並みいる悪党達を、片腕一本で捻じ伏せてしまえるほどの強さを持つマリア・・・
しかしそのマリアも、過去に措いて、自分を敗る程の強敵に、出くわしたのだと云うのです。
而して、その強敵こそ、「公爵」―――
けれどリリア達は、あたら知らない人物ではなかった為に、「まさか」とは思ったのですが・・・
ジョカリーヌにしてみれば、「公爵」が及んだ行動の動機としては、思い当たりまくっていた為、すぐにその場で謝罪をしたのです。
ですが・・・マリアにしてみれば、大企業である「フロンティア」の理事自身が、
こんな自分に対しても、謝罪をしてきたため・・・どこか戸惑いを隠しきれなかったようです。
マ:ええっ?! あっ・・・な、何を―――?? ど・・・どうしてそんな―――・・・
ジ:実は・・・たった一人、心当たりがないわけではないんです。
ですから、過去にあなたが不愉快になった因を創った者の上司である私が、謝罪をするのが道理・・・ではありませんか。
マ:いや〜その〜あの〜〜こっ、困ります!
な、何も私は〜・・・
ク:ヤレヤレ・・・ああ云う、実直な人柄は、苦手ですからねぇ―――マリアは・・・
リ:いっやぁ〜〜しっかし、あの人・・・って、そんな昔から、はっちゃけてたんだ。
ク:―――知っているのです?
リ:まあ〜・・・とは云っても、ほんのちょこっとばかし―――な。
それに、結構手が早いって事でも、私らの間では有名だしw
ク:ほう・・・誰なのです。
マリアが反抗し、オンドゥに左遷される要因ともなった存在―――嫌われもし・・・また、同時にマリア自身も嫌っていた存在こそ、
現場の苦労など知りもしないで、無理難題を吹っかけてくる、「警察上層部」の連中・・・云わば、「キャリア組」でした。
そして、そんな連中こそは、一様にして偉そうで、マリア如きの「意見」には、耳も貸そうとはしない―――・・・
マリアがいくら優秀だろうと、彼女に代わる人材など、星の数だけいる・・・としか、考えてはいない―――・・・
だからこそ、こんな自分の「意見」に、真摯に耳を傾け、自分の仕業ではないながらも、部下の失策に対し、深く謝罪をしてきた事に、
マリアは戸惑い困り果ててしまったのです。
そんな様子を見て、マリアの弱点を語るクラウドマンと、マリアを負かした事のある相手の事を、さも詳しく知っているかのように語るリリア・・・
そんな彼女の、「戯れ」とも思われる語りでも、自らの知識欲を満たす為に、クラウドマンは更に聞き込もうとするのですが―――
丁度そんな時、宇宙港警備員の一人が、或る報告を持ってきたのでした・・・。
S:マクドガルさん、そう云えば、そろそろですよ―――
ク:なに? もうそんな時間か・・・
仕方がない、そのお話しは、後日改めて聞く事にしましょう。
リ:はい? なんだってぇの―――・・・
ク:まあ・・・あなた達に、云っても判らない事でしょうが―――
本日ここに、「UFP」と「GPL」の、「王者決定戦」がありましてね。
リ:〜・・・なんだよ・・・その、UCCだとか、GXPだとか・・・
ク:「宇宙格闘団体」と、「銀河プロレス同盟」の事です・・・努々、お間違えのなきよう・・・。
この「興業」は、私が企画立案し、内々に交渉してきたモノでしてね。
知りませんでしたか、両団体とも、人気のある処ですよ。
それが、一堂に会して雌雄を決しようと云うのです。
斯く云う彼らも、半分は「花形レスラー」見たさに、この宇宙港に来ている様なモノですからね。
マリアを負かしたと云う人物の名を、明らかにしようとした処、宇宙港の警備担当の警官の一人が、
現在この宇宙でも、人気を二分する「格闘団体」二つが、なぜか「監獄惑星」であるオンドゥに結集し、
「王者」同士の「王座」を賭けた一大イベント―――「王者決定戦」を、行うのだと云うのです。
しかし・・・急にそんな事を説明されても、リリア達にはさっぱり―――なんのことやら・・・
けれど、周囲りの署員達は、誰が来るのかを判っていたみたいに、歓迎ムード一色だったのです。
そこで、流石に気になったリリアは、誰が来るのか―――を、近くにいた署員の一人に訊いてみた処・・・
署:ああ? ああ、確か―――「GPL」の方は、ドーラ=クジャナ=エイブラムスってんだけど、
実は彼女・・・
リ:「彼女」ぉ? ―――て、ことは・・・「女」??
署:〜ったりめぇだろが・・・ナニ云ってやがんだ、今更・・・
で、よ―――その彼女が、今回オンドゥで闘ることに、中々OK出さなくってよ・・・そこで、一つの条件を出してきたってワケよ。
市:その条件とは・・・?
署:ん〜〜ほら、あんたらと一緒に来てる、フロンティアの理事さんが、自分達の試合を観戦すると云うんなら―――って、さ・・・
リ:ジョカリーヌさんが?? ・・・よく、OK出したな―――
署:ハ・ハ―――向こうさんも、そう思ったんでない?
理事さんが好い返事をした―――ってのを聞いたら、本人が一番ビックリしてたって噂もあるぜ。
市:ではなぜ・・・ジョカリーヌ様が快諾を―――
署:さてなあ・・・そこらへんの事情は、詳しくは知らねえが・・・
おっ―――と、そう云ってる間に、「UFP」の「王者」のお着きのようだぜ。
中々見えてこない、話しの内容―――
それにしても、「GPL」なる団体の王者に関しては、どことなく判って来たのに、肝心のもう一つ・・・「UFP」なる団体に関しては、存在すら出て来ない・・・
けれど、「GPL」の王者が、「フロンティアの理事」が自分達の試合を観戦してくれるなら、この交渉を考えなくもない・・・と、云うこの条件を、
「フロンティアの理事」があっさりと呑んだと云う点・・・その点がどうも、不明瞭さに欠けているのです。
(しかしながら、こうした不明瞭さも、以前からのお話しの流れで、或る程度憶測が付くのではないだろうか・・・
そう―――ジョカリーヌの「姉」が、気を利かせて・・・(まあ、この場合では「老婆心」とも云えるかもしれないが・・・w)
ジョカリーヌに成り代わって、この試合の「チケット」を取っていたのだとしたら―――?)
ともあれ、そんな中、「都合よく」、宇宙港には「UFP」の王者を乗せた艦艇が到着したようなのです。
そして、驚くべきは―――今まで実態が知られなかった、「UFP」現王者の実像・・・と、
この直後催された、「会見」での出来事だったのです。
それにしても・・・今まで実態が知られなかった、「UFP」現王者とは、一人の―――少女・・・?
リ:・・・つて、あれえ? ヱリヤさんじゃないっすか―――!
ヱ:あら、あなた達は・・・何をしにここへ?
リ:「何をしに」―――つて・・・そう云うヱリヤさんは・・・つか、ヱリヤさんが、UFなんとか〜ってとこの王者なんすか??
ヱ:なにを云っているの・・・面白い事を云うのではないわ。
―――って云うか、あのバカは何やってんのかしら・・・。
リ:(ナハハハ〜・・・なんつーか、アイサツだよな〜〜・・・て、ゆうか!)
そだ、ヱリヤさん! あの人ここに来たら拙くありません?!
そう―――その艦艇「ヴァルドノフスク」から降り立ったのは、一人の少女・・・ヱリヤ=プレイズ=アトーカシャなのでした。
でも、そう・・・今現在、この惑星で話題となっているのは、「UFP現王者」に、「過去にマリアを敗った事のある謎の強敵」―――
この二つの条件を総て兼ね備えている、まさに「話題の人物」と、常日頃行動を共にしているこの少女が、ここにこうして来ていると云う事は・・・?
