これから自分達が捕まえようとしている者の、更なる詳しい情報を得る為、ジョカリーヌ達は、惑星・クーレにある、ある富豪の邸宅を訪れていました。
それにしても豪華―――やもすれば、この惑星一つが、丸ごとこの富豪の所有ではないかと疑うくらい、
「ロックフェラー邸」は、来た者・見る者を圧倒したのです。
それに聞けば、先程くぐった、大仰な造りの門が、このロックフェラー邸の「正門」であり―――
それでも、未だ屋敷には程遠かった・・・
これでは、陽の高い内に、今回の用件が済ませられるのかと、心配していた矢先に・・・
第百十五話;お宅訪問
ジ:―――ほら、見えてきたよ・・・あれがそうだ。
リ:ふへえ〜・・・やっと?
―――ったく、客に足を使わせるなんて、何考えてやがんだか・・・。
ジ:ハハ―――でも、良い運動になったと思えばいいじゃないか。
個人が所有する「屋敷」「邸宅」で、自分が知っている内では一番広い・・・
そうリリアは感じ、客分である自分達に対する仕打ちも、そう云った「富める者」ならではの感情の一つなのだ・・・と、思考を歪めて行きましたが、
対するジョカリーヌは、そう云った「後向き」な思考より、「前向き」な思考・・・どちらかと云えば、今、自分達は試されているのだろう・・・と、感じていたのです。
それはそうと、やっと屋敷に着いた、自分達を出迎えたのは・・・
少:ようこそ―――生憎、気の利いた「おもてなし」は出来ないかもしれませんが、まあ、ゆっくりとお寛ぎして下さいな。
「少女」・・・それも、足が不自由で、車椅子に座っている、「少女」―――
穿った見方をしなければ、同情を引いてしまいそうな、そんないたいけな者の有り態に、リリアは何も云えなかったのですが・・・
そんな彼女達の、「思考」や「感情」を、まるで手玉に取るように、この「少女」は・・・
少:あら―――この私に、同情をしてくれると云うの?
先程までは、お客人に足を使わせる、とんでもない奴だと思っていたみたいなのに・・・
可愛い事を云う人ね、あなたって。
そう云われた途端、リリアの脈拍が少し上がりました。
それもそのはず、その少女が口にした事は、先程リリア自身が愚痴を溢していた、「この屋敷の主」に対してのモノだったのですから。
それがどうして・・・「この屋敷の娘」である、この少女が―――
すると、今のリリアの思考を、感じ取ったかのように・・・
少:・・・私は、「この屋敷の娘」ではないわ。
ミ:云うなれば、この私こそが、「この屋敷の主」にして、当家―――「ロックフェラー家」の「当主」、ミリヤ=アゲット=ロックフェラー・・・なのよ。
覚えておくと云いわ・・・リリア=デイジィ=ナグゾスサール。
その瞬間、リリアは、云い知れ様のない不安―――恐怖に襲われました。
いえ・・・リリアだけではなく、一緒にいた蓮也・市子・イリスも同様に、彼女と同じ感覚を共有したのです。
なぜ―――口にしていない思考の内を、これだけ明確に―――これだけ詳細に出来るのか・・・
その理由を、4人は判らなくとも、ジョカリーヌだけは知っていたモノと見え・・・
ジ:いや、さすがに―――聞きにし勝る能力ですね。
ミ:ウ・フフ―――そんな大した能力ではありませんのよ。
他人の考えている事が判ってしまうなんて、不便そのモノ・・・
けれど、下衆な者達は、挙ってこの私の異能―――「月詠」を当てにしてくるわ。
そう云う、あなたはどうなのでしょうね・・・「フロンティア理事」ジョカリーヌ=サガルマータ=ガラドリエル様。
謙遜なのか―――それとも皮肉なのか・・・
今のまさに今、リリアの思考を詠み取り、また敬遠させた、車椅子の少女―――ミリヤ=アゲット=ロックフェラー・・・
そんな彼女が、口にした事とは、「願わくば、こんな能力なんか授かって、この世に出てきたくはなかった。」と、云う事なのでした。
