由に使わせて貰いたい―――と、そちらの方から、そう伺っておりますが〜〜宜しかったですよねぇ?
ジ:はい、充分です。
それから―――彼の人物の、情報提供の件なのですが・・・
修:ちょっとちょっと―――
マ:あ、はい・・・。
あの、ちょっと失礼しますね。
この教会に従事する修道女の一人が、何かしらの準備作業に没頭していた処、この惑星の分署の署長が、客人を連れて来た―――
しかしこの・・・「修道女の一人が、何かしらの準備作業に没頭していた処」と云うのも、
この教会を、当面の間の、「宿泊施設」として使う為に、使えそうな部屋を用意・・・「整理」している最中だったのです。
・・・が―――
「修道女」である、ヘレン=サピロス=カーネギーは、自分で予想していたよりも多人数で来た為、
その事について、マリアに抗議しようとしたのです。
マ:なに・・・どうしたの―――
ヘ:「どうしたの」かじゃないでしょ! こんな大所帯だなんて、聞いてなかったわよ!!
マ:まあ・・・ねぇ―――
ヘ:感心してる場合じゃないってぇ〜〜・・・
相手は「お偉いさん」なんでしょう、只でさえ、このボロ教会を使って貰うのが、心苦しいってのに・・・
心象悪くされちゃったら、どーしてくれんのよ!
リ:なあ・・・あれ―――・・・
ジ:内輪での相談事の様だけど・・・こっちまで筒抜けだね。
イ:でも―――私達の事なら、そんなに気を遣わなくてもいいのに・・・
ジ:そう云うわけにもいかないんだろうね。
なにしろ、「お偉いさん」て云うのも、私の事なんだろうし・・・。
リ:なんで?
ジ:だってほら・・・私、こう云う立場では、「フロンティアの理事」だし・・・
だから、「修道女」の彼女も、私から好く見られたいんじゃないのかな。
ヘレンの抗議の内容とは、概ね次の様な事でした。
「こんな多人数だとは、聞いてはいない。」
「しかも相手は、宇宙でも名の通っている、「大組織」の幹部。」
「そんな人物を、高級一流ホテルではなく、こんな、肋屋同然の教会に泊めると云うのは、非常に心苦しい事なのだ。」
確かに・・・人数に関しては、マリアも思っていたより多人数で来られたので、どことなく心配はしていたようですが・・・
宿泊の場所については、ジョカリーヌからの当初の意向通り、きちんとした宿泊機能の付いた施設ではなく、
こうした公共の建物の方が、ジョカリーヌにしても都合が良かったからなのです。
それと云うのも・・・もし、そうした「ホテル」等に宿泊した場合、自分が利用していると云う情報が、
グワゴゼウスや、彼の保釈金を支払って、支配下に置こうとしたイルツスカヤの下に流出された場合、
みすみすグワゴゼウスを逃がしてしまう事になる・・・
だから、こうした「協力者」の下で匿って貰う事で、グワゴゼウスに急激に接近し、再び捕えようとしていたのです。
とは云え、そうした誤解を解いて貰う為、代表をしてリリアが―――
「自分達取り巻きは、教会の礼拝堂で、雑魚寝でも構わない」と述べ、宛らにしてヘレンからの感動を誘っていたようです。
=続く=