その場に現れたのは、「13分署署長」「獄長」「刑期百万年の囚人」・・・と、計三名―――ばかりだと思われました。
けれど・・・現れたのは、マリア一人―――のみ・・・。
あとの二人は―――?
まさか、姿の見えない「透明人間」なのか・・・とも、思いたくもなるのですが・・・
そこに現れたマリアを見て、一人―――確信を得た人物が、彼女にこう云ったのです。
ク:フッ―――フフフ・・・やはり・・・な、そう云う事でしたか・・・。
では、あなたが「そう」だと云うのですね、マリア・・・。
リ:はあ? 何が云いたいんだよ!
もちっと、私にも判る言葉で説明してくれ〜!
ク:私は、「要望」として、「13分署署長」に―――「獄長」と、「刑期百万年の囚人」の二人を伴って来るように・・・と、そう云ったのです。
ですが―――そこにいるのは、マリアただ一人のみ・・・
これだけ云っても、まだ判りませんか・・・
そう、彼女こそが、「13分署署長」であり、「獄長」であり、「刑期百万年の囚人」なのですよ。
そう云う事で、宜しいのですよねぇ―――マリア=ルヴィ=モルガン・・・
「推測」「憶測」などではなかった・・・
最初に、「例の二人」に会いたい―――との、要望を出した時、すぐさま「その必要はない」と、返された・・・
その時に、「例の二人」の存在と云うモノが、そんなにまで「重要機密」に属する情報なのかと、クラウドマンは思ったモノでしたが、
マリアと、未だ見ぬ「彼ら」への調査を進めて行った結果、ある「結論」に、クラウドマンは辿り着いたのです。
この「三者」は、「同一人物」で、なければならない―――・・・
ならばあの時、「その必要はない」と、返されたのにも、得心がいく・・・
なぜならば、自分は既に、「三者」に、会っていたのだから・・・
そして今―――更なる事実と共に、マリアの「謎のヴェール」が、剥がされようとしていたのです。
第百二十六話;因縁の経緯
マ:仕様がないわね・・・あなたも。
こんな私の事なんか、放ってくれても構わないのに・・・。
リ:で―――でも〜〜なんであんたが、そんなスゲー経歴持ってんだ?
マ:あら、云ってなかったかしら。
私―――現在から1370年程前に、当時の警察上層部のやり方に頭ンきちゃって・・・それで、当時の「総監」を殴っちゃったの。
リ:はい?? ソウ・・・カン?―――て、ナニ・・・
ジ:「宇宙警察機構」の内で、一番立場の偉い人の事だよ・・・。
マ:現場ではさ? 私達が、汗水流して・・・おまけに血まで流して、一生懸命働いてる〜っちゅうのに・・・
あの人達ときたら、涼しい処で、椅子に座って、まるで策士気取り。
そこで、当時「警部補」だった私は、直接「総監」に意見を奏上しようとしたんだけど、まるで取り合ってくれなくて「門前払い」よ。
判るでしょ? 私がそうしたくなる気持ち・・・
そしたらさ―――「査問」にかけられちゃって・・・今では、ご覧の有り様よ。
そこでは、マリア苦節の機が、訥々と語られたのでした。
どんなに苦労をして、実績を上げたとしても、「上層部」からは苦々しい目で見られ―――剩、厄介な「腫れ物」として扱われるようになった・・・
その当時のマリアは、「警部補」に就いていましたが、その階級に上がるのにも、260年かかったと云うのです。
(この「数値」は、普通の「ノン・キャリ組」であっても、同階級に昇進するのに、100年もかからない・・・
と、した点を鑑みても、マリアがどれだけ、「警察上層部」から疎んじられていたのかが、判ろうと云うもの。)
けれど・・・判らないのは、そうした苦節を重ねて、ようやく昇進した地位を、一瞬にしてフイにしてしまった、マリアの行動にあるのです。
そして・・・もう一つの、クラウドマンの要望―――
実は彼は、マリアの身辺を調べて行く内、ある意外な経歴が、マリアにあるのを知ったのです。
ク:さて・・・それでは約束ですよ―――
マリア、例の「あの事」を、話して頂きましょうか・・・。
マ:はあ〜・・・下手な約束しちゃったもんだわ―――
あたら、私が「そう云う存在」だと、判るはずもないから、交わしちゃったんだけど・・・さ。
リ:ああ〜ん!もう!! 何なんだ―――お前ら!