最早、想像上に難くはない―――今ここに、「因縁」は集まってしまっているのだから・・・
エ:あ〜〜もう着いてたんだ〜〜おはやー・・・
ヱ:(「お早う」じゃないでしょうに゛っ・・・全く―――)
エ:あれ?どしたの、お前サ・・・あれぇ〜っ?どしたの―――リリアちゃんに、市っちゃんに、蓮ちゃんに、イリスちゃんじゃなぁ〜い♪
わ〜嬉し♪ 皆、私の試合を観に来てくれたんだね〜〜♪
「あははは・・・目覚めてモノの5秒で、テンションアゲアゲっすか・・・」
「でも・・・このあと、どーなることやら・・・私、知ぃ〜らねえっと・・・」
この惑星に到着まで、ぐっすりと熟睡していたモノと見え、寝惚け眼のエルムが、自分の艦から降り立ってきたまでは良かったのですが―――
エルムが、視界の端にリリア達を捉えると、先程の眠気はどこへやら・・・途端に調子を上げてきたのです。
しかし・・・お陰で、リリア達は知る事が出来たのでした。
本日行われんとする、「王者決定戦」の対戦相手の他に、エルムを「宿敵」と見定めている人物がいる事を・・・。
それに、そう―――こんなにもはしゃいでいるのなら、気付かないのも、気付いて来ようと云うモノ・・・
つまりは・・・そう―――
第百二十八話;因縁炸裂
マ:あ・・・ああっ! あ―――あなたは・・・!!
エ:ん〜? ・・・誰、あんたは―――
ねえ、お前サマは知ってる?
ヱ:どうして私が知ってるのよ―――と、云うか、あんたの「宿敵」、全部覚えていられるほど、管理は出来ないわ・・・。
(・・・それにしても、あの眼に、この気―――どこか「覚え」は・・・)
ジ:(あちゃ〜それにしても、最悪の展開―――・・・
まさか、ここの署長さんが、過去にエルムと因縁を生じさせちゃっていたとはね・・・
・・・気の所為だと思いたいけど、姉さんはこの事を知ってて―――・・・止めよう、そう考えるのは・・・)
はは・・・宇宙は、広い様で狭いもんだよなぁ―――
マ:えっ? どう云う事なのです・・・それ―――
ジ:ああ、先程云いそびれはしたけど、彼女が私の部下にして、「公爵」である―――
エルム=シュターデン・・・現在はヴァルドノフスク、1300年くらい前ならカーミラと名乗っていたはずだ・・・。
「なるほど・・・そう云う事―――」
「だからこの人は、先程私に対し・・・」
「でも、それとこれとは、全く別の話し―――」
大袈裟に騒いでいる一角を見ると、なんとそこには「宿敵」の姿が・・・「公爵エルム」の姿が―――!!
けれど、反応を見てみれば、自分も数多いる「好敵手」の一人くらいにしか捉えていない事が判り、
常識的ではないとは判ってはいても、「公爵」に対しての闘争心が、沸々と湧いてきたのです。
そして、次の瞬間―――目にも止まらぬ迅さで、マリアは・・・
マ:(捉えた!! 今度こそ―――・・・)
誰もが、次の瞬間に、マリアの姿を網膜に焼き付けた時―――マリアの拳は、確実にエルムの左顔面を捉えていた・・・
はず―――でしたが・・・
エ:――=上段当て身投げ=――
マ:(え?)―――がふっ!!
エ:なんだい―――なんだい―――危ない娘だねぇ・・・
けど、嫌いじゃないよ♪
マ:くふっ―――! うっ・・・
ク:マリア―――今は止した方がいいみたいですよ・・・
マ:クラウドマン・・・そうね―――そう・・・みたい・・・ね。
エ:ありゃりゃ〜・・・なんだか悪い事をしちまったみたいだねぇ。
相手が攻撃をしてくる瞬間を詠み、自分に向けられた指向性の力を、逆に攻撃に返る技―――「反撃技」・・・
確かにその時、マリアは、エルムの左顔面を、確実に捉えたモノだと思いました・・・。
そして事実、八割方はそうなってはいたのですが、寸での処でエルムの反射神経が働き、
攻撃をしてきたマリアの右手首を捉えると、その指向性を失わないままに、反対側に投げ返していたのです。
それに・・・攻撃を仕掛ける時も「あっ」と云う間だったから、返された時も「あっ」と云う間・・・
つまりマリアは、受け身を取ることも儘にならず、そのまま背中を、地面に強かに打ちつけられてしまい、思わぬダメージを負ってしまったのです。
しかし・・・皮肉な事に、例の一件の証明を、マリア自身がしてしまった・・・
マリアほどの強者を、過去に一度だけ敗った事のある「謎の強敵」―――「公爵」・・・
それがなんと、本日あると云う、「王者決定戦」の、一方の団体の王者でもあったと云う事なのです。
=続く=