その日・・・「惑星ウジアーキ」周辺の宙域は、いつも通り静寂に包まれていました。

これと云って、特に何もなく・・・娯楽も―――観光名所も、ありさえしない・・・

どちらかと云えば、「過疎」が進む一方の、寂れた場所でもあったのです。

 

ですが、こう云った場所は、特に犯罪組織の温床ともなり得、

「ディーヴァ」が保有する情報を、突合・統合して行った結果、ある人物が、自分の身を隠す為、

近いうちに、この場所に現れるであろうことが判明していたのです。

 

それより、その「ある人物」とは―――・・・

 

 

 

グ:(ちぃ・・・このオレが、こんな処に身を隠さなけりゃならなくなるとはな・・・焼きが回ったもんだ。)

  ―――で? オレを保釈した野郎は、なんと云ってきてやがる。

 

 

 

元・広域指定犯罪組織「グリフォン」に所属していた、ストゥーク=カイエン=グワゴゼウスは、

あと一歩で監獄行きだった自分の身柄を、保釈してくれた人物に対し感謝こそすれ―――ですが、その言葉は横柄そのモノ・・・

だからか、グワゴゼウスを保釈した人物の部下などは、そんな口の利き方をする彼に対し、好い印象は持てなかったのです。

 

それより、これから先の計画を話し合わなくてはならない為、一時的に用意された「隠れ家(ア ジ ト)」に向かう事にしたのです。

 

そんな―――彼らの一部始終を、遠目で伺っていた、この惑星の住人は・・・

 

 

 

蓮:市子殿・・・

市:ええ・・・確かに今のは「崇徳院」―――

  それにしても、正確な情報と云うのが、これほどまでにも有用に働きますとは・・・

  早速、リリアさん達に報告いたしましょう。

 

 

 

この惑星・・・「ウジアーキ」の住人になり済まし、事の一部始終を窺っていたのは―――

以前にも、サライ国で「隠密」の任務(し ご と)にあたった事のある、市子が適用されました。

 

しかし、何分にも女性と云う事もあり、一人だと危険に陥った場合、どうする事も出来ない為、「補助役」として蓮也が選ばれたのです。

 

そしてそこで、「サラスヴァティ」が導き出した情報に、相違がないことを確認し終えると、

(あらかじ)め使い方を教えられた、「通信機」を使い、ジョカリーヌ達に報告をしたのです。

 

すると―――市子からの報告を受けたジョカリーヌは、矢継ぎ早に出動の準備を急がせたのでした。

 

 

 

リ:ちょ、ちょっと―――なんでそんなに急ぐんだよ。

ジョ:急がなければ・・・市子と蓮也が危なくなってしまう―――

 

リ:え?? ど・・・どうして―――

 

ジョ:彼女達は、ああ云ったモノに慣れていない―――だから、使い方が簡単で、説明も単純なモノを与えたんだ。

  けれどね・・・そう云ったモノの、一番に頭に入れておかなくてはならないのは・・・

マ:相手に感知され易い―――だから、(あらかじ)め、報告を終えたら、その場から離脱をするように指示してあるのです。

  けれど・・・急いだに越したことはない―――なぜなら・・・

ヘ:そう云ったモノがあると判ると、次に奴らがしなければならない事とは・・・早急に、その惑星から離脱しなければならなくなる・・・。

  ジゼル―――次に奴らが向かいそうな地点・・・抑えてあるんでしょうね。

ジゼ:―――当然です。

   次はここ・・・「惑星オクノウ」周辺で、間違いはないでしょう。

 

リ:ほぁ〜〜すっげえのな! もうそこまで判ってる―――つて・・・でもそれじゃ、永遠に捕まえられっこないんじゃ・・・

 

ジョ:だからこそ、急ぐんだよ―――恐らく彼らが、次の地点まで移動を開始するのに、(およ)そ一時間弱・・・それまでが勝負だ!!

 

 

 

第百十八話;非人道的行為

 

 

 

今回、二人の姉からの協力はない・・・そこの処も理解していたジョカリーヌは、少しばかり焦っていました。

 

行動を迅速に行わないと、永遠に捕まえられない―――どころか、悪くすれば・・・

グワゴゼウスが保有する、総ての事件性の被容疑が、時効を迎えてしまわないとも限らない・・・

 

なぜ彼が―――「地球」と云う、云わば「辺境」に属している場所で、何千年も潜伏をしていたのか・・・

 

これは最早、時間との闘いでもあったのです。

 

 

その一方―――こちら、「ウジアーキ」では・・・

 

 

 

犯:ちぃ・・・逃げられたか―――

  おい、()だその辺にいないか、隈なく探せ!

 

グ:いや・・・それでは生温(なまぬる)い―――そうだな・・・この惑星の住人を全員捕まえて、怪しいと思える奴を片っ端から、拷問・尋問にかければ済むことだ。

 

犯:なるほどな・・・イルツスカヤ様が、お前の事を気に入ったのが、どことなく判ってきたぜ・・・。

  よし―――そっちの作業と並行させて、「オクノウ」へと移る準備も急がせろ!

