伏見城・第三層にて、自分達を待ち受けていたのは、やはり自分達も知っている、「あの」サヤなのでした。

しかし、そうと判れば、どうして自分達を分断させるかのような、行動が理解出来ないのです。

(けれど、それもまた、サヤの「ある計画」の内である事が、次第に理解出来てくるのですが・・・)

 

それよりも、大型の肉食魔獣であるトウテツに、何事かを云い含めさせると―――・・・

 

 

 

マ:「・・・畏まりました―――」

 

リ:あっ・・・あいつ、どこへ?

サ:なぁに、ちょいとした野暮用さ。

  さぁて―――それじゃ、そろそろこっちも、おっ始めるとしようかね。

 

リ:「始める」・・・って、なにを?

 

サ:市子に蓮也―――刀を抜いて構えな・・・

  それとリリア、あんたは後だ。

 

市:―――まさか・・・

蓮:そなたがここにいる理由・・・

 

サ:おおよ、呑み込みが早くて、なによりだ。

  これより―――

 

 

第百五十話;真剣での組み手稽古

 

 

サ:―――を、開始する!

 

 

 

主人から、何かを命ぜられた「従者(サーヴァント)」は、すぐさま主人の影に入り、何処(い ず こ)へと去りました・・・

そして、次にサヤの口から洩れた言葉とは・・・「真剣での組み手稽古」―――

 

それに、この三人は、パライソにいた頃、サヤに、同じような手法で稽古を付けて貰っていたのです。

 

しかし―――お互い同士は、相反する存在・・・

片や「生者(せいじゃ)」―――片や「不死者」―――・・・

 

つまり、生身の人間同士が、「真剣で仕合う」となると、どちらもが傷付いてしまう・・・

けれど、「生ける屍」は、いくら傷付けようが、無意味・・・

それに、サヤの刀には、或る特性があったのです。

 

それが・・・サヤ自身の意思により、「斬れる」「斬れ(ら)ない」が、選択出来た―――

 

それに―――・・・

 

 

 

蓮:参り申す―――! ――=清流剣=――

市:いざ、尋常に―――! ――=明鏡止水=――

 

――=清流剣=――

サ:―――・・・・

――=明鏡止水=――

 

蓮:ぐほぉっ―――・・・!

市:きゃあぁっ―――・・・!

 

 

 

以前、サヤから授けられた技で、挑んで行く、蓮也と市子・・・

しかし、その剣伎は元々、サヤから授かったモノ・・・

だから、より洗練された、同じ剣伎で、返されてしまったのです。

 

それに・・・サヤからの、返しの剣技の直撃を受けても、二人の身体には、傷一つ付いていなかった・・・

けれど、同じ剣技なのに、自分達の刃は(かす)りもしなかった・・・と、云う事は―――

 

 

 

蓮:ええい・・・まだ、まだぁ―――!

市:もう一手・・・ご教授願います!

 

リ:しっかし・・・それにしても、いつ見ても凄ぇよな―――

  だってさ、サヤさんの、身体の心中線から・・・完全に対極に位置してる、市子と蓮也を、同時に相手に出来てるもんな〜。

 

サ:だぁ〜から、人間離れしてるってかい♪

  ま・・・こっちも、なまら長生きしてるわけじゃないしねぇ〜♪

 

リ:(うわ・・・嬉しそ)

  ・・・でも―――さすがに、こうは出来そうもないよな。

 

サ:なるさ。

  なんたって、不器用(ぶ き っ ち ょ)な私でさえ、ここまで出来るようになったんだからさ。

  それに、あんた達は、筋もいいしねえ〜あと、数百回くらい、死ぬ思いをすれば・・・私の域まで到達する―――かもなw

 

 

 

サヤの両極にあった市子に蓮也を、同時に相手にで来た理由―――

それこそは、まさしく「達人レベル」に出来る業であり、またそうした事も、日々の鍛錬を惜しまなかった者には、自然と身に着くモノである事を説いたのです。

 

ともあれ、褒められた事で、気前をよくしたサヤは―――

 

 

 

サ:いょうし―――今回お姉さん、すんごく気分いいから、特別講義開いちゃおう♪

  ()ず、蓮也―――あんたは「清流」になり切れていない。

  最初に、この技を授ける時、私の云った事を覚えているかい。

蓮:無論―――「自身を、(しず)やかなる水の流れに見立て、相手の流れに決して逆らわぬ事・・」に、ござる。

 

サ:その通り・・・そして市子、あんたの「鏡」には、(むら)が多い―――判っているね。

市:はい・・・「鏡の様な水面は、一度さざめき立ってしまうと、そこから破綻を招き易い・・・」に、ございます。

 

サ:判っているなら、どうして実践できない!

  今、相手をしてるのが私だからいいようなものの、世間には、あんた等程度の腕前は、ゴマンと埋もれているんだぜ!

  それに、技は「一撃必殺」でないといけない・・・「見切られて」「(かわ)せられれば」今度はあんた達が窮地に立たされるんだ、

  判ってんのかい―――そこんところ!!

 

 

 

どうして・・・同じ技なのに、後手のサヤの技だけが、自分達に作用するのか―――

そこには、()だ自分達が、未熟なのだと云う事を思い知らされたりするのです。

 

それに、技を伝授された時、各々(それぞれ)の「技のノウハウ」を教えられていたのでしたが、

こうした「稽古」により、何が、現在の自分達に足りていなかったのかを、改めて知る、良い機会でもあったのです。

 

 

そして、今回の仕上げと共に、「また」・・・

 

 

 

サ:フ―――・・・本当に、今回は大盤振る舞いだ・・・。

  これから、あんた達に授けた技の、更に発展した上位の技を見せてやるよ。

  二人して、心してかかってきな!

 

蓮:いざ―――参る! ――=清流剣=――

市:参ります―――! ――=明鏡止水=――

 

――=流雲清流剣=――

サ:―――・・・

――=鏡花水月=――

 

 

 

「風に流れる雲の様に、自在にて掴みどころなく、また、(しず)やかなる水の流れの如く、制する剣」―――

「水面に映ゆる月の様に、己の実体を容易に掴ませず、錯覚を利用して、制する剣」―――

互いに違わせる剣伎なれど、この二つの技には、ある一つの共通項がありました。

 

それは・・・

最初に、各々(それぞれ)が伝授された技とは、「対照的」に、今回の技は―――・・・

 

 

 

蓮:ぬぅおおっ?! こっ・・・これは―――!

市:(た・・・多対一の・・・)はうぁぁっ!

 

 

 

主に、一人で大勢を相手としなければならない状況に陥った時、その真価を発揮する技である事を、

技を授けてくれている者からの、幾度もの斬劇を受けて、理解していく者達・・・

 

「達人」とは、あらゆる状況―――千変万化し、不利な状況に陥ろうとも、柔軟に対処し、そこから「生」を拾える者である事・・・

そして、この先、こうした状況に、自分達が陥るであろうことを考慮され、技の伝授をされたのだと、市子と蓮也は理解したのでした。

 

 

こうして、須らく技の伝授を終わらせた―――・・・

 

 

 

サ:さて・・・これでもう充分だろ。

  そろそろ行ってやんな、あの元気な忍者っ娘もいることだしさ。

 

リ:え? しのが? ・・・て、ことは、やっぱり―――

市:あなたには、何か考えがあって・・・

 

サ:はっ・・・いくら敵さんの内情知りたくっても、外部からの侵入の監視が、ああも厳しくっちゃあねぇ〜w

  だから、あの娘を捕えた事にすりゃ、そう云う事を専門にしてる者にとっちゃ、あとあと簡単だろ〜?

 

蓮:ふぅむ・・・それに、その時の手際、よくよく思い返してみれば・・・

 

サ:フフン―――♪ 「出血」「流血」の演出は、私にしてみれば「朝飯前」だからねえ〜w

  騙される奴が単純なのさww

 

リ:けど・・・そうは云うけどさぁ〜〜闘り合っている時に、さすがにそこまでは気が・・・

  ―――つて、ああ〜〜〜っ!!

 

サ:・・・なに、どうしたの・・・急に奇声あげたりして・・・びっくりするじゃない。

 

リ:「私」!「私」! 私の番わ??!

 

サ:・・・あっ―――

  でも、まぁいいじゃん、あんたの場合、この二人の様に、同じと云うわけには〜・・・

 

リ:あ〜っ、何よその顔―――「完全に忘れてました」〜?

  ちょと、考えられないんですけど―――

 

 

 

市子と蓮也に、各々(それぞれ)の上位技―――「極意」を、伝授し終えたサヤは、

リリア達も、その身の上を心配している、仲間の一人・・・「しの」の、現況を伝え、

また、先行をしている秋定(ときさだ)達の力になってやるよう、説いたのですが・・・

 

それはそれで良かったのですが、自分の番を後回しにされ、今まさに「スルー」されようとしていたリリアは、

その事を思い出し、サヤに少しばかりの文句を云い立てたのです。

 

しかし、どうやらサヤは、今回リリアに関しては、何もしてやれなかった―――

いや・・・正確には、してやる「必要」を感じなかったのです。

 

それと云うのも、さある上級幹部経由で、リリアが、或る特性を持つ剣を、創り出せる事を知っていたから。

 

総てを・・「有」であろうが、「無」であろうが、「()」に帰する性質を持つ剣―――「()(じゅん)」・・・

それが(かす)りでもすれば、喩え「不死者(ヴァンパイア)」であるサヤ自身も、無事では済まないだろう・・・

 

その事を、云い含めさせられていたから・・・

 

しかし幸いなのは、()だリリアが、意識的にその剣を発現できていないでいる点にあるのでした。

(そうした事は、前段階である「晄楯」の発現も、儘になっていない処からも判るのですが―――・・・

それは同時に、「流雲清流剣」「鏡花水月」にも通じている事であると伝えると、まるで「闇雲」に紛れるように、「子爵」はその場から消えたのです。)

 

 

処一変して―――・・・監獄惑星である「オンドゥ」では、「ある人物」の業務引き継ぎが、行われている処でした・・・

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと