自分達が、地球にいなかった間に、仲間だと思っていた、ある人物の身の上に降りかかった不幸に、リリアの怒りは今にも天に届きそうでした。
しかし―――その前に、浮上してきた数々の疑問・・・先ずはそれらから収まらせる必要があり、
「自分は男であり、また女である」と主張する美女には、実際に身体検査をするなどをして、「両性具有」とは何たるかを知り、
また「天空からの落下物」も、「そうした備品」の一つである事を知るも、未だそうした実感が湧いてくるモノではないらしく・・・
市:実は・・・私も未だに信じられぬことなのですが、現在、私達の事を、非常に目に掛けてくれている方から、
「今現在、常磐にて大陰謀が進行中だ・・・」と、聞き及びまして―――・・・
た:ふむ、なる程のう・・・その方とは、ジョカリーヌ殿で相違ありませんな。
遠:それより誰なのだ―――その・・・「じょかりーぬ」と申す御仁・・・
た:このわしの正体を・・・一目で見破ったお方よ。
しかも、過去のわし以上に、秘められし能力を、お持ちであると感じた。
光:ふぅむ・・・「金毛白面九尾」であるお主をして、そう云わしめるとは・・・のう。
市:それで―――この国の出身である、私と蓮也殿は居ても立ってもいられなくなり、
急遽あの方の発案により、戻ってきた次第なのです。
そこで、その時の状況の証明や説明をしていく内、「謎」となっていた案件を、須らく解き明かす事は出来たのですが・・・
そうしている間に、仲間の一人が見当たらない事に気付いたリリアは―――・・・
リ:ああ―――そう云えば・・・しのはどうしたんだ?しのは・・・
別段、他意があって、しのの息災を訪ねたりはしませんでした。
ただ、「彼女」とは顔見知りになり、仲間だと思っていたから、安否を気遣っただけ・・・
それに、しののことを想っている秋定も、なぜか自分達の会話の内には入って来なかった・・・
ただ彼は―――沈痛な面持ちをしているだけ・・・
それに、この度、地球に帰還して来た、リリア・市子・蓮也の三人は、それまでにあった事情を知らなかったので、
この度しのの身に起こった出来事を、知ろうと努めたのです。
しかしその事は、「ある事実」を、その目に収めている秋定にとって、最早どうにもできるハズもなく・・・
秋:しのはなあ―――・・・しののヤツは・・・殺されたんだよ・・・あの、小夜ってヤロウに!!
まるで・・・吐き棄てるかのように・・・憎しみのこもった語彙で、しのの身に起きた不幸と、そうした被疑の人間の名前を叫ぶ秋定―――
しかしリリアからは、意外な事が口から洩れるのでした。
リ:・・・は? しのが死んだ―――?
で・・・そうしたのは、サヤさんだって云うのか?
秋:(?!)なんで・・・お前が、知りもしねえあいつの事を―――
リ:知ってるさ・・・なあ、蓮也に市子、それにあの人、結構いい人なんだぜ。
なにしろ私ら三人・・・と、イリスっての、暇を見つけちゃ、あの人に剣術の稽古を受けてたもんなぁ。
蓮:うむ、それにあれほどの使い手、そうざらにはおりますまい。
拙者が慢心していたこと、痛感いたした次第にござる。
市:それはこの私も―――お陰で、数々の剣技を習得するに至りました。
リ:ほら・・・な? だから何かの間違いだって。
秋:そんな・・・けどなぁ、しのが死んだことにゃ、変わりは・・・
た:ん?ちょっと待て・・・秋定、お主、本当にしのが死んでしまったのか、ちゃんと確かめたのか。
秋:「ちゃんと確かめたのか」―――って・・・んなの、見りゃ判るよ・・・。
あいつの身体から、大量の血が流れてて・・・おまけに、ピクリとも動きゃしねぇ・・・ありゃ、確かに―――
ミ:それで、その人の「死」を確かめたと・・・それでは信憑性に欠けるきらいがありますね。
私の知っている者の内では、巧妙に「死を装う」事を生業とする者もいますから・・・
ですから、或いは―――・・・
第百四十六話;死を装う者
しのを殺害したのは、小夜―――けれども、その人物は、同時にリリア達がよく知る人物でもあり、何よりリリア達の武術の手解きをしてくれていた恩人でもあったのです。
だから・・・そんな人物が、自分達の仲間の一人を、害するわけがない―――と、したのですが、よくよくその状況を、実際に目撃した秋定から、詳らかに聞いてみると、
秋定は、しのの「死」を、有視による「視認」のみで済ませており、なにも、初期の「生体反応」による、確認ではなかったことが判明したのです。
すると、その時の状況を訊いたミリヤは、この世間には、実に緻密に、死を偽装できる者達がいる事を説き、
今までは、有り得もしなかった「しのの生存」に、一縷の望みが出てきたのです。
そうした一例として―――世間に蔓延る、犯罪組織撲滅の為、その組織から離反した人間を、法廷での証人として喚問をする・・・
しかし、そうした事をしてしまえば、その組織にとって大いなる不利益を被ることになることから、どんな手を使ってでも抹殺を試みる・・・
けれども、そうした大事な証人を、易々と失うわけにはいかない為、証人を護る手順・・・「証人保護プログラム」によって、
特殊な技術を持つ者達により、精密に死を装う事によって、これまでに多くの証人を、生かしながら抹殺して来た事実があるのです。
閑話休題―――・・・場所は一転し、伏見城の地下牢・・・
良く見れば、そこには、両手に手枷をされ、壁に繋がれた・・・しのの姿が??
しかも、そんな彼女を、見つめる視線が―――・・・
そして、しのの意識は戻り―――・・・
し:(・・・!)
―――こ・・・ここは・・・
サ:よっ♪ よーやく気が付いた・・・
し:さ―――小夜さん?? どうして・・・って、あれ? ボクまだ生きてる??
サ:ったり前じゃん、どうしてあんたみたいな良い子を、殺す道理がどこにあるってんだい。
し:だったら・・・どうしてボクにあんな事を・・・
サ:フフ〜ン♪ それよか・・・ここ、どこだか気付かないかい。
し:えっ? どこ・・・なんですか、ここ―――
サ:・・・そう云えばあんた達、「道鏡」ってなヤツの事を、ここ最近探ってたよね―――
そいつの、根城の一つが、「伏見城」・・・だと云ったらぁ?
しのが意識を取り戻すと、目の前には、自分を刺殺したはずの、橋川小夜の姿が・・・
いや―――その前に・・・自分は、この人物によって、殺害されたはずなのだから、生きている事自体が疑問になって来たのですが、
その辺を巧い具合にかわされてしまい、現在自分が身を置いている場所が、敵の直中である事を知らされると、怖気づくモノだと思いきや・・・
し:ここが・・・? じゃあ―――小夜さん・・・
サ:フフン―――言葉は無用さ・・・思う存分、調べてきな。
「忍」の本分に、敵に悟られることなく、陣営に侵入し、必要な情報を攫って行く・・・まさに、スパイ宛らの能力が求められていました。
しかも今回は、その半分である―――「敵に悟られることなく、陣営に侵入し・・・」までを、小夜と云う人間を介して、して貰っていた・・・
おまけに、自分を拘束していた手枷や足枷までも、外して貰って・・・
そこで、しのは知る処となるのです。
この小夜と云う人物は、自分達を、手助けしてくれていた―――?
けれど同時に、ならばどうして、傍から見れば誤解を招きかねない様な行動を、取らなければならなかったのか・・・
疑問は未だに残るのですが―――
今は取り敢えず、解き放たれた事により、現在自分達が血眼になって捜し続けている、「道鏡」の陰謀計画を暴く為、
第13代目の加東段蔵は、暗躍することとなったのです。
それにしてもサヤは・・・なぜ、誤解を招くような行為をしなければならなかったのか―――・・・
マ:『・・・あれで宜しかったのですか、子爵様。』
サ:いいんだよ―――それに基本、私らの種族は、今が愉しけりゃ、後は野となれ山と成れ―――って主義でね♪
それに・・・あの方の緊急連絡で、あの子らが帰ってきてるって云うじゃん―――
宇宙に出て・・・どれだけ揉まれて帰って来たか―――興味あるだろ♪♪
やはりサヤも・・・「闘争嗜好家」の一族の、血脈を受け継いでいるモノと見え、
往々にして、死ぬことすら出来ない身体に産まれてきた運命と云うのは、時代を経て、その特色を色濃くしてしまっているようで、
ついぞ、敵に寝返った「振り」でもしたくなる―――と、云った処の様です。
そしてこれから―――「洛中・伏見城」と、「洛中・聚楽第」にて、空前絶後の大乱が、捲き起ろうとしていたのでした・・・。
=続く=