その二人は、互いが出会ったその時から、片時も離れる事はありませんでした。

しかし―――この二人は、互いが相反する者同士。

片や「獲物」で、片や「獲物を狩る者」。

 

ところが―――今では、「獲物」を、「獲物を狩る者」が保護をしている・・・と、云う、少し奇妙な関係だったのです。

 

そしてその二人は、仲良く、地球の衛星である「月」の裏側にある宇宙港に到着し、

そこから、今回の話題の中心点である、エクステナー大陸の東の果て・・・常磐に降り立っていたのです。

 

 

 

ミ:・・・思っていたより、埃っぽい処ね―――ここは。

メ:今しばらくの辛抱を・・・私が宿を手配してまいりますので。

 

 

 

その二人は、他者から見れば、非常によく出来た関係・・・「主従」に見えました。

それに、「主」は身体が不自由なのか、「従者」に車椅子を押させて移動をするしか他はなく、

だとしても、「従者」は何一つ、不平・不満を漏らさず、「主」からの云いつけを忠実に守っていたのです。

 

けれど・・・間違えてはならない―――・・・

実は・・・この二人の関係こそは―――・・・

「主」が「獲物」で、「従者」は「獲物を狩る者」・・・

 

なぜ―――この二人が、(いま)(もっ)て、この奇妙な関係を取り続けているのか・・・

けれどそれは、本人達にしか、判らないことだったのです。

 

 

処変わって―――常磐は()()にある、鷹山家にて・・・

現在では、しのと一緒に厄介になっている女児、たまもは―――・・・

 

 

 

た:(ふぅむ・・・今現在、起こりつつある「乱」の兆しが―――以前のわしと同じくの様に、存在そのモノを折伏された者の仕業と云うのは・・・

  余り考えたくはないが―――それがもし本当の事なら、どうにかせねばなるまいなぁ・・・)

 

 

 

その女児は―――今現在、常磐で起こりつつある「乱」の予兆を、「ある者」の仕業ではないか・・・と、感じていました。

けれど、たまもが心当たりにある者は、過去に―――云うなれば、たまも自身と同じく、人間に誅伐されし者でもあったのです。

 

ですが・・・何かの「きっかけ」がないと、現世には出ては来れない―――・・・

たまも自身は、「殺生石」と云う、依り代を経て、再び現世に出て来れた・・・

それも、2800年もの、永い歳月をかけて。

 

なのに「その者」は、たまもよりも後の世代なのだから、現世へと出て来れるはずがない―――

その事を確かめる為、友であるしのに、調査の依頼をしていたのですが・・・

敵も()る者、元々、朝廷にまで及ばせておいた力を背景に、幕府の公安・警察機関である「奉行所」に、既に何らかの影響を忍ばせていたとは・・・

ならば―――と、思い、次なる対策を練っていた処・・・

 

 

 

秋:おっ―――なんだい、こんな処にいやがったのかい。

 

 

 

この家の主人である、鷹山(たかやま)秋定(ときさだ)―――「南町奉行所」の「筆頭与力」・・・

その彼は、このほかにもう一つの「顔」を持っていました。

 

()()の夜に蔓延(は び こ)る「闇」を、伐する者達―――「妖改方(あやかしあらためがた)」・・・

その秋定(ときさだ)が来たことで、たまもはある依頼をしたのです。

 

 

 

た:秋定(ときさだ)か・・・一つお主に頼みがあるのじゃが―――聞いてはもらえまいかのぅ・・・。

秋:ぁあん? なんでぇ―――

 

た:至急、「中納言」と「左衛門尉」に、繋ぎを取ってくれんか。

秋:げ?! あの二人に・・・おいらが?

  ちょっ・・・勘弁してくんねぇかなぁ〜―――

 

た:何か問題でもあるのか?

秋:大アリだろうがよ! 第一、あの二人にとっちゃ・・・おいらなんかまだまだ―――

 

た:カカカw 「小便臭い青二才」かw

秋:笑い事じゃねぇってよ―――

 

 

 

秋定(ときさだ)の剣術の腕前は、蓮也とほぼ互角―――そんな彼をして、畏れさせる「(ふた)」の存在・・・

その「(ふた)」の存在からしてみれば、秋定(ときさだ)なんぞは、まだまだ「小便臭い青二才」だと云うのです。

 

そんな云われ方をして、少々「ムッ」とくる秋定(ときさだ)でしたが、今はそれが限界・・・

それに、だから・・・どんなに下っ端が吠えても、(わめ)いても、「妖改方」の上役である二人は、容易には動かない事を察し、

ここは仕方なく、たまもが二人への連絡役を担ったのです。

 

けれど・・・今は、鷹山家を離れるわけにはいかない―――

なぜなら、妖物達に攻め込まれないよう、結界を張っていたのですから・・・。

 

だからたまもは、式神に今回の主旨を盛り込み、二人の下へと飛ばしたのです。

 

 

その一方・・・ミリヤとメイベルは―――

 

 

 

ミ:全く・・・こんな処で、足止めを喰らう羽目になるなんて・・・

メ:ミリヤ様、いかがいたしましょう。

 

ミ:そうね・・・いちいち相手をしてやるのも、あなたが面倒でしょうし―――

メ:いえ、私なら一向に構いませんが・・・。

 

ミ:気の利かない子ね―――

  こんな下衆共の血を浴びて、それで平気だと思って?

  それに、陽の暮れる前に、なんとかして宿を見つけないと・・・私は厭よ、野宿なんて。

 

 

 

「主」は、こんな状況でも、我が儘の云い放題―――けれども「従者」は、(あたか)もそれが使命であるかのように、忠実にこなしていくのでした。

 

それに―――既にミリヤの「月詠(つくよみ)」を展開し、どこか安全な場所がないかを探っていた処・・・

現在、自分達がいる地点から、南西に(およ)そ800m・・・

その場所ならば、落ち着いてこれからの計画を練れるだろうと、ミリヤは感知し、メイベルに急行するよう伝えるのですが・・・

 

 

第百三十八話;邂逅

 

 

時を同じくして―――鷹山家では・・・

 

 

 

た:―――むんっ?!

秋:どうしたい―――何か感じたのかい・・・。

 

た:―――うむ、この感じ・・・

  何やらとてつもない力が、この場所を―――感知した? それに・・・こちらに向かっておる??

秋:な・・・なんだとぉ〜? す・するってぇと〜じゃあ―――その「道鏡」とか云う(やから)の手下が、この家に(なだ)れ込んでくるってのか??

 

た:考えたくはないが・・・

  それより、しののヤツは、まだ帰ってはおらんのか?!

秋:あ? ・・・そう云やぁ―――使いに出したまま・・・てことは?!

 

 

 

なぜか人間は、状況が暗転してしまうと、どうしても悪い方向に突き進んでしまう傾向があったようで・・・

 

その時たまもは、鷹山家の外部から、凄まじいまでの感知能力を持った者に、この家の事を知られ、

(あまつさえ)、これまた凄まじい殺意の塊を持つ者と一緒に、この屋敷へ邁進して来ている事を知らせたのです。

 

しかも―――()だ悪いことには・・・

使いに出していたしのが、()だ戻らない・・・

 

もしかすると、運悪く、その者達と出くわし、或いは・・・などと、つい負の連鎖で物事を考えてしまっていたのです。

 

そこでたまもは、一計を案じ、式神に自分の血で「蜘蛛」と綴り―――・・・

 

 

その一方で、ミリヤとメイベルは・・・

ミリヤの指示により、一点突破を図り、(あらかじ)めミリヤが「安全」だと感知した場所―――なんと、鷹山家に急行していたのです。

(しかも、おまけに・・・囲んでいた者たちも引き連れてw)

 

そう―――つまり、先程たまもが直感した、「凄まじい者達」とは、ミリヤとメイベルの二人だったのです。

 

 

 

メ:ミリヤ様―――見えました! あそこでよろしいのですか。

ミ:ええ、間違いないわ―――

 

 

 

自分達が住んでいる惑星・・・クーレの様に、石畳で舗装されていなかったからか、メイベルの移動速度では、土埃・砂埃が舞い上がり、ついついミリヤは咳き込んでしまうのですが、

それでも、自分達の、身の安全が確保できれば、不問にしよう―――と、云う思いで、豪壮な造りの門を突破し・・・た、のはいいのですが―――

そこでメイベルが目にしたモノとは・・・

 

 

 

た:(!)来おったぞ―――むぅん!出でい!!――=土蜘蛛=――

 

メ:(!!)ひぃ・・・く、蜘蛛ぉ?!!

 

ミ:あっ・・・ちょっ、メイ―――?!!

 

 

 

その門を突破するなり、出迎えたのは・・・普通よりかは遙かに(でか)い「蜘蛛」なのでした。

 

それを見るなり、メイベルは目を回し・・・押していたミリヤの車椅子も放り出してしまい、

あわやミリヤは―――そこで大怪我をしてしまいそうになるのですが・・・

そこは秋定(ときさだ)が助け、どうにか事なきを得たのです。

 

けれど・・・状況は相変わらずのまま―――

しかも、ミリヤ達を追い、鷹山家まで押しかけて来た連中と云うのが・・・

 

 

 

秋:ち・・・よりによって、こんな時に「九魔」とはなあ―――つくづくだぜ。

た:然は云えど、奴らを招き入れることも、敵わぬでのぅ・・・

 

 

 

巨大な蜘蛛を見て、目を回しているメイドと―――足が不自由な美少女を余所に、

鷹山の屋敷に、(なだ)れ込んでこようとしている邪魔者を撃退するため、秋定(ときさだ)とたまもは立ち上がりました。

 

そんな彼らを見て、こんな辺境の地でも、頼りになる者達はいるのだ―――と、

ミリヤ=アゲット=ロックフェラーは、甚だ感心をするのでした。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと