イ:そんな出鱈目な―――何かの間違いでしょう?!
市:そうです・・・どうしてそんな―――
オンドゥが、惑星丸ごと「監獄」でありながら、そこの住人である囚人達が、「檻」や「牢」に入らず、自由を謳歌していた・・・
と、云う事も驚きでしたが、副署長の口から洩れた更なる衝撃に、イリスと市子は耳を疑うしかありませんでした。
それと云うのも―――・・・
ク:何も別に・・・そんなに驚く事はないでしょう。
その為に、「延命措置」や「生体強化」は、ある様なモノなのですからな。
・・・おや? ひょっとすると、初耳でしたかな。
確かに、その二つの技術の事は、耳にした事はある・・・けれどしかし―――
こう云う事の為に、その技術が使用されているのだとしたら、それは激しい「人権侵害」なのではないかと、イリスに市子は思ったのです。
それよりも、なぜ・・・イリスに市子の二人は、その結論に至ったのか―――
それは・・・
現在より数分前、「ある存在」の事が、クラウドマンの口より洩れたのです。
ク:実は―――署長であるマリアの「上」に、更なる実権を握っている人物が、この惑星のどこかに収監をされている・・・と、噂されているのです。
まあ・・・私も、噂を聞くだけで、事実かどうかまでは確かめてはいないのですが・・・
イ:誰・・・なのです。
ク:・・・「獄長」―――です。
市:この惑星の・・・「真の実力者」―――
イ:でも、「収監」されていると云うのよね、その人物・・・
ク:フ・・・なにも、「お役人」が、監獄の長だと云う決まりもないではありませんか―――
「囚人」の内でも、特に発言のある人物が、彼らを抑制すると云う場合も、時としてあるのですよ。
市:・・・だとしたら、あなたが・・・。
ク:私が? 冗談はお止しなさい。
私なんぞは、単なる「使い走り」に過ぎませんよ。
それとあと、「刑期百万年の囚人」も、この惑星にいるようでしてね―――その人物も、まだお目にかかった事はないのですが・・・
イ:―――え?
市:何ですって―――?
第百二十四話;「獄長」と「刑期百万年の囚人」
そして、ここで今回のお話しの「冒頭」に繋がってくるのです。
そう―――この惑星には、囚人達の頂点に立ち得るべくの「獄長」と、「刑期百万年の囚人」が、いる事を知らされたのです。
しかしその事をイリスと市子は、人が犯した罪を償わせるべく、「例の技術」が使用・流用されているのではないかとしていたのです。
確かにそれは、まさしく「人権侵害」と云えた事でしょう・・・
どんな凶悪犯も、一定の「人格」や「人権」は保障されて然るべき・・・
それは、ジョカリーヌも口煩く云っている事だったのに・・・
ならば「オンドゥ」は、「監獄惑星」であるが故の、「治外法権」が確立されているのかと、そうも思いたくもなってきたのです。
すると、そんな時に、リリアと蓮也と、ジョカリーヌが・・・
リ:お〜い、なにやってんだ、そこで―――
イ:あ・・・お姉さま―――いえ・・・
市:ジョカリーヌさん、少し訊きたい事があるのですが・・・
ジ:ふむ・・・なんだろう―――
丁度お昼時でもあった為、仲間と一緒に摂ろうと云う事で、イリスと市子を探していた様でした。
ところが、見れば美女二人が、ここの副署長を相手に、何かを詰め寄っていた風にも感じられた為、その事を訊こうとしたら・・・
市子の方から、ジョカリーヌに「例の事」を訊いてきたのです。
すると・・・市子からの質問を、一通り聞き終えたジョカリーヌは・・・
ジ:その事か・・・クラウドマン、一体どのレベルまで話したんだ、「部外秘」ならば、査問の対象になってしまうぞ。
ク:いえ? 私は只―――あの「二」の存在の事を述べたまでですよ。
「誰」とまでは云ってはいない・・・
ジ:全く―――・・・
それより、グワゴゼウスを護送する手筈は整えているのか。
ク:ええ、万事抜かりはなく・・・
では、私はこれにて失礼させて頂きますよ―――
市子からの質問に対しての、明確な答えはなかった―――
「人道的」「倫理的」にも悖る行為だと云って、差し支えないのに・・・
なのに、ジョカリーヌの口からは、この惑星にて、永久封印をして然るべき極秘情報が、漏れ出しでもしたのかと、副署長に注意を促したまでに留まっていたのです。
それにしても―――・・・
やはり、クラウドマンは、「例の二人」の存在を、知っているかのようだった・・・
ではなぜ、明らかとされなかったのか―――
それこそが、「秘中の秘」だとするならば・・・?
