先程、署長室で見かけたときは、死にかけた顔をしていたと云うのに・・・
今はそれどころか、グワゴゼウス達を制圧した時よりも、動きがよくなっているように思えた・・・
しかしそれは、リリア達の思い違いではなかったのです。
それにしても、マリアはなぜ、こんな事を思い立ったのか・・・
その事は、次第に明らかになってきたのです。
マ:始動して、僅か4分・・・これは、私が強くなったと見ていいのか、それとも―――このスーツの性能が上がったのか・・・
―――で・・・なかったら・・・
ク:残念ながら―――後者の方ですよ。
私の方も、全く当てが外れてしまいました。
それに、スタンの奴に、あれだけ「強めのヤツ」を仕入れておけ―――と、云っておいたのに・・・
マ:彼を責めては悪いわ、事実、「ランカータ」が入ってたみたいだったけど、殆どヘレンが・・・
ク:またあの人ですか―――ヤレヤレ、考えモノですな。
マ:それにしても、私もガッカリだわ、これではまた、間を空けられそう・・・
やもすれば、上司に反抗し、失脚させようとしていた部下で通りそうなモノだったのに・・・
不思議と、マリアとクラウドマンとの会話は、そんな感じはしませんでした。
それに、事実だけを述べるなら、クラウドマンは「本気」で、マリアを倒そうと奔走し、
マリアもまた、どちらかと云えば、自分に刃向ってくる者達のレベルの低さに、溜息を吐くばかりだったのです。
それにしても・・・今のマリアの科白に、非常に気になる部分があったのですが―――
それは・・・
―――と、それよりも、今のマリアの所作事の総てを、一番見てはならない人物が、目にしてしまっていたのです。
そう・・・紛れもなく、その人物とは―――
リ:おおお〜〜〜っ! スッゲ〜!
なあ―――見たよな!おい!! あんた、あのグワゴゼウスをやっちまったってのは、本当だったんだな!
だったらさ―――すぐに私と闘ろうぜ??
こちらも、またいつもの「悪い癖」―――と、ばかりに、マリアに挑戦を申し込むリリアの姿が・・・
未然に起こった叛乱劇を、宇宙港で喰い止めたのは、最早それだけで、自分と対戦できるだけの実力を持っていると、リリアは主張するのですが・・・
実を云うと、この時は「まだ尚早かった」のです。
その理由は―――と、云うと、この時にはまだ明らかにはされませんでしたが、
マリアの方も、酔い醒めの直後に―――と、云う事もあり、「また今度・・・」と、云う事で、署の方に帰ろうとした―――まさにその時・・・
リ:お?? んをっ??!
イ:どうかされたのですか? お姉さま・・・
リ:いや・・・それより、あんた達―――今、私の背後ろに誰か・・・
蓮:リリア殿の背後ろには、市子殿が控えてござるが・・・
またあの感覚―――しかも今度は、自分の項の後り髪を、撫ぜられた感触がした・・・
けれど、自分の「すぐ背後ろ」―――とは云っても、その間は人四人分が入る間隔があり、
とても市子も、そこまでの素早い動きが出来るはずもない・・・し、自分に対し、誤解を与えるような行動を取るはずもない、とも思っていたのです。
それにしても、一体誰が・・・
それはそうと、騒ぎの方も収束したので、自分達も引き上げようとした時・・
なぜか市子だけは、まだこの場に留まろうとしたのでした。
そこを、リリアから促されたのですが・・・
云うなれば、市子だけが見えていた―――いや・・・「感じた」と、云うべきか・・・
事実、リリアの疑いが市子に向けられた時、彼女からは何の返事も、反応もなかった・・・
しかし結果としては、リリアの方も、市子に向けた疑惑を取り下げたのですが・・・
この時市子は、或る一点を見つめていたのです。
マリアが、リリアからの挑戦を、「ごめんね」と詫び、署に帰る為に、「踵を返す」―――と、云う、所動作に移ろうとした、まさにその時、
不意にリリアから声が上がった・・・
自分達の仲間が、そちらの方に注意を取られている時、市子は見たのです・・・
この去り際に―――マリアから洩れた、不敵な笑みを・・・
その「笑み」こそは、「まだまだね―――」と、云い含みを持ったモノではなかったかと思い、その確認をする為、自分はあとで合流することを約束し、
早急に、マリアがいた地点に行って、調べてみると・・・
市:(やはり・・・足跡が二重にある・・・。)
それでは―――??
そして今度は、リリアがいた地点に足を運んでみると・・・断定までは出来ないモノの、
マリアの足跡と非常によく似たモノが、その場に残されていたのです。
ですが・・・その事実こそは、逆に市子にしてみれば、不思議の他になりませんでした。
それと云うのも・・・マリアとリリアとの相対距離は、リリアの仲間である自分達の誰よりも離れていたと云うのに―――
なのに・・・
誰の目にも、捉えられることなく、リリアの背後で何かをやろうとしていた―――いや・・・既にやってしまった後だったのか・・・
それにしても、判らない―――・・・
だとしたらなぜ、マリアはこんな事を―――・・・
市子にも、マリアがそうする理由を、理解しかねました。
それに、どうにも気になって仕方がないのは、マリアが云っていた、「間が空けられてしまいそう」・・・
この「間」とは、もしかすると「実力の差」・・・?
しかし、マリアほどの達人を以てしても、敵わぬ強敵が、存在しうると云うのか・・・
だとしたら、その「強敵」とは、何者なのか・・・
そう云えば、副署長のクラウドマンも、マリアの「強敵」に、どこか心当たりがある感じだった・・・
ならば彼に―――・・・
そう思い、13分署に戻るなり、クラウドマンに質そうとした処、なんと先客がいたのです。
その先客も、どうやら・・・
市:イリスさん―――
イ:ああ、これは・・・
それよりどうなのです、先程の私の質問に答えて下さい。
あの時マリアさんが云っていた、「間を空けられる」・・・一体誰に「間を空けられる」と云うのですか。
第百二十三話;まだ見ぬ強敵
この人物も、やはりその一点が相当に気になっていたモノと見え、まさにその事について、副署長に詰め寄っていたのです。
それに、このイリスの質問に、クラウドマンは、白を切り通す・・・モノかと思えば―――意外にあっさりと・・・
ク:フ・フ・フ・・・あの人にも困ったモノだ。
お陰で私が、こうした質問責めに遭ってしまう・・・。
ですが―――これも何かの機会です、あなた方に教えて差し上げましょう・・・。
あの人の、たった一つの「汚点」について―――・・・
その時、副署長は云いました・・・
「汚点」・・・
本来なら、マリアは、輝かしい出世の道を歩むはずだったのに、警察上層部に盾突いたという経歴があり―――
こんな惑星に左遷されてきた・・・
その事も、「汚点」の一つと云えばそうなのでしょうが、クラウドマンが述べていたモノは、また少し意味が違っていたのです。
そう・・・云い替えるならば、「人生に於ける、初めての敗北」―――
マリアを上回る実力者と、拳を交らせ―――そこで初めて敗れた・・・
自分の強さとは、所詮この程度のレベルでしかなかった・・・と、マリアがそう思い始めた時、
マリアの内に蟠っていた「何か」が弾けたのだとしたら・・・
そしてマリアは、以前から打診されていた「ある契約」を結び、「主の手に噛み付いた」・・・
実は、この左遷先―――と、云うのも、マリアの上司の、そのまた上の上に・・・何らかの「圧力」が、掛けられたのだとしたら・・・
と、クラウドマンは、自分がマリアに捕まえられた時、マリアから事の経緯の一部を聞かされ、自分なりに推測し・・・
マリアから打ち明けられた「企画」も、どことなく興味を惹かれた為、以後はマリアに協力をしてやっているだけなのだとしていたのです。
そして、更には―――・・・
ク:私も―――以前は、あの人を負かした唯一の存在に、興味があったのですが・・・次第にそれどころではなくなりましてね。
あなた方も知っての様に、この惑星の住人は、総てが「囚人」なのです。
その彼らを、一斉に蜂起させれば云う事はないのですが・・・所詮、そんなモノは理想論でね、実現は甚だ厳しいと云った処です。
彼女達が抱いていた、もう一つの疑問―――・・・
それは、この惑星は、惑星全体が「監獄惑星」なのだと云うのです。
けれど・・・ここの住人は、自分達が住んでいる地球の様に自由であり、
「檻」や「牢」などは、13分署に設置されてある、「拘留施設」に限ってしかなかった・・・
なのになぜ―――オンドゥの住人は、「全員が囚人」と云えるのか・・・
そして・・・更なる驚愕の事実が、明らかにされようとしていたのです。
=続く=