二人にだけしか、判らないような会話しやがってぇ〜! お前ら「恋人」か!!
ク:フ・フ―――何を今更・・・
マ:・・・。
ク:・・・否定をしなさいよ―――これでは益々疑われる・・・
マ:いいじゃないのよぅ〜もう♪
リ:は・・・あら?
イ:あれは、一方的に、マリアさんが好意を寄せているように見えますよね。
それよりも・・・なぜマリアが、クラウドマンが仕掛けてくる、「叛乱」の擬似行動に、何も云わないのか・・・
そこは、ご多分に漏れず、マリアがクラウドマンに対し、「傾想」しているから・・・と、云う事の様です。
閑話休題―――・・・
話しの本題が、幾分か逸れ始めたので、クラウドマンが元へと戻し・・・
ク:ん・ん゛っ!
それではマリア、話して頂きましょうか・・・
なぜあなたが、昇進を棒に振ってまで、その行為に及んだのか・・・を。
マ:・・・やっぱり、話さないといけない?
ク:では、私の推論を述べても?
マ:・・・いいわよ―――
ク:ならば・・・実は、これもマリアの身辺を、調べて判った事なのですが―――
この同じ時期に、「ある人物」とお会いをしているのです。
その人物の名前とは・・・そちらにいる、フロンティアの理事のお知り合い、ジィルガ=エスペラント=デルフィーネ―――そうで、間違いありませんね。
ジ:ああ、確かに・・・1380〜70年程前頃に、私の姉は、自ら設立した「ある機関」の人材確保の為、何者かと会っていたようだ・・・。
しかしそれが―――マリアさん、あなただったとは・・・
ク:それと、もう一つ―――では、なぜその方に会おうとしたのかの理由・・・なのですが・・・
優れた調査能力―――クラウドマンの特筆すべき点は、まさにそれでした。
銀河を荒らし回る「宇宙海賊」の内でも、念入りな調査や分析を欠かさない―――その上で計画を練り上げ、彼が犯行に及んだあとには、何らかの痕跡すら残されていなかった・・・
つまりは、犯行「前」と「後」の現場には、さして疑うほどの差はなく、ほんの小さな僅かな差が、彼が犯行に及んだ形跡である―――と、するしかなかったのです。
それ故に、つけられた「もう一つの名前」・・・「クラウド」―――「雲」・・・
「雲」は、自由気ままで、いかなる形容にも、変えられる事が出来る・・・
彼が得意としていたのは「変装」で、時として、犯行現場にて、捜査をしている「捜査官」の一人だった―――と、云うことすらもあったようです。
そんな彼に、マリアは惚れてしまった・・・
一体どこが―――とも、思われなくもなかったのですが、そこには一つの要因が隠されているモノだと、クラウドマンは直感していたのです。
その要因こそが、「自分を鍛える為」・・・
今でさえ、一人でグワゴゼウス達を制圧できる実力を持つマリアに、これ以上、何を鍛えると云うのか・・・
その、意外なまでの動機と、事実が、クラウドマンの口から述べられたのです。
ク:あなたは以前に―――たった一度だけ・・・「何者」かに、敗れていますね。
あんなにまで強いマリアを―――過去に措いて、敗った事のある人物・・・
その「人物」との再戦を果たす為、クラウドマン達オンドゥの住人全員で、「叛乱劇」・・・
いや、この見解も、穿った方向性でなければ―――彼らが一丸となって、マリアの「鍛錬」に協力をしている・・・と、云う事になるのです。
それにしても・・・気になり始めたのは、自分達でさえも、目を見張るほどの実力を持つマリアを、過去に敗ったと云う、唯一無二の存在・・・
すると今度は、マリアから、その存在に関しての実態が、語られ始めたのです。
マ:ええ―――そうよ・・・
あれは、現在から1376年前・・・流れとしては、私が「総監」を殴ってしまう数か月前・・・
A−80宙域に、その根城を構える、「バジリスク」の壊滅作戦に従事した私は・・・
=続く=