この際は、自分達二人が犠牲になればいい・・・
自分達二人が、悪党達に捕えられれば、あとは全員が助かるはず―――と、市子はそう思っていました。
しかし、彼女のこの思いは、相当に甘かったのです。
なぜならば―――グワゴゼウスは、これを機会とばかりに、市子達を含める全員を、
自分の身の安全が保障されるまでの、格好の「生きた盾」に、しようとしていたのですから。
そして今―――グワゴゼウスの、不敵な・・・そして、淫らなまでの思惑を含んだ笑みが、
これからの市子に降りかかる運命を、予測させていたのです。
第百十九話;「足掻く」コトへの代償
一歩ずつ―――近付いてくる毎に、自分の身の危険が、迫っている事を感じる市子・・・
このまま彼女は、グワゴゼウスに好い様に弄玩ばれ、この後の半生を、グワゴゼウスの快楽を満たす為だけの、「肉奴隷」として生きて行かなければならないのか・・・
―――と、そう思われた時・・・
犯:ぐ・・・ぎゃほぁ〜〜!
グ:―――なにごとだ?!!
その時、突然―――グワゴゼウスが、新たに組織した「スペクター」の要員が、奇妙な声を立て、倒されていました。
けれど・・・誰もいない―――見えない・・・
しかし、現実として、次々と自分の部下達が倒されていくのを見て、グワゴゼウスは・・・
グ:ちぃ・・・なにかいやがるな―――
おい、こいつらを連れて、さっさとずらかれ、もうこの惑星に用などない!
自分が、「見えない敵」を相手としているのが判ったからか、「人質」にする「ウジアーキ」全住人と、市子と蓮也・・・
特に優先して、市子のみを連行すべきだとの直感に基づき、この惑星から離脱する為の移動を開始しようとしました・・・
ところが―――
その彼の思惑は、またもや、今一歩の処で阻まれてしまったのです。
そう・・・その場に現れた、一人の女性によって―――
謎:はぁ〜い、はぁ〜〜い♪ 皆さん、ご苦労な事ね〜〜
皆、挙って、私の餌食になりに来たのだから・・・
グ:・・・なんだ、お前は―――さっきから、オレの部下が倒されていくのは、お前の仕業・・・
すると女は、不敵に笑う・・・
「それは自分ではない―――」と・・・
では、何者が一体、この女性より先んじて、グワゴゼウスの部下達を、行動不能に陥らせたのか・・・
それより、この不敵な笑みを漏らす、美女の正体とは―――?
謎:フ・フ―――教えて欲しいかい・・・
なら、精々地獄への土産話にするがいいさ・・・
この私に「狩られる」ってことは、向こうじゃ「ハク」が付く―――って、専らの噂だって聞くしねぇ・・・。
私は・・・「賞金稼ぎ・クルセイダー」、そしてもう一つの名を・・・「ディーヴァ」の「パールヴァティ」・・・。
その名を聞いた途端、悪党達の間の緊張が、一層高まりました。
それもそのはず、「賞金稼ぎ」とは、その「善」「悪」を問わず、対象の「首」に掛けられた、「賞金」を目当てに、「狩る人間」・・・。
しかも、「クルセイダー」は、悪党の間では、相当名が通っているモノと見え、
少なくとも、そこにいたグワゴゼウスの部下達全員は、今日が自分達の命日だと思うしかなかったようです。
ですが、グワゴゼウスだけは―――・・・
グ:バカヤロウ―――! なにをしてやがる・・・相手は女一人じゃねえか! 怯むな!!
パ:フ―――フ・フ・フ・・・
グ:何が可笑しい!
パ:いやぁ―――ナニ・・・コレが、可笑しくなれないわけがないじゃない・・・
あんた、追い込まれるあまり、周囲りが全然見えてないようなんだからさ。
なぜ・・・って? 私がこうしている間にも―――・・・
グ:(!!)なんっ・・・だとお―――?!! これは・・・どうなってやがる・・・!!
相手は、女一人―――を、いいことに、全員でかかれば、どうにかなる・・・と、思っていたようですが、
「パールヴァティ」は、更なる存在の事を仄めかし始めたのです。
すると、その事に呼応するかのように、グワゴゼウスの周囲りにいた部下達が、「見えない敵」によって、次々と倒されていったのです。
そのことに、次第に恐怖を覚え始めたグワゴゼウスは・・・
グ:ど―――どこのどいつだ! こんな真似をしやがるのは・・・!
パ:あらあらw 随分と余裕がなくなってきちゃっているようじゃない―――グワゴゼウス・・・
で〜も、ま・・・このまんまだと、「弱い者いじめ」みたくなっちゃいそうだしねぇw
・・・て、ことで―――そろそろ姿を見せてやんな、「ドゥルガー」!
すると、「パールヴァティ」からの呼び掛けに応じるかのように、何もなかったとされた空間から、実体を現せた・・・
菫紫色のバトル・スーツに全身を包んだ、一人の戦士の姿が・・・
しかし、それこそが、先程からの「見えない敵」の正体―――「ディーヴァ」の「ドゥルガー」だったのです。
ですが、仲間から不名誉な発言があった事に、「ドゥルガー」は・・・
ド:ねえ―――「パールヴァティ」・・・私が、「弱い者いじめ」・・・って、それはあんまりな表現だと思うんだけど?
パ:ハ・ハッ―――何云ってんだよ・・・あんたも気付いているはずだろ。
本当の意味で、「弱い者をいじめる」・・・そんなやつらを、赦しちゃおかねぇ―――って、ね・・・。
ド:フ―――・・・それも、そうね・・・。
その時「ドゥルガー」は、「パールヴァティ」から不名誉な事を云われたので、前言の撤回を求めていました。
が・・・「パールヴァティ」からの説明により、本当の意味で、「弱い者いじめ」をする者達の事を、赦してはおかない性分ではないかと云われると・・・
次の瞬間―――「ドゥルガー」の像が、「揺らいだ」・・・か、と、思われたその途端、
グワゴゼウスから離れること、約10m先にいた部下が、鶏を締め上げるような音を立てて、地に伏せていくのを目視してしまった・・・
けれど、また「ドゥルガー」のいた地点に目配せをすると、まだそこにいた・・・?
一体なぜ・・・どうして―――?
それは―――・・・
パ:あ〜ら、あんたたち聞いたことない?
そこにいるヤツ―――ほんの数周期前まで、あんた達の間じゃ、結構有名だったんだけどね〜w
「猟犬」―――「獣」を狩る為に、品種改良をされた「獣」・・・
敏捷性・攻撃性・獰猛性・執拗性・・・そのどれをとっても、他の「獣」とは群を抜き、加えて、主人の云う事には忠実が売り物・・・だったのに―――
いつしか、その「主人」の手にも、噛みつき始めた・・・
だから、その「獣」は、「訓練」「調教」し直され、習得していた「戦闘技能」はそのままに、現在では別の組織に身を置いていたのです。
しかも、そこでも高い「戦闘技能」を買われ、最強の戦士「ドゥルガー」として立身しているのです。
それに・・・哀しい事に、グワゴゼウス達は、未だ「ドゥルガー」の動きを捉えきれていませんでした。
今もまた・・・自分より遠く離れた距離にいた部下が、今度は音も立てずに気絶してしまった・・・
その事は、「ドゥルガー」が持つ、畏るべき「戦闘技能」の一つ―――
パ:「セッター・ポイント」・・・えげつないわよね〜〜
なんてったって、私より先に現場に着いて、あんたたち「獲物」の位置を、須らく把握してんだもの―――
グ:なに・・・ぬおっ?! いつのまに―――・・・!!
気が付けば・・・今度は、自分の背後にて、背中あわせになっていた・・・
それこそは「余裕」―――
「お前など、いつでもその喉笛に喰らいつく事など、雑作もない・・・」
そう云いた気に―――・・・
けれども、悪党は足掻く―――藻掻く―――・・・
その為に、今こそ人質を有効活用しようと、市子の方を振り向いた処・・・
ジ:観念しろ・・・グワゴゼウス―――!!
グ:ぐうっ・・・「フロンティア」の―――くそおぅ!ここまでか!!
既に、市子の身柄は、ジョカリーヌによって確保されており、それから彼女の身に降りかかる災いは、一切を払い落される運命にあった・・・
そしてその事は、同時に、グワゴゼウスの野望が潰えた事を意味していたのです。
こうして、総てに措いて観念したグワゴゼウスは、またもやジョカリーヌによって、再度捕縛され、
今後は、ジョカリーヌが所属する組織で、彼を裁く為、一時的に「オンドゥ」にある、「13分署」内にある拘留施設に留置されるのです。
=続く=