地球で、リリア達が「道鏡」の陰謀を挫く為に奔走をしていた―――と、同じ頃・・・
ここ、監獄惑星「オンドゥ」でも、ある「引き継ぎ」が行われているのでした。
マ:それでは―――私が留守の間、宜しくお願いしますね・・・先輩。
バ:ああ、任せて貰おう。
腕は衰えて来ているとはいえ、まだまだ、ここにいる連中には負けんよ。
この度、オンドゥの長であるマリアと、その任務を交代したのは、
「UP本庁刑事部部長」―――バルディア=ヤーデ=ロスチャイルド・・・なのでした。
しかもこの人物は、UP時代のマリアの先輩であり、数々の実績も挙げて来ている「キャリア組」でもあったのです。
それにしても・・・そんな人物が、どうして「監獄惑星の長」の、「引き継ぎ」など・・・?
やはり、バルディアも、何かしらの失態をやらかして―――と、思いたくもなるのですが・・・
それはどうやら、違う様子―――
だとするならば・・・?
ク:―――やれやれ、あなたほどの方が、お出ましとは・・・
バ:クラウドマンか・・・それも、仕方のない事だろう。
「サラスヴァティ」からの一報がなければ、この私とて、こうも迅速に対処できなかった・・・
ク:・・・「シュトゥエルニダルフ」―――まさか奴が、「あそこ」に逃れていたとは・・・
バ:「辺境」―――だそうだからな、「ラクシュミ」の「月詠」がなければ、見逃すところだった・・・。
ク:それで・・・宜しかったのですか?
本当は、あなたが・・・行きたかったのでは―――「シャクティ」・・・
バ:「私」は―――現場に出ていた、あの頃から比べると、遙かに弱体化している・・・
だが―――「マリア」はそうではない・・・曲がりなりにも、あの「公爵」に、一撃を入れるなど・・・
ク:―――では、私はこれからのプランについて、練らなければなりませんので・・・
バ:フン―――狸め・・・
マリアが、これから赴く目的の地へと発つ為、バルディアと交代をした後、
マリアを見送った宇宙港のロビーで、バルディアとクラウドマンが会話をしていました。
しかもその内容とは・・・
どうやら今回、「ディーヴァ」の実働部隊である、「ドゥルガー」「パールヴァティ」が動かなければならない程の、緊急性を要していた・・・
その為か、「刑事部部長職」に就いているバルディアも、有給休暇を活用するなどして、柔軟かつ特殊な手段を講じなければならなかったようなのです。
それに、「緊急性」と云う事項も、どうやら―――・・・
彼女達、「ディーヴァ」が探し続けてきた大物―――広域指定犯罪組織「ウロボロス」幹部、「ベラスケス=トロン=シュトゥエルニダルフ」・・・
この人物が、一時的に難を逃れる為、太陽系第三惑星「地球」へと、逃れて来ているとの情報を、
「ウロボロス」にハッキングを掛けて、情報を盗ってきた「サラスヴァティ」から、為されてきた・・・
それと既に、別件で「その場所」にいる「者」から、「自分の感応の網に掛かっている」―――と、し、
オンドゥに駐在している、「ドゥルガー」と「パールヴァティ」に、『集結せよ』の命令を発した・・・
これが、それまでの一連の事態の流れだったのです。
しかし・・・「ラクシュミ」が、既に「シュトゥエルニダルフ」の所在を突き止めていたとは・・・
しかもミリヤは、現在、「常磐」と云う、地球の特定の場所にいるのですが・・・
―――だとするならば・・・?
そう、既に今回の事件の展開は、裏で大きく動きつつあったのです。
それはそうと―――「テュポーン」が待ちうけていると云う、「伏見城・最上層」では・・・
既に、当事者の一人と、「ある者」が、火花を散らし合っていたのでした。
その現場を、最下層から登って来た者が・・・
秋:(!)あ・・・ありゃあ―――しの・・・? しのじゃねえか!
な・・・なんでぇ、脅かしゃがる・・・お〜い!しのぉ! 今行くからな!!
し:(!?)・・・蝉ちゃん?
あっ―――しまっ・・・
既に殺害され、この世からいなくなっている―――モノと思えば、
現在のこの城の主を相手に、縦横無尽に渡り合っていたのです。
しかし・・・秋定にとっては、そんな状況はどうでも良かった―――
だから、嬉しさのあまり、近寄ろうとした処・・・しのの注意が、「その事」に、注がれてしまった―――
つまり、隙が出来てしまったのです。
そこを見逃さなかったテュポーンは、しのの頭上に、自分の得物を振り下ろそうとしたのですが・・・
し:(・・・って―――)あれ? た、助かってる??
それに―――メイベルさん??
