一瞬にして奔る緊張―――周囲りの署員達にしてみれば、「超」のつく有名人の来訪に、狂喜するばかりでしたが、
当の本人であるマリアにしてみれば、エルムが13分署を訪れた理由など、自ずと判り切っていた事なのでした。
だからこそ・・・なのか―――エルム側からは、無言の圧力が・・・
「こんなに他人目に着く場所でいいのかい、私なら、一向に構わないんだけどねぇ―――」
これは・・・余裕の表れなのか―――それとも・・・
しかしマリアも、自分が所属をしている秘密組織―――「ディーヴァ」のことを明かされて欲しくなかった為、
喩えその事が「誘導」だったとしても、エルムに従わずにはいられませんでした。
そして―――オンドゥでも、特に他人気のない場所・・・南西地区にある「トヌコ荒野」―――が、
今回二度目の、闘争の場所に選ばれたのです。
マ:さあ―――ここなら、他人目を気にせず、心置きなく闘えますね・・・。
エ:フフン〜―――それよりあんた・・・「ディーヴァ」ってヤツの一人なんだろう・・・
私のお師サマより、よく聞いているよ・・・中でも、その「ブレスレット」を持っている奴ってのはさぁ―――・・・
未だ、エルムが言葉を紡ぎ続けているにも拘らず、マリアは「ドゥルガー」に変身し、戦端を切り拓いてきたのです。
けれど、それを・・・今度は、真正面から受け切ったエルム―――・・・
しかし、そう・・・「今度は」、反撃技を使用せず、完全防御をしてきたのです。
そのことに・・・ディーヴァに措いての近接戦闘要員の内では、一・二を争うドゥルガーに変身したとしても、完全防御された事に、マリアは・・・
マ:そっ―――そんな・・・なぜ、私の拳が・・・
エ:「届かない」―――フ・フ、そいつは、私とあんたとの、闘争に措ける「年季」の違いさね。
マ:く・・・っ! ならば―――届くまで放つのみ!!
喩え、自分の能力を底上げしてくれる、バトル・スーツの存在があったとしても、またしても届かなかった、マリアの爪牙・・・
けれど、そんな事で気を落として、攻撃の手を緩めるわけにはいかない―――と、ばかりに、猛攻を仕掛けるマリア・・・
しかしエルムは―――・・・
エ:ははハ―――どうしたんだい? 段々、迅さも威力も落ちて来ているよ!!
いけないねぇ・・・そんなんじゃ―――だったら、私の方から征くとしようか―――!!
――=タイガー・レイド=――
マ:(はぁはぁ・・・)・・・っ―――く!!
(お・・・重い―――この私の、拳より遥かに・・・!!)
エ:まぁ〜だ、まだあ〜―――!♪
――=タイガー・ジェノサイド=――
マ:(ぅ・・・ああっ―――な、なんて人・・・このままでは、私のガードが・・・)
ああっ―――! し・・・しまっ―――・・・
エ:ガード・ブレイク、成功〜♪
――=百拾七式・八錆=――
マ:ぐふっ・・・
エ:フフ〜ン・・・お次は―――
――=百拾八式・九傷=――
マ:かは・・・っ―――
エ:この位で、ヘバんじゃないよぉ〜♪
お次は―――・・・
一撃・一撃が重い為、「スーパー・コンボ」の二つ目で、完全に自分の防御を崩されてしまったマリア・・・
そしてそこに、焔を纏ったエルムの拳が、炸裂をし始めたのです。
それにしても・・・相も変わらず重い―――その上に、「焔」と云う、ダメージ付加の属性を付けられているのだから、自然とダメージ量は加算されてくる・・・
いけない―――このままでは・・・
このスーツが、耐えうる事が出来る許容数値をオーバーしてしまい・・・
やがては・・・鎧を剥がされてしまう―――・・・
「このままでは・・・このまま―――また私は・・・同じ相手に、敗北をしてしまう・・・のか。」
自分の攻撃は、効果がない―――それとは変わって、相手の攻撃は、炸裂のし放題・・・
それに、マリアの内には、あまり良くない傾向―――1376年前の、苦い敗北の経験が、頭を擡げ始めてきたのです。
だから・・・このまま―――エルムの攻撃に、翻弄され続ける・・・ばかりかと思っていたら??
第百三十三話;届いた一撃
エ:―――くっ・・・!
マ:―――・・・。
僅かながらに、マリアの内に、「エルムに勝ちたい」と云う執念が、あったからかも知れない・・・
あと一撃―――あと一撃加えれば、相手は崩れ落ちる・・・だろうと云う、慢心が芽生えたからかも知れない―――
けれど、そこにあった事実―――
それは・・・
無意識の内に、エルムに届いていた、マリアの反撃技があったのです。
ですが―――・・・
マ:(・・・!)わ・・・私―――は?!
