その時まで、二人はお互いの不備を慰め合っていました。

そう―――その時になるまで・・・

 

すると突然、天より・・・空を切り裂くかのような音と共に、何かの物体が、鷹山家めがけて墜ちてきたのです。

しかも、その「何かの物体」、当時の常磐の文明進度では推し量れるモノではなく、

よくよく後世では、「隕石」等の喩えに(なぞら)えられるのですが・・・実は、そんなモノではなかったのです。

 

それに、この物体、(あまね)く、鷹山家の天井・床・軒下・・・並びに庭を、破壊するだけ破壊すると、

奇蹟的に・・・ラグビー・ボール型をした独特な形状が、直立した格好で庭石にぶつかり、そこで停止したのです。

 

すると・・・? その(なか)から―――・・・

 

 

 

秋:あ゛・・・あ゛っ・あ゛っ・あ゛っっ??

た:(な・・・なんじゃ? これは一体・・・??)

  ん? 開く―――??

 

 

誰:ぅ・・・おわわわ〜っ!

誰:おっ―――と・・・

誰:きゃっ―――

 

 

 

なんと、その(なか)からは、「桃から生まれた〜」ではなく・・・

人が三人出てきたのです。

 

しかもこの三人、どうやら―――・・・

 

 

 

た:(!)リリアに、蓮也殿・・・それに、市子殿も?

  お主ら・・・一体どうして、天から降ってきおったのじゃ??

 

リ:〜ってってぇ・・・おっ、たまじゃねえか、(ひっさ)しぶりぃ♪

蓮:それにしても・・・ここは常磐ではござらぬか。

市:そのようで・・・しかし、本当に、生きて着けるモノとは・・・

 

 

 

少しの間、地球より離れて、宙外の事情などを知る為に、視察に赴いていた三人―――リリア・蓮也・市子が、この惑星(ほ し)へと返ってきた・・・

それはそれで、寧ろ喜ぶべきモノなのでしょうが・・・

何か一つ、重大な事を、忘れてはいませんか―――?w

 

 

 

秋:あ゛っ・あ゛っ・あ゛っ・・・あ゛―――・・・

  お゛・・・おいらの家が・・・??

 

リ:あ〜りゃりゃ、こいつはひでえわw

  けどな、形あるモノはいつかは壊れる―――そうくよくよすることは・・・

市:そう云う問題では・・・ないとは思うのですが―――・・・

蓮:過ぎたことを悔やんでも、何も始まり申さん!

 

市:蓮也さん・・・それもちょっと違うかと―――

 

 

 

リリア達を載せて落下して来た物体は、結果として、鷹山家を半壊させてしまった・・・。

つまり秋定(ときさだ)は、今まで自分が、常識としてきたモノ以上の出来事が、立て続けに起こってしまった事に―――ではなく・・・

現実としての問題、自分が住むべき屋敷が、半分以上も役に立たなくなってしまった事に、唖然・茫然としていたのです。

 

 

それよりも・・・たまもは一つ、意外な事を感じ取っていました。

 

それと云うのも、元々鷹山家は、代々奉行所に勤めていたこともあり、立地は「八丁堀」界隈にあったのです。

それに・・・その場所は、鷹山家だけに拘わらず、奉行所に勤める他の家も密集していたのです。

 

つまり・・・こんな一大事が起きてしまっていると云うのにも拘らず―――

何一つ―――・・・

誰一人として―――・・・

騒がれない・・・

 

古来より、「火事と喧嘩は穢戸の華」と(たと)えられるくらい、騒動好きでもある、この都市の住人達が・・・

騒がずにはおられない―――?

 

その原因を模索している最中(さ な か)・・・

 

 

 

ミ:やはり・・・胸騒ぎがしたと思ったら―――こう云う事だったようですね。

た:お主は―――・・・

  ・・・すると、今回の件は、お主が―――・・・

 

ミ:まあ、お待ちください・・・。

  メイ―――あそこに・・・

メ:畏まりました。

 

 

 

メイドのメイベルに車椅子を押されながら、ミリアが鷹山家に現れた・・・

そして、何かを知っているかのような物言いに、たまもも思う処となり、その事について訊いてみると・・・

 

ミリアは確信を得る為、リリア達と共に墜ちてきた、例の「物体」の近くまで寄ると・・・

 

 

 

ミ:・・・―――やはり、これはフロンティアの「脱出艇」だわ。

リ:はい?? ダッシュツ・・・テイ??

 

ミ:そう―――これは紛れもなく、フロンティアが所有する艦艇や施設などが、何らかの事情により破壊・・・或いは使用不能に陥ってしまった時に、

  乗員や職員を無事に脱出させる為の「緊急救命器具」の一つよ。

 

  この私も、初めは「隕石が墜ちてきた」・・・と、ばかり思っていましたが、次第に彼らの思念を捕えたお陰で、「或いは、もしや」・・・と、思ったのです。

 

た:・・・それでは―――お主は、「これ」が墜ちて来た事は判ったのじゃな?

  では・・・なぜ・・・他の者達が―――・・・

 

ミ:ええ―――まあ、確かに・・・未曾有の出来事ですものね・・・

  皆さんも、一応は、注目されてはいたようですが・・・

  ウ・フ・フ・フ―――では、どうして、こんなにも静かなのでしょうね・・・

 

 

 

そう―――リリア達三人が載ってきたのは、フロンティアの脱出艇・・・

本来ならば、危機が迫った時に、一人でも多くの乗務員や職員達を脱出させる為の器具なのですが―――・・・

では、どうして―――その時にはリリア達が・・・?

(その事情は、また後ほどで判る事なので、ここでは敢えて割愛させて貰うことにして―――・・・)

 

それよりも―――たまもが疑問としていたのは、ミリヤにはこの事態の事が判っていたのに・・・

ならばどうして、他の者に知れることがなかったのか―――?

 

いえ・・・実は―――

鷹山家に、何があったのか・・・起こってしまったのか・・・は、既に穢戸中の人間達に知れ渡っていたのです。

 

けれど・・・ならばどうして―――大騒ぎにならずにおれたのか・・・

 

車椅子の美少女は、ただ―――静かに・・・にこやかに・・・微笑むだけだった・・・のです。

 

 

それはそうと、このままでは埒が開かないので、再びあの場所に(つど)うのですが―――・・・

 

 

 

リ:うっひょお〜なんだここ・・・すんげぇいい匂い、プンプンしてるしぃ〜♪

  なぁんか―――違う「ヤル気」が出てきそうだよな?!

市:でも・・・ここ・・・私―――ちょっと抵抗があります!

 

リ:お? どうしたよ―――市子・・・随分とまた、顔が紅いじゃん。

市:そ―――そんな恥ずかしい・・・云わないでくださいっ!

 

た:ふむふむ、市子殿も初心(う ぶ)で何より―――善哉(よきかな)善哉(よきかな)

市:もぅぅっ・・・玉藻前様までっ!!

 

リ:で〜〜なんで市子は、顔が真紅(ま っ か)なんだ?

市:(ええ〜っ?!)だ・・・だって、この場所―――男の人と女の人が・・・

 

リ:え?? 何云ってんだ―――もちっと、声張って云ってくれよ!

 

た:かっかっか♪ リリアよ―――お主も、知っておいて損はないぞ?

  なにしろこの場所は、男と女が、ものっそい好き関係になれる場所じゃからのう♪(色んな意味でw)

 

リ:えええ〜っ?! それ本当かよ! し、信じられ・・・

  じ、じゃあさ―――み、みっちゃくしてあるいちゃうってことも・・・できるわけなのよね?

 

 

 

皆、絶句―――

それと云うのも、いつもならば、「男前」の・・・気風(き っ ぷ)の好い話し方なのに、殊更「恋愛関係」になってしまうと、「女の子(恥じらふ をとめ)」の部分が出てしまうようで・・・

たまもも、少し揶揄(か ら か)うつもりで云ってみたことなのに、この人物の、意外にして意外な弱点を知った事に、内心北叟笑(ほ く そ え)んでみたりもしたのです。

 

ともあれ、目的地である「播磨屋」に、着くことは出来たのではありますが―――・・・

 

 

 

蓮:ここでござるか―――噂で聞いておったより、豪華でござるな・・・。

市:そうですね・・・しかし、こんな処が果たして・・・

 

遠:おお、戻って来たか―――それにしても、先刻のあれは・・・

爺:のっほほぅ〜♪ おぅ―――すぅい〜とぅ♪

 

リ:ひゃっ?!

  〜〜ん・な・・・なにしやがんでぃ! このクソ爺!!

爺:あ、ひらぁ〜り

 

リ:ん〜〜のヤロウ〜〜・・・折角私が、好い気分に浸れてたってのに―――(どうやら「蓮也とご一緒」と云う、妄想の最中だったらしいw)

  それを、私の尻に飛びつくたぁ―――いい度胸してんじゃんか!!

 

市:リリアさん・・・(しかし、ちょっと「ほっ」w)

 

 

 

吉原界隈、随一の大店(おおだな)「播磨屋」―――・・・

ここが、果たして・・・自分達が、或る事情により、急がなければならなかった理由の場所なのか―――と、市子は少し不安になってくるのですが・・・

そんな事を余所(よ そ)に、リリアの尻に、否応なく飛び付いてきた一人の爺様に、普段通りのリリアに戻ってくれた事に、胸を撫で下ろした市子もいたのです。

 

それはそれとして・・・今のリリアの言葉遣いに―――

 

 

 

遠:見た処、お姉さん、女みたいだが・・・本当は俺みたいに、男なのかい。

リ:はぁん? どこ見てんだよ―――私はな、正真正銘の、女だよ!!

 

た:先程までは、可愛らしい、をとめであったがのw

リ:はっ―――ナニ云ってやがる・・・あ、あんなの〜ちがうよぅ・・・私じゃ、ないよぅ・・・

 

爺:おっほほほ―――(うい)のう♪ (うい)のう♪

  ならばこの爺めが、まぐわいの手ほどきをば・・・

遠:そんな事はせんでよろしい―――・・・

  ところで、先刻の「あれ」は、なんだったんだ。

 

市:(おおよ)その事は判るとは思いますが・・・「あれ」によって、私達は戻って来られたのです。

 

 

 

自分達が知っている常識の範疇には、収まりきれない事が、そこには山積していました。

 

自分と同じ―――身体は「女」でありながらも、態度は「男」のように振る舞う・・・「絶世の花魁」や、

やはり、一部の人間には、「只事(ただごと)」には映らなかった、「天空からの落下物」・・・

また、それに乗り合わせ、「戻って来た」とする、当人達・・・

 

そして・・・この後に、ようやくにして知り得る、自分の仲間の身に起こった、或る不幸な出来事に、

思いも寄らない出来事(シ      ナ      リ      オ)の進行は、着々と進められて行くのでした。

 

 

 

第百四十五話;意外なる真相

 

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

 

あと