隙を作ってしまった所為で、自分の生命が喪われてしまう事を覚悟したしのは、防御の構えをしたまま、目を瞑ってしまいました。
けれど、次の瞬間・・・自分の生を感じたしのが、再び目を見開いてみると―――
今しがた、自分に作用するモノと思われていた、相手からの攻撃の一手が、
以前見知った時は、常に主の側にいて、甲斐甲斐しくお世話をする女性・・・
そんなには目立った処はなく、物静かな印象さえ与えてきた、「あの女性」・・・
その彼女が、以前の印象を払拭させるような雰囲気で・・・
しかも、彼女自身の獲物―――まるで、「死神の鎌」を彷彿とさせるような大鎌で、防いでくれていたのです。
それにしても・・・いや―――・・・
メ:フ―――・・・腕は衰えていない様で、安心をしたわ・・・
テ:・・・「ウイッチ」―――
メ:早速だけれど、あなたには死んでもらうわ・・・
悪く―――思わないでね・・・
テ:・・・甘く見られたモノだな。
メ:御託は―――いい・・・
ここ最近は、雑魚しか相手にさせて貰っていないから・・・久しぶりに、本当の「闘争」を味わいたいの・・・
そして―――今「ここ」に・・・「お前」がいる・・・
「互い」が―――「互い」を認識しているかの如く、さも当然であるかのように、両者の会話は発生しました。
しかし・・・「彼」と「彼女」は、互いを知っていて当然だったのです。
それと云うのも、彼らは、宇宙を席巻していた、名のある「暗殺者」なのですから・・・
つまりは「同業者」―――故に、互いが互いを見比べられ、比較評価の対象にもされた事があった・・・
それに、彼ら自身も、そうした職業柄上、「味方」や「敵」だった事も、儘にしてあったようで―――・・・
しかも、ここ最近と云えば、互いが互いを、共に刺激し合っていた・・・少し危険な関係でもあったのです。
そして―――いまここに・・・因縁は、終着す・・・
メ:―――喰らえ! ――=ヴェイパーズ・クライム=――
テ:・・・そう来たか――― ――=デルタ・スクラッチ=――
互いに「技」を極めた者同士―――
凄まじいまでの応酬がなされましたが、所詮それでは、意味を為さない事を、両者は知っていました。
しかし―――そうしている内にも、「第三層」に足止めにされていた、リリア・市子・蓮也や、「城外組」のたまも・ミリヤが合流し、
苦戦を強いられているであろう、秋定・メイベルに加勢をするべく、「最上層」に集って来たのです。
リ:あっ―――しの! 良かった〜無事だったか・・・
し:リリアさんに、たまちゃん―――
た:やれやれ、それにしても、あの「小夜」とか申す者、とんだ喰わせ者であったな。
互いに互いの無事を確認し、安堵する者達・・・
そのお陰で、張り詰めていた糸が急に緩み、涙ぐむ者がいたり―――
未だ闘争の渦中にて、いつこちら側に波及してくるものか・・・と、警戒を怠らない者がいたり―――
早く、その「闘争」を代われ・・・と、血気に逸る者もいたり―――
まさに、種差万別なのですが、当事者は―――と、云うと・・・
テ:・・・むう、多勢に無勢となって来たようだな、ここは一先ず、勝負を預けることとしよう・・・。
メ:おのれ―――逃げるか!卑怯者め!
テ:フ・・・その様な安い挑発に、誰が乗るものか―――
それに、私のクライアントは、「彼の者」を永らえさせるのが、目的ではないのでな・・・。
ミ:・・・ならば、あの「噂」は、本当だったようね。
テ:(・・・。)ほぉう―――「噂」・・・
ミ:尻尾を巻いて逃げ帰った後、あなたの「ボス」に、良く伝えておく事ね・・・
「もう、お前の好きにはさせない」―――と・・・
テ:・・・良く、伝えておこう―――ミリヤ=アゲット=ロックフェラー。
どうやら、「テュポーン」の主目的とは、ミリヤやメイベル・・・果ては、リリア達の邪魔をする事ではなかったようで、
しかも、「道鏡」についても、彼を擁護する為に、協力をしている様子も見せなかったのです。
では・・・なぜ・・・「テュポーン」は、辺境宙域の、特別保護区域に在留していたのか―――
果たして、彼の「ボス」とは、一体何者なのか―――
第百五十一話;進行する「闇」
ともあれ、今回の伏見城での騒動は、一区切りがついた事もあり、色々と整理していた処・・・
リ:ん〜なろ・・・あいつめ、巧い事を云って、逃げやがったな。
た:やれやれ、実力に見合わん事を、云う奴もおった者じゃな。
それよりも、しのが無事で、なによりじゃった。
秋:そ〜れよりよぅ・・・小夜のヤロウ・・・あいつ、一体なんだったんだ?
し:ま・・・まあ〜〜それより・・・調べてて、色んな事が判って来たよ。
メ:申し訳ありません・・・ミリヤ様―――仕留めそこねました。
ミ:まあいいわ・・・事態は、それ処ではなくなってきたのだから―――
皆さん―――少し、私の話しを聞いて頂けないかしら・・・
一つの事態が収まり付いても、別の処で事態は大きく動いていた事を、
この城で、色々と嗅ぎまわっていた、忍の手足れと―――
自らの持つ、優れた感知能力で、この地・・・「洛中」にある、特定の区域に潜む、強力な波動を発する者を突き止めた、足の不自由な美少女―――
しかも・・・その者の名を聞くに及び、再び、たまもの眉が曇ってきたのです。
そう・・・その者の名こそ―――
ミ:この近辺に、「オオエヤマ」なる場所があるのを、どなたかご存じないですか。
秋:なに―――「大江山」・・・だと?
おい―――たまも・・・
ミ:その場所に、「シュトゥエルニダルフ」なる人物が―――
た:(!!)「朱天」・・・やはりそうなのか―――
「玉藻前」にしろ、「崇徳」にしろ、「三大悪妖怪」の一人である、「朱天童子」がこの時期に復活せなんだのが不思議じゃったが・・・
し:それだけじゃない―――ボクの方も、色々と調べていて、「そいつ」が、今回の「道鏡」と絡んでいるのが、判って来たんだよ。
「大江山の朱天童子」―――「玉藻前」「崇徳上皇」と並ぶ、常磐の「三大悪妖怪」の一人・・・
そんな強大な敵が、やはり今回の事態を、裏で操っていた・・・
凶悪が黄泉返る背景は、整えられつつあったのです。
=続く=