自分達に危害を加える為―――叢くる数多の妖魎・・・
しかし、そんな者達を前にしても、動ずる―――また、臆することなく・・・
それどころか、冷静に振る舞う二人の美少女。
すると、たまもは、自分のすぐ隣にいる、ミリヤの容姿に、著しい変化を認める処となり・・・
た:お・・・お主―――額に、もう一つの眸が・・・?
ミ:見てはなりません! 見れば、必ずや・・・この者達と同じ運命を辿る事になりますよ。
その変化とは、ミリヤが、第三の眸を持つ存在であった・・・と、云う事でした。
実はたまもも、第三の眸を持つ事自体は、知らないわけではありませんでした。
それと云うのも―――たまも自身が修めた「陰陽道」や「ダキニ道」等の、呪術的要素の濃い御業を極めんとする時、
掌や額に、擬似的に眸の模様や、桔梗印を施す風習がある事を知っていたのですから。
それに、そうすることには意味合いがあり、術式を行使する時に集中を高めたり―――だとか、潜在能力を引き出すきっかけにしたり―――だとか、
果ては、能力の倍増・増幅を試みたりするところにあるわけなのですが、
所詮そんなモノは、「擬似的」に「創り出したモノ」であり、生来より持っている者に比べれば、遙かに敵わないのです。
けれど実際、たまもでも、第三の眸を持っている者を目にするのは、これが初めてだったのです。
しかし・・・ミリヤからは、自分の姿を見られる事に、強い抵抗感を露わにしてきた―――
それは、自分のこの姿が、醜いから・・・なのではなく―――
ミリヤ自身が持つ信頼と云うモノを、たまも達に託してみよう―――と、云う配慮から、
ミリヤ自身が持つ、封じられた能力の解放を、思い立ったから・・・
けれど、封じられた能力を解放してしまう事で、自分の信頼を託した者達に、これから起こるであろう、自分の能力の巻き添えを喰わせてはならない・・・
それもまた、ミリヤの頑なな決意から発せられた言葉であり、行動でもあったのです。
では・・・これから一体、何が起ころうと云うのでしょうか―――・・・
ミ:フ・フ・フ―――あなた達は・・・今・・・この私しか見えていないはず・・・
何しろ、この私自身が、そうしているのですからね・・・。
だから、今のこの私の姿を、見ずにはおかれない・・・
だけど・・・もうその時点で、あなた達の運命は、決まってしまっていたのです。
さあ―――お逝きなさい・・・
嘗て―――「カロー」と云う惑星で、その惑星に住む住人全員が、互いを殺し合って、全員が死亡する・・・と、云う、過去にも類を見ない惨劇がありました・・・。
そうした事実の通報を、近隣の惑星から受けた「宇宙警察機構」は、直ちに捜査に向かう事になるのですが―――
実は、「住人全員の死亡」と云うのは、全くの誤報であり、その惑星には、たった一人だけ・・・両足に重傷を負った、少女だけが残されていたのです。
しかし、UPの捜査員は、この惨劇の仕業は、この少女が起こしたことだと云う事が判りました。
なぜならば、不気味に開かれた、第三の眸・・・
その眸に見つめられた所為でもあるのか、他の捜査員たちが急に罵り合い始め、
終には、配給されていた銃で、撃ち合いまで始めてしまった・・・。
けれど、奇蹟的に生き残った捜査員の一人は、自らの意思で、自分の命を断とう―――と、したその瞬間・・・
急に自我を取り戻す事が出来たのです。
そして我に返った処で、周囲を見渡せば・・・恐らく、同じような経緯で死んだ、この惑星の住人達に交り、
今回の捜査に加わった、同僚達の殉職した姿が―――・・・
そこで、ここまでの騒動を巻き起こした、渦中の少女の方を見ると―――
力なく、その場に倒れ込んでいた・・・
つまり、その捜査員が自我を取り戻したきっかけとなったのは、その少女の意識が途絶してしまったことにあり、
また、容疑となった、その少女の身柄の確保も、易々と出来てしまったのです。
それから後の顛末は、ご周知の通り―――
幼いとは云いながらも、周囲りの住人達を惨殺してしまった、少女の罪は拭えない処となり、
とは云え、あれからの捜査の経緯で浮上してきた、虐待の事実も明るみとなり、
結果―――情状酌量の余地が与えられ、極刑は免れたものの、代償として、辺境の惑星である「クーレ」に、「永久幽閉」・・・と、
経年経過による「自然死」にならないよう、この事件を引き起こした、当時のままの年齢の姿でいることを命じられた・・・
それから歳月・月日は流れ、現在は、或る人物が秘密に組織した、機関の構成員の一人として、宇宙の闇を暗躍していたのです。
それでは、ミリヤが持つ、最凶の能力の名称とは・・・
リ:―――なあ、あんたの主さん・・・だっけ?
あいつ、随分と思わせぶりなこと云ってたけど、どうしてあんなに自信たっぷりなんだ?
それほど、あいつの持ってる「月詠」ってのが・・・
メ:それは違います―――「月詠」とは、単に他人の思考を詠める能力・・・
ですが、それが、あの方の持つ異能の総てではないのです・・・。
「月詠」は・・・余りにも凶悪過ぎる為、使用する事を限定された、あの方の本来の能力の、「一部」に過ぎないのです・・・。
メイベルは―――知っていました・・・。
いえ、実の処は、メイベルがミリヤの下にいることとなった当初は、今のリリア達と同じ様に、「知らない側の人間」だったのです。
それでは、なぜ知ってしまう事となったのか・・・それは―――
過去に一度だけ、自分達が所属する「ディーヴァ」が、壊滅の危機に追い込まれた時、
ミリヤの持つ本来の能力の解放のお陰で、どうにか救われた経緯があったからなのです。
そう―――つまりは、そのこと自体・・・ミリアの本来の能力と云うモノを、マリアもヘレンもジゼルも知っていると云うこと・・・
そしてメイベルは、重たい口調で、こう呟いたのです。
メ:あの能力を・・・この目で実際に目にした時―――私は何と幸運なのだろうと思いました・・・。
なぜか・・・? だって私は、あの方の側に仕えさせて貰っている身なのですから・・・
今の時点では、少なくとも、あの方の「敵」ではない―――けれど、「敵」と認識をされてしまったら、そこで終焉い・・・
もう、そこからは、なにもありません・・・未来も―――生も!!
リ:な・・・なんだよう〜〜だからなんだっての―――
市:(!!)こ―――・・・この・・・感覚は・・・
蓮:大気の緊張が、尋常ではないでござる!!
メ:・・・どうやら、始まってしまったようですね―――
それにしても、なんて可哀相なのでしょう・・・私は、憐れみすら感じます。
あの方はそれで―――あの辺境の宙域に、追いやられたも同然なのですから・・・
あの方の持つ、最大にして、最凶・・・最悪の異能―――それこそが・・・
第百四十八話;サード・インパクト
ミリヤが持つ、本来の能力―――そのことが原因によって、ミリヤの出身惑星である、カローの誰しもから忌み嫌われ、呪われたモノでした。
そしてその事は、ミリヤの特異な容姿も相まって、虐待の容認ともなり、最後の箍が外れてしまった瞬間―――
住人達は、すぐ近くにいた他の誰かを、「殺してしまいたい」と云う衝動に駆られるようになり、結局は、最後の一人となるまで、その行為は続けられたのです。
そして、最後に残った一人でさえも、「自分で自分を害するように」―――と、云う、指令を降すと、
なんら抵抗・・・躊躇することすらせずに、その一人は自らの命を絶った―――・・・
その後、奇蹟的にUPの捜査員に保護され、この事件の概要が、そのまま・・・名称不明だった、ミリヤの本来の、異能の名称となったのです。
そしてそれは・・・今現在、伏見城を護る者達に、遍く作用する処となり―――・・・
ミ:フ・フ・フ―――『万は千に、千は百に、百は十に、十は一に・・・』
お前達は―――この私の姿を見・・・また、この私の眸に捉えられてしまったのが、運の尽き・・・
これからお前達は、互いを憎しみ、罵り合い、呪い、そして殺いで逝くのです・・・。
車椅子の美少女の「眸」が放つ範囲―――とは、既に、伏見城内に入っている市子にも感じられたように、その間合いは、とてつもなく「広い」と云えました。
そして、ミリアが口にした言葉の通り、ミリヤとたまもを害しに来たはずの者達は、1km離れた処にいた者にまでも作用する処となり・・・
互いを罵り合い・・・傷付け始めたのです。
だから―――遠くにいる者達まで「そう」なのだから、実を云うと、一番近くにいるたまもが、一番危険だと云えたのです。
リ:「サード・インパクト」・・・ねえ〜〜おっかねえのも、あったもんじゃないな。
メ:しかし―――あの能力も、所詮は「万能」と云うワケではないのです。
それに、ではなぜ「永久的」にではなく、「半永久的」なのでしょう・・・
それは一つに、「天使の翼をもつ悪魔」―――マエストロ・デルフィーネ様の意向によるモノだからです。
リ:あの人・・・ねぇ〜―――はは、そりゃ納得だわw
市:それでは、なにが「万能」ではないのでしょう。
他人の意志に介入し、意のままに操れる能力―――「サード・インパクト」・・・
しかし、そんな能力も、「万能」と云うワケではないようなのでした。
而してその理由も、ミリヤを「ラクシュミ」として、「ディーヴァ」に勧誘した、ジィルガの思惑もある様であり、
この強力無比な、ミリヤの異能を、「解放時間の短縮」という、云わば時間設定を設けることにより、
「感情の起伏」等と云う、安易な条件下では行使し難くさせたのです。
それにまた、そうした条件を設けることで、やがては味方にまで波及することになる、被害の拡大化を抑制する為のモノ・・・
所謂、「安全装置」を付けることが、ジィルガの本来の狙いであるように思えてくるのです。
=続く=