 

 

 

グワゴゼウスと、彼を保釈した人物・・・「ツヴェルクリン商会」の、イルツスカヤ=ダビー=ツヴェルクリンの部下が、その場所に来るまでに、

前もって云われていたように、市子と蓮也は逃げる事が出来ていたようなのですが・・・

如何せん、重い機材を運びながら―――では、すぐにでも彼らに捕まってしまう為、敢えてその機材は、その場所に放置したままだったのです。

 

ところが・・・グワゴゼウスは、この時、思ってもいない行動に及んできたのです。

 

そう、それが―――この惑星に住む総ての住人に疑いを掛け、彼自身が疑わしいとした住人に対し、責め苦を与えて吐かせる・・・

そんな、非人道的行為に着手し始めたのです。

 

そして、30分もしないうちに、ウジアーキの全住人は、一箇所に集められ・・・

 

 

 

グ:お前達に聞きたい事がある・・・コレに見覚えがある奴はいないか―――・・・

 

 

 

鷹揚な態度で、突如質問を開始するグワゴゼウス・・・

ですが、ウジアーキの住人達は、彼の質問の意図としている事など知りもしないので、皆一様にしてざわつくばかり・・・

すると、こうなる事を予測していたかのように、グワゴゼウスは、近くにいた男の住人を呼びつけて、いきなり・・・

 

 

 

グ:・・・フフン―――

  別に、正直になれ―――とは云わん・・・ただ、そう云った「勇者」がいない限りは、こうした「犠牲」は、付き纏うモノだと、そう思え・・・

  そうだな―――次は・・・

 

 

 

自分の目の前で、いきなり伴侶を殺害され、悲しみに暮れる女性・・・

なんとグワゴゼウスは、有無を云わさず、手当たり次第に暴虐を働きだしたのです。

 

そして、この機材の持ち主が、自ら名乗り出て来ない場合、「見せしめ」の為だと云わんばかりに、

次の犠牲を、この女性に定めようとした処・・・

 

 

 

市:―――お待ちなさい!

 

グ:ほう―――ほう・ほう・ほう・・・いつかどこかで見た顔だな・・・

  そうだ、思い出したぞ!

  あの女狐―――「玉藻前」と一緒にいた・・・しかしまた、ご苦労な事だな!?

 

 

 

到底、出来るはずもないとしていた事を、いとも簡単にしてしまった事に、その女性の頭上に下ろされる刃の前に、一人の女性が立ち上がりました。

 

そう・・・市子は、我慢がなりませんでした。

 

何の権限があって、他の生命を簡単に奪えるのか・・・

もし、自分が出て来なければ、グワゴゼウスは、この惑星の住人全員を、殺害してしまうだろう・・・

 

ですが、そうでなくても、先程の彼の例を見ただけでも、市子には十分でした。

 

とは云っても・・・果たして、市子一人だけで、どうにかなるモノか・・・そう思っていた矢先に―――

 

 

 

蓮:全く・・・無茶をしなさる。

 

グ:ん〜〜? なんだ、お前は―――

 

蓮:フッ・・・生憎と、お主の様な下郎に、名乗る名など持ち合わせておらぬのでな・・・。

 

 

 

別に、出て来なくてもよかったのに・・・近くにいる、グワゴゼウスの仲間に当て身を行い、名乗り出た男性がいました。

それこそは、蓮也・・・

 

しかしこれでは、彼らが逃走する時間を、みすみす手放してしまった様なモノ・・・

なのになぜ―――彼らは、そんな危険を冒してまで、そうしたのか・・・

 

でも、市子も蓮也も、このままむざむざと、捕えられはしなかったのです。

 

 

 

市:崇徳院・・・あなたが疑いを掛けていた私達は、ここにこうして出てきました。

  ならば―――もう、ここの惑星の住人達は、関係はないはず・・・速やかに開放するのです!

 

グ:フ・フ―――判っておらんようだな・・・小娘。

  こ奴ら全員―――お前達も含め、オレ達が逃げるまでの間、人質になって貰うのだよ。

  そうした上で、お前達が所属している「フロンティア」に、多額の身代金を請求するのさ。

 

市:おのれ・・・そこまで外道に堕ちたか!!

 

グ:ありがとう・・・最高の褒め言葉だ。

 

 

 

例の機材の持ち主である自分達が出てきたのだから、ウジアーキの住人達を解放するよう、交渉が行われたモノでしたが・・・

そこで次第に、グワゴゼウスの非人道的一面が、顔を覗かせ始めたのです。

 

そう、彼は・・・自分の身の安全が確保されるまで、ここにいる全員を人質に―――

自らの身を護る「生きた盾」とし、その機会を窺おうとしていたのです。

 

それに見てみれば、以前、自分を捕縛の憂き目に晒した、「フロンティア」の関係者とみられる男女・・・

 

そこでグワゴゼウスは、「フロンティア」の手からも逃れる為、市子と蓮也も人質にとり、

加えて、逃走資金とする為に、多額の身代金を要求しようとしていたのです。

 

 

そしてこのまま・・・悪は、野に放たれるのでありましょうか―――

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと