リリアがジョカリーヌの招きによって、空中庭園―――宇宙へと上がっていたのと同じ頃・・・
エクステナー大陸に、ジョカリーヌの意向を受けて訪れている者達が二人いました。
而してその二人は、迷うことなくある場所を目指していました・・・。
それが―――今回、「プロメテウス」からの侵攻を受けている、オデッセイアの一地方・・・北部に位置する「アンカレス」・・・
そのアンカレスは今、未曽有の危機に晒されていました。
猛攻に次ぐ猛攻―――・・・
最早防壁は崩れかかり、落城寸前が目の前にぶら下がっているかのようだった・・・
なのに―――そこは意外にも持ち堪えているのでした。
それも、元々はオデッセイア出身ではないながらも、リリアに共感し―――彼女と一緒に生きることを決めた漢・・・千極蓮也によって。
彼は知っているのです―――いかに堅牢な城塞であろうとも、所詮は人間の作った物・・・
内にいる人の和が崩れれば、そこから立ち所に瓦解していく事を。
だから・・・アンカレスの砦は、今にも崩落し―――落城寸前だったけれども、なんとしても・・・喩え自分達の命を賭けてでも、この砦を護り抜いて行く事を将兵達に呼びかけ、
守将や守兵達も、彼のこの呼び掛けに呼応し、どうにか持ち堪えていたのです。
その様子を見て―――・・・この地に着いたばかりの、二人の内の一人の云うのには・・・
ヱ:―――フフ・・・どうやら戦人がいるようね。
エ:そのようだね―――こいつは、私達は余計なお世話なのかもw
ヱ:あら、だったらあんた一人で帰る?
エ:冗談―――w 喩え無理してでも置いといてもらうよw
落城寸前―――の、はずなのに・・・あの内に凄腕の采配を振るう者でもいるのか・・・
どちらかと云えば、彼女たち二人の興味はそこにありました。
なにしろ彼女たち二人は・・・自分達の国であるパライソがある、「ガルバディア大陸の統一」―――と、云う一大事業を・・・
宿敵である「カルマ」を滅ぼすと云う大戦功を打ち立てた功労者でもあったのですから。
つまりは、戦の駆け引きの妙を心得た「戦巧手」―――・・・
彼女達が戦場に現れれば、必ずや勝つ―――・・・
それほどまでに「神格化」されていた嫌いすらあったのです。
それはともかく、主君に云いつけられた通り、この砦を落とされないよう協力してやらなければならないのですが・・・
いわゆる、彼女達はこの砦を護る者達にとっては見知らぬ顔・・・
そこの処を、先ずどうにかしなければならないのですが―――・・・
兵:―――むっ?! なんだ、お前達は・・・
ヱ:いえ、私達は決して怪しい者では・・・
エ:アッチョンプリケツ!! あっちでダルマさんが転んでたんだよぉ〜!
「・・・あんた―――ねぇ・・・もうちょっと、ましな云い訳思いつかなかったわけ?」
「だってさぁ・・・疑われた時は、こんな風にするのが一番なんだってばヨw」
「確かに・・・まあ・・・この砦に入る事は出来たけれど・・・」
丁度自分達の前に現れた見回り兵の誤解を解くために、ヱリヤが「決して怪しい者ではない」と、云おうとしたところ、
ヱリヤの側では、どこからどう見ても奇妙で珍妙な事を云うエルムを見て、見回り兵は何ら迷うことなくヱリヤとエルムの二人を捕縛してしまったのです。
それにしても・・・流石にエルムのあの一言は頂けなかったようで、そこをヱリヤは苦言を呈していたのです。
そうしている内に―――ヱリヤとエルムを捕縛した見回り兵は、いかにも怪しげな二人をどうすべきか・・・その判断を、この砦を護る将と蓮也に託すのでした。
将:ほぉう―――女性・・・
蓮:しかし、油断めさるるな―――この一帯の者達は、この砦が戦場となるのは先刻承知のはず・・・それを―――
将:ふむ・・・それでは、どうするおつもりかな―――
「この男・・・出来る―――」
ヱリヤは、その双眸に蓮也の一挙一動を収めました・・・。
隙のない立ち居振る舞い―――喩え女性であろうとも、怪しい二人に配る目線は刃物のような感じさえした・・・
それに比べると、この砦を護る将の、なんと見劣りする事か―――・・・
恐らく、この砦が持ち堪えられてきたのは、この男の功績に拠るところが大きい―――・・・
ヱリヤの判断は、素早くもありまた的確でした。
けれど・・・そうしている内にも、プロメテウス側の攻勢の手が緩められられたわけではなく―――・・・
兵:報告です―――東側入り口の門が、プロメテウスに攻められているようです。
蓮:そうか―――相判った。
守将殿、ここはひとまず門の守備を・・・この者達の詮索は、後回し―――と、云う事で・・・。
砦にある門の一つが、敵からの猛攻に遭い、今にも落ちようとしているのだと云う―――・・・
その報告を耳にした蓮也は、怪しい二人の女性(ヱリヤとエルム)の身柄をどうするかを据え置きにし、この砦を護る将と共に、また戦場へと赴いて行きました。
第十五話;闘いへの岐路
そんな・・・今までの流れを、その目に収めてきたからか―――いや、既に蓮也の男気に惚れ込んだからか・・・
ヱ:・・・―――ねえ、シュターデン、あなたあの男を見てどう思う・・・
エ:フフッ―――野暮な事はお云いでないよ・・・私は気に入っちまったねぇ。
ヱ:そう・・・だったら、もう何も聞かないわよ―――
エ:フフフ・・・誰にモノを云ってるんだい―――
彼女達にしてみれば、きつく縛られた縄目であっても、それは全く「拘束」の意味をなし得ていませんでした。
いわば・・・そこで大人しくしていたと云うのは―――この戦場が・・・自分達が出るほど価値があるモノかどうか・・・
しかしそれは―――蓮也只一人を見さえすれば良かったのです。
そのことを確認し終えると、二人を縛った縄目は役目を終え、須らく戦場への岐路は拓かれたのです。
防戦一方―――今回もまた、プロメテウスからの一方的な攻めに耐える戦が続いていました。
その事に音を上げそうになっているオデッセイアの兵士を励ましながら、蓮也は今回もまた血路を切り拓いていたのです。
それにしても・・・「守り一辺倒」と云うのはどうにもいけない―――
ここにも少しばかりの戦力が投入されたのなら、オデッセイア側からも攻めて戦線を押し上げ・・・プロメテウス軍を河の―――橋の向こう側に押し戻す事が出来るのに・・・
蓮也が構想に描くその戦略は、砦を護る将からの同意をすぐに得られたモノでしたが・・・
如何にせよ、オデッセイアの都―――ノーブリックまでの、使者の路は依然閉ざされたまま・・・
つまり、四面を厳重に包囲されているので、その包囲網を突破しなければ、自分達の窮状を伝えることすらできない・・・
それに、奇跡的にも使者が辿りついたとしても、援軍も容易に近づくことすら儘ならない―――・・・
しかし―――その事を・・・蓮也が構想として描いている戦略を、ものの見事に体現させた者が現れたのです・・・。
それも・・・たったの二名―――
するとこの時―――アンカレスの砦最上部に、いるはずのない二つの影を目撃した・・・と、兵士の一人が・・・
その事を聞き、そちらの方角に視線を移した蓮也が見たモノとは―――・・・
この地域でも見かける事のない・・・真紅の鎧を纏った女性の騎士と―――
真っ黒な外套を羽織った、やはりこちらも女性の導師がいるのを―――
蓮也ははっきりとその目で確認したのでした。
=続く=