現在、地球のとある地域では、「政変」の予兆とでも云うべき事態が、進行しつつありました。
しかし―――それは同じく、宇宙に措いても、少なからずの関連はあったのです。
それと云うのも・・・惑星クーレの、或る大富豪の屋敷にて・・・
主人から、新聞の報道を見せられたメイドは―――
メ:ミリヤ様・・・これは―――
ミ:フフ・・・そう云う事、マリアさんは宿願叶った―――と、云えるでしょうね。
クーレとは、さ程離れていないオンドゥ・・・その監獄惑星に、「フロンティア理事」と―――あと、慰問目的だと見られる、「UFP王者」の来訪を告げる、その報道内容・・・。
けれどミリヤは、この事を「そう」だとは捉えずに、恐らくはミリヤ自身も知る「マエストロ」の差し金にて、
「UFP王者」であるエルムと、因縁めいた関係を持つマリアの下に、そうなるように仕組まされたことなのだとの、直感が働いていたのです。
しかし、この報道内容を見て、尋常ではない反応を示したのは、ミリヤのメイドであるメイベル・・・
それはどうして―――それは・・・
メ:・・・マリアさんの処に来たと云うのであれば、当然一緒にいたのは―――「侯爵」・・・
ミ:―――ではないようね。
それを裏付けるモノとして、「サラスヴァティ」からは、「今回一緒にいるのは「焔帝」」だ、と・・・。
メ:(!)そんな―――・・・
ミ:でも、それが事実だもの、仕方がないわね。
メイベルも、エルムが「公爵」と呼ばれている事は知っていました。
けれど―――彼女の口から出たのは、音は同じ・・・「コウシャク」―――つまり、エルムの後継者である、「侯爵マキ」の事だったのです。
そう、実はメイベルも、奇しくも、あのヴァンパイア一族と、浅からぬ因縁関係を築いていた事実が、浮き彫りにされてきたのです。
(ここまでの流れで判る様に、メイベルもまた過去に措いて、マキに苦杯を呑まされていたようではある。)
それに今回・・・いかなる象であれ、自分と同じ境遇に置かれていたマリアが、「リベンジ」を果たしたことに、メイベルは焦りを隠せなかったのです。
それよりも、どうして・・・ミリアは、この報道内容を、メイベルに知らせようとしたのか―――・・・
第百三十五話;蠢きゆく運命
ミ:そこで―――あなたに丁度いい相談があるのだけれど・・・
実は、ミリヤは―――数日前、マエストロから「ある依頼」をされていました。
けれどミリヤは、その時点では、その依頼を受ける動機と―――地球まで赴く道理もないとして、「一時預かり」の状態にしておいたのです。
そうすると、マエストロは次の一手に打って来た・・・
「どうやらあの人は、どうしても私達を、地球と云う惑星に向かわせたいみたいだ・・・。」
だからこそ、公爵エルムの、オンドゥ来訪を報道誌に大きく取り上げさせ、その事に関わる情報のリークを、「サラスヴァティ」にさせた・・・
これで、「依頼を受ける動機がない」―――は、自然消滅し、残る「地球まで赴く道理もない」も、程なく失われてきた・・・
それと云うのも、「サラスヴァティ」からのリークは、「エルムに同伴していたのは、マキではない」・・・だけに留まらず、
メイベルが飛びついてきそうな、情報も・・・
メ:それは本当ですか?!
ミ:ええ―――今更だけど、ジゼルの情報精度は、正確にして無比だわ。
その時、ミリヤから持ちかけられた情報に、著しい反応を示すメイベル・・・
ただその情報と云うのは、侯爵マキの行方ではなく―――自分に匹敵する「同業者」・・・「テュポーン」。
その人物に関するモノだったのです。
それに、まだ更に聞けば、その「テュポーン」なる人物は、「ベラスケス」なる人物からの依頼要請を受け、
現在は地球にいると云う―――・・・
「これは丁度いい機会だ―――自分と侯爵との「前哨戦」・・・露払いに、こいつを利用してやろう。」
ミリヤは、メイベルがすぐに、ここまでの思考に辿り着く事を知っていた為、敢えて「エルムのオンドゥ来訪」の報せを教えたのです。
場所を一転させて、常磐の穢戸では・・・
秋:ぃよう―――どうしたい、また偉く考え込んでるようじゃねえか。
た:お主か・・・いやなに、「ある莫迦」の事を思い出しての。
秋:おいおい・・・「莫迦」―――って、そいつぁ、あんまりだろ。
た:フ・・・然は云うても、莫迦は莫迦じゃからなぁ―――
それも、並大抵の莫迦ではない・・・己の身も顧みず、カイエンを追っておった、しのやワシの手助けをしてくれた・・・。
どうじゃ―――「莫迦」に、相違あるまい。
鷹山家の縁側にて、何かの思索に耽るたまもに、秋定が声をかけてみた処、漏れなくたまもからは、ある人物の特徴が・・・
けれども、その評は、余りにもよろしくなく、「莫迦」とだけ云い置かれたのです。
この不適切な表現に、秋定も苦笑はするのですが、たまもがその人物を、「莫迦」だと云い置いた所以・・・
自分の身の危険や、損得を顧みない行動に、その事を聞いた秋定も思う処となったのです。
確かにこの人物は、「莫迦」には相違ない―――しかし、莫迦は莫迦でも、気持ちの良い性分だと思ったのです。
すると、そんな時にしのが―――・・・
し:たまちゃん―――それ、リリアさんに悪いよ。
た:フフ・・・じゃがのう、切羽詰まっておるわしらの状況を、どうにかしてくれるのはあ奴しかおるまいて。
それにな、悪口を吐いておった方が、存外早くに来るかも知れんぞ。
先程まで、たまもが悪態を吐いていた人物こそ、リリア本人―――
でもしのは、リリアに恩を感じていたからか、そんなたまもを揶揄するのですが・・・
この二人が、同時に思っていた事―――「現況の打開」・・・
しかし、風の噂に聞けば、現在リリア達は、この地球を遠く離れているとも云う・・・
だからこれは「願望」―――叶うならば、叶って欲しいこと・・・
けれど、願いが叶わないならば、自分の力でどうにかしないといけない―――明日を切り拓いて行かないとならないのです。
ですが・・・秋定には、その「リリア」なる人物には、皆目見当すらついていませんでした。
それに、たまもやしのまでもが、「リリア」なる人物について評定をしている様子を見て、何やら愉しそうにも見えたので、思い切って、その事について訪ねたのです。
秋:お・おい―――ちょいちょい・・・誰なんだい、その〜「リリア」とか云う御仁。
た:お? お主も一度、お目にかかっとるはずじゃがなぁ。
し:ほら―――ボク達が危なかった時、やたらと気風の良いお姉さんがいたでしょ。
秋:おお! あの男前な御仁か!
そう云えば―――細川の跡目と、あと蓮也も一緒だったっけかなぁ・・・。
た:あの二人も、あ奴のそんな処に惚れ込んでおるのじゃろう。
おお―――そう云えば、あ奴と蓮也とは、そう云う意味では好き合うとるらしいでな。
し:そう・・・だね―――ボクと、蝉ちゃん・・・みたいだね♪
秋:はぁ?! な―――なんでそうなるんでぃ・・・莫迦なこと云うんじゃねえやい!
し:え・・・だって―――小さい時、約束したじゃない・・・
ボク、あんなこと云われたの生まれて初めてだったから・・・とっても嬉しかったんだよ♪
秋:あ・・・お、お・おい―――こ、コラたま! お前ぇ、余計なこと云うんじゃねえ!!
た:おうおうw もう秋じゃと云うのに、紅葉が散らんと、桜が満開の様じゃわw
熱いでのう〜〜余りの熱さに、わしゃここにはおれんてww
実は―――「崇徳上皇」こと、ストゥク=カイエン=グワゴゼウスと対峙する際、一度会っていたリリアと秋定。
真っ直ぐで気持ちのいい性格ゆえに、つい秋定も、女性であるのにリリアの事を「男前」だと評していたのです。
それによく見れば、リリアの周囲りには、昔・・・同じ道場にて切磋琢磨をした仲である、「千極の弟」―――
それに、今では凋落して久しいながらも、僅かに残された者達の間で、次期当代襲名を取沙汰されている、「分家の女」―――・・・
秋定は感じていました。
現在では、友人の様に振舞っているけれども、二人とも、リリアの将来に、運命と云うモノを感じ、また託してていたのを―――
だからこそ今は、友人の為に、何を為すべきなのかを。
=続く=