『只今到着の―――564便には、刑期700年以上の凶悪犯が、搭乗の便となっております・・・』
『一般客の皆さまは―――係員の誘導に従い、安全な場所に避難をしましょう・・・』
『また、警備関係の職員の皆さまには―――呉々も、凶悪犯に逃げられないよう、細心の注意を払いましょう・・・』
その案内は、当初から「凶悪犯が逃亡を図ることが前提」で、放送を流しているかのようでした。
それにしても奇妙―――
悪人を取り締まる施設の出入り口が、どうしてこうも、「脱獄が前提」なのか・・・
それに、「奇妙な感じ」と云えば、オンドゥに降り立った時から、そうだとも云えました。
皆・・・惑星の住人達は、誰もが協力的で、惑星の内に対しても外に対しても、「そうだった」にも拘わらず・・・
なぜかその態度は、「表面的な」モノにしか映らなかった・・・。
上辺では、媚び諂い・・・表面的な服従は見せてはいても、心の奥底では、何を考えているか判らない―――
その事は、国家の治世の頂点に立っていた事のある、リリアやイリスは敏感でした。
ただ・・・ここの連中は、自分達の国政官達よりも、「隠す」技術が巧みだと、そう感じたのです。
そして―――その事が明るみになったのは、今回、この惑星に護送られてきた囚人・・・全30名が、「入星」のゲートを潜り抜けた、その瞬間・・・
第百二十二話;叛乱
S:動くな―――!
大人しくすれば、命だけは保証してやろう・・・。
イ:な・・・っ―――!
S:動くなと云っているだろうが!
死にてえのか・・・お前。
イ:(どうして・・・この人達は、この惑星の警察関係の人達では・・・)
市:―――ああっ! あれは・・・!
突如―――自分達の周囲りにいた警備の人間が、持っていた銃器の銃口を自分達に向け、抵抗をしないように促せてきたのです。
そして同時に、信じられない光景が、市子の視界に入ってきたのです。
その光景とは・・・なんと、今まで囚人の腕や足に掛けられていた「拘束具」―――「手錠」「足錠」が、何者かの意思によって、意図的に外されたのです。
これは一体、誰の差し金なのか・・・とは云っても、最早疑う余地はない―――
この惑星にある、唯一の警察署・・・「13分署」、そこの長たるは、「署長」のみ。
だ・・・と、すると、当然この「命令」は、「彼女」が出したモノだと、思いたくもなるのですが・・・
リ:私らを捕まえて、どうしようって云うんだ・・・。
それに、マリアはこの事を知ってんのか!?
S:ああ〜知ってるともさ・・・知っているからこそ、こう云う事が起こるんだよ!!
なにしろ、ここにいる全員が全員―――ヤツに恨みを持つ人間ばかりなんだからな!
市:なんと・・・それはどう云う―――
S:フッ・・・フフフ―――ヒャ〜ッハハハ! 知らなかったかぁ〜?
ここにいる全員―――オレ達だけじゃねぇ・・・この惑星に住む住人全員が、「猟犬」時代のヤツに逮捕かれた「お仲間」って事なのさ!
つまりなぁ・・・今回来たのは、「囚人」なんかじゃねぇ、オレ達にしてみれば「同志」なのさ!!
衝撃の事実は、元囚人だった、警備の人間からなされました。
そう・・・この惑星こそは、住む住人から―――その総てが、何らかの象で「猟犬」時代のマリアに世話になった事のある者達ばかり・・・
云い替えるならば、全員が全員、マリアの「敵」・・・だったのです。
するとならば、マリアの次に重要な職に就いているクラウドマンも・・・?
ハタルドゥーミ教会の修道女達や、その孤児たち―――果ては、修道女の一人である、ヘレンも・・・?
しかし、なぜ―――「叛乱」が「今」なのか・・・
その事を起こすなら、「今」でなくてもいいはずなのに・・・
すると、何者かの銃が―――リリア達の知らない間に、リリア達に標準を定めていた・・・
そして―――・・・
S:ぐぅ・・・はあっ―――!!?
い〜痛てぇ・・・痛てぇじゃねえかよ!ちきしょう〜〜・・・
紅い光弾と共に、リリア達を抑え込んでいた警備の人間の一人が、この何者かに撃たれた・・・
けれど、そう―――・・・この惑星の内に、まだリリア達の味方はいたみたいなのです。
でも、その「味方」の正体は、意外にも・・・
リ:誰だ―――
あっ?!お前は・・・
物陰からゆっくりと出てきたのは、なんと・・・13分署副署長・クラウドマン―――
しかし、なぜ・・・
クラウドマンは、今撃った彼と同様に、マリアに恨みを抱く人間の一人―――の、「はず」なのに・・・
すると、意外な返事が、クラウドマンから返ってきたのです。
ク:フン・・・思ったより小粒だな。
おい、そこのお前―――今回の計画は、中止だ・・・と、他の連中に伝えておけよ。
リ:おい!ちょっと待てよ―――お前!!
こいつは、お前の仲間なんだろうが! どうして撃ったんだ!
ク:「どうして」・・・? それは、実に簡潔にして明瞭―――
この惑星が、私達の手によって制圧できれば、ここは私達の楽園となる・・・が―――
「最後の砦」と云う奴が一番厄介でして・・・ね。
しかも、趣味が「闘争」と云うのだから、尚クセが悪い。
ヤツは―――自らの退屈を紛らわせるために、定期的にこうした遊戯を行っているのですよ。
その結果、この惑星の住人は、こんなにまで膨れ上がった・・・
「この惑星を制圧できれば、好き勝手放題にしても構わない」・・・と、そんな甘い罠に誘われ、全員、この惑星の住人に成り下がってしまったのですよ。
リ:ヘッ―――お前も、その内の一人だろうが!
ク:いえ・・・私は違いますよ。
私は―――あの人に逮捕され、ここの住人になった「第一号」なのです。
云ってみれば、それ以来ここに来る連中を、私が「手配」してきたのですが・・・
それがどこで間違ったのか・・・これは、「猊下」に一言注文をつけなければならないようです。
今回の「便」も、この惑星を制圧する為の「人員」に過ぎない・・・
ただ―――不思議に思うのは、13分署の署長であるマリアは、どうしてこんな危険を冒してまで、こんな事をするのか・・・なのですが、
それよりも、どこかで聞いた事のあるような矜持―――「闘争の愉悦」・・・
つまりマリアは、自分の慾求を充たす為だけに、こんな行為に及んでいるのだと云うのです。
でも・・・どうして・・・マリアが、「あの一族」と同じ様なことを―――・・・
その理由を訊こうとした処・・・
ク:それはですなぁ・・・
(!)ちっ・・・思ったより回復が早かったようですね―――
おい、早い内に抵抗を止めた方が、身の為だぞ・・・
囚:あ・あぁ〜ん? ナニ云ってやがるんだ―――あいつを倒せば・・・
マ:「倒せば」・・・? なら、倒してみなさいよ。
但し―――この私が「見えたら」・・・の、話しだけど、ネ。
驚くべきはその身体能力―――まさに、「目にも止まらぬ」迅さで、先程、無粋な事を云ってのけた囚人の一人の側に詰め寄り、
彼が反応を起こすよりも速く―――地面に捻じ伏せる、一匹の獣・・・
しかもその「獣」は、眼の部分を「バイザー」で覆っており、中々表情までも読み取る事が出来なかったのですが・・・
なぜかイリスには、その「獣」の視線が・・・バイザーの奥に隠された「猟犬」の目が―――自分達にも注がれている・・・そんな感じがしてならなかったのです。
=続く=