そんな疑問も新たに、グワゴゼウスを裁く為に、オンドゥを発つ機が来ました・・・
しかし・・・そこで、予測だにしていなかった事態―――
いや、そこも考えてみれば、或る程度予測できたのではないか・・・
何しろここは、惑星そのモノが「監獄」―――住人全員が「囚人」であり、署長・マリアの「敵」・・・
そう―――その場所・・・「宇宙港」では、グワゴゼウスの「ソレイユ護送」を見届ける為、「フロンティア理事」であるジョカリーヌと、その仲間のリリア達がいた・・・
そして、グワゴゼウスが、ジョカリーヌの側を通りかかった―――その刹那・・・
彼の手足に嵌められていた「枷」が、音を立てて・・・
ジ:―――あっ!なにをする!!
グ:フ・・・つくづくだな―――前もって聞いてた通りだ・・・
リ:あっ!このヤロウ!なにを・・・なんだって?!
市:くっ・・・まさかこの機を見計らって―――
イ:おのれ、卑怯な・・・!
蓮:まんまと罠に嵌められてしまおうとは・・・不覚!
外されたのと同時に、ジョカリーヌを「盾」に取ったのです。
その事に、すぐにリリアが反応するも、グワゴゼウスからの不適当な物言いに、
更に、周囲りの警備の人間が持つ銃口が、自分達に向けられてしまった・・・
つまり、ジョカリーヌ達を人質にとれば、いくら署長のマリアと云えど、手出しは出来ないはず・・・
その事を見込んで、副署長のクラウドマンは・・・いえ、この時ばかりは、この反乱の首謀者は、
今回の対象でもあるグワゴゼウスに、自分達の計画の内容を打ち明けていたのです。
しかも・・・間の悪い事に、マリアは署長としての雑務に追われており、こうした催事は、殆ど副署長のクラウドマンに任せきりだった・・・
そうした「ツケ」が、この時になって来ようとは―――・・・
そして―――・・・
ク:おい、そこのお前、マリアに連絡しろ。
「獄長」と「刑期百万年の囚人」・・・そして、この私達の「友人」の身柄と引き換えに、「人質」を解放する用意がある・・・と、な。
それにしても―――ククク・・・永かった・・・ここが、我々の「楽園」となる―――その時が・・・
無理とも思える「交換条件」―――「極悪人」である、三人の身柄の自由と引き換えに、ジョカリーヌ達「人質」を解放するのだと云う・・・
その代わりとして、今度はマリアが、虜囚の憂き目に晒されるとき・・・それこそが、クラウドマンが長年描いていた、「構想」にして「願望」だったのです。
ですが、当然―――そんな事を赦せるはずもない、この人物は・・・
リ:おい、お前ぇ・・・ふざけてんじゃねえぞ!こんのヤロウ―――!!
ク:「ふざけて」? ・・・なんかいませんよ。
至って私は正気だ―――
グ:ヌフフフ・・・よくやったぞ、お前。
褒美は何だ、希望するモノを与えてやるぞ。
ぞうだなぁ・・・さしずめ―――
ク:(・・・。)
―――おい、まだマリアからの連絡は入らないのか。
S:いえ、それが―――・・・
存外に、卑怯なやり口に、リリアは咆哮えました。
が・・・如何せん、身柄を抑えられたままでは、「遠吠え」に過ぎないのですが・・・
グワゴゼウスの下卑た―――それでいて、淫らな考えには興味がない・・・と、でも云いた気に、
一瞥をしたクラウドマンの態度に、市子は「何か」が引っ掛かったのです。
「違う・・この人は、固よりそんな事など、望んではいない―――?」
「それどころか、この惑星の「噂」を、逆手に取ろうとしている感じさえ伺える・・・」
「ならば、この人本来の目的とは・・・?」
市子が抱いていた数々の疑問は、宛ら一つのパズルを組み合わせるかの如くに、一つ一つのピースが見つかり、
そして・・・総てが明らかとなった時―――・・・
マリアと、クラウドマンに関わる、或る重大な接点が、判明しようとしていたのです。
=続く=