あ・・・っ―――
エ:フフ〜ン、やってくれるじゃないか―――「退歩」の原理を使うとはねぇ〜、私ゃ感心したよ♪
マ:あ・・・っ、ええっ??!
エ:大した進歩だと褒めてあげてるんだよ。
満足に掠りさえしなかったあんたの拳が、私にまで届いた初めての機会なんだ、もっと喜びなよ。
喩えそれが・・・「紛れ」―――だったとしてもだ。
マ:あ・・・あ・あ・・・わ、私の拳が―――初めて・・・?
エ:ああ、本当の事サ。
〜に、しても、シビれたねぇ〜〜♪ 意識が跳んでいたからこそ、無駄が一切ない―――だから、この私が喰らっちまったのサ♪
紛れ―――確かにそれは、エルムの云う様に、紛れの一撃・・・だったのかも、知れません。
けれど、マリアの方でも、意識をしての一撃ではなく、半分意識が跳びかけた状態での一撃でもあったが為に、そう云われても仕方がなかった事なのでした。
しかしながら、その一撃こそは―――「退歩」・・・
ただ闇雲に、前に出て攻撃を仕掛けるのではない・・・時には、「退」「離」も重用である事を、その一撃は物語っていました。
そう・・・そこでマリアは、無意識の内に半歩退き、自分に向かってくるエルムに、右腕を突き出した状態で―――
エルムの突進・・・攻撃力をそのまま利用し、エルムに一撃を見舞っていたのです。
しかしその結果、エルムに更なる闘争心を掻き立たせてしまい、必然的に、マリア二度目の敗北―――
・・・に、なるモノかと思えば―――
エ:あ〜〜チョー愉しかった♪
マ:え・・・あっ―――?
エ:今回は、マリアちゃんの「勝ち」ってことに、しといてあげると云っているんダヨ♪
マ:ど・・・どうして―――
エ:フフ〜ン・・・私の、期待を裏切ってくれちゃっている、成長ぶり―――だったからねぇ〜
勿論、「良い意味」でね?
マ:は・・・はあ―――・・・
エ:なんダヨ〜? もっと喜びなよ―――それとも・・・気に入らないのかい?
マ:え? ああ―――いや・・・ち、違います! ただ・・・
なんとも拍子抜けした話しもあったモノで、エルムは、マリアとの闘争を、中断してしまったのです。
しかしこれは・・・何も、マリア如きの一撃が届くと思っていなかったので〜・・・と、云うのではなく、
寧ろその逆―――エルムが予測していた以上に、熟していた・・・
しかも、マリアにはまだ、成長する余地があると見込み、まだまだ熟成する機会を窺おうとしている節さえ見受けられたのです。
そう・・・エルムは、殊、「闘争」に関しては、「貪欲」になりつつあった―――・・・
だからこそ、曲がりなりにも、自ら「敗北」を認め、マリアに、更なる強さの境地に到達して貰いたいがため、そうしたとも云えるのです。
しかしながら・・・哀れなるは、マリアと云うべきか―――
それと云うのも、「これからの成長に期待」と、云う事は、良くも悪くも、「闘争嗜好者」に、目を付けられた・・・と、云う事に通ずるのですから。
それはそうと、マリアと別離れたエルムを待ち受けていたのは―――・・・
エ:およっ―――お前サマ〜。
ヱ:良かったわね、「とっておきの玩具」を見つけて・・・
エ:へへ〜〜羨ましい?w
ヱ:別に―――それより、今回はあんたに付き合ってあげたんだから・・・
エ:はいはい、そうだね〜〜次はお前サマの番―――
ところで、次はどこだっけ?
ヱ:「UCM」・・・惑星ロメオの、セントラル・ロイヤルズ・カントリーで開催される、「G−1」よ。
エ:「クラシカル・マスターズ」かぁ・・・G−1でも、最上位の難度だよねぇ。
そ云えば・・・5つある「G−1」の内でも、あれと「オープン・トーナメント」は、お前サマでも獲れてないんだよねぇ〜。
ヱ:それは、あんたのナビゲートが下手糞だからでしょうが! 全く―――・・・
その点を考えてみれば、ベイガンは、ああ見えて・・・その辺の処はきっちりしているのよね〜〜
人は、見かけによらないとは云うけれど―――・・・
自分達の主でもある、ジョカリーヌに別離れの挨拶もしないままに、オンドゥに来る際に乗って来た自分達の艦艇で、またどこかへと旅立つ二人・・・
そこには、現在の彼女達に通ずる事柄があるのですが―――・・・
そのお話しは、またの機会に・・・
それはそうと、今回オンドゥにて起こった「事件」は、これだけには留まらなかったのです。
それもそのはず―――オンドゥの最高責任者と、深い関わり合いを持つ者達がいる「クーレ」にも、今回の「エルム訪問」は、大きく取り沙汰されていたのですから・・・
そして、そこに住む大富豪―――「ロックフェラー家」に仕える「メイド」も、著しい反応をしないわけにはいかなかったのです・・・。
=続く=