それはさておき、ジョカリーヌ達がこの惑星に来た、本来の目的に入るのですが―――
その前に、一人の人物に引き合わされたのです。
その人物こそ・・・
ジ:―――この人が・・・今回の情報を提供してくれると云う、「サラスヴァティ」・・・
ミ:この子にかかれば、「UP本庁」のデータ・ベースにアクセスする事など、造作もない事でしょう・・・。
それに・・・現在の「警察機構」は、退廃にして堕落している事ですしね、この子が「ハッキング」しなくとも、他の誰かがいつもやっている事なのですよ。
さて・・・無駄なお喋りはこれくらいにして―――いけないわね、年齢を取り過ぎると、口数が多くなってしまって・・・
初めて頂戴、「サラスヴァティ」―――
寡黙にして席に着き、ジョカリーヌ達を待っていた「女性」・・・
それが、「ディーヴァ」を構成するメンバーの一人、「サラスヴァティ」だと、ジョカリーヌは理解しました。
そう・・・ジョカリーヌは知っていたのです。
数多の情報に精通し、また、その「精度」に関しても、実に緻密にして正確無比であった事に・・・。
それに、ミリヤの呈した苦言も、ジョカリーヌは染入っていました。
「法」を違反する者達を取り締まる側にありながら、「汚職」や「失態」を重ね、信頼も地に堕ちた感のする、現在の「宇宙警察機構」の在り方に。
・・・とは云え、その分野に、自分が口出しするモノでもないとし、一人の少女の姿をした者の苦言に、耳を傾けていたのです。
けれど、ここで―――先程ミリヤが発した言葉の内で、何かが引っ掛かっていたリリアは・・・
リ:それより、ちょっと待って・・・その前にあんた、さっき「年齢を取り過ぎると・・・」って云ってたよな、冗談だろ?
ミ:(・・・。)空気の読めない子ね―――あなたって。
今そこに、抵触しなければならない?
ジ:リリア、失礼だよ―――! 済みません・・・気分を害されましたか?
ミ:けど・・・まあ、いいわ。
私も、歯に衣着せぬこの子の言動・・・嫌いではありませんし。
だから、教えて差し上げましょう―――この私は、3000年を過る現在を活きているの。
でも、見た目以上に若い―――と、云う事は、それなりの事情と云うモノがあるのよ。
「3000年」―――その単位を聞いただけでも、驚いたモノでしたが、同時にリリアは、
地球にいる知り合いで、見かけと年齢の差が激しい、「ある人物」の事を思い出していました。
最初の頃は、小憎らしい感情しか湧いてこなかったのに、段々と付き合っていく内に、その人物の人となりが、判ったような気がしてきた・・・
他人に対しては、憎まれ口しか叩かないのに、自分に関係のある―――仲間だとかに関しては、他人からの悪口でさえ許さない・・・
そこは自分も同じ・・・
例えば、自分の友でもある、市子やイリスの事を悪く云われたりすると、云われた本人より、激しく感情を剥き出しにしてしまう・・・
だから恐らく、この少女も、同じなのだろう・・・と、そう思っていたのです。
それはそうと、リリアが、この無駄な思考を巡らせている間に、有用な情報を引き出し終えた、「サラスヴァティ」は・・・
サ:「収集」と、「解析」を並行させ、更に「トラップ」の有無を確認し終えました。
それからすると「標的」は・・・これから3日後に、「惑星・ウジアーキ」周辺に現れる事は、まず間違いないようです。
必要なだけの言葉数で、必要なだけの情報量・・・
無駄は一切省き、簡潔ながらも、濃縮された内容に、流石のジョカリーヌも唸らざるを得ませんでした。
これが「天才」の―――「天才」たる由縁・・・
もし「彼女」が、「ディーヴァ」ではなく、別の・・・「犯罪組織」の一員だったなら―――と、別の危機を感じたモノだったのです。
ですが今は、ストゥク=カイエン=グワゴゼウスを、再びこの手で捕える為の、重要な情報を手に入れ、
これから、本格的な作戦を練る事になるのです。
=続く=