危急を脱し、無事を喜び合う仲間達―――
またそれと共に、現世に留めておく触媒を失った為、崩れゆく伏見の城・・・
敵の勢である「道鏡」の野望も早、打ち砕かれたか―――に、見えたのですが、
存外に、彼の者の本来の目的は、別にあったのだと思わざるを得ませんでした。
ともあれ、リリア達一行は、その「道鏡」が本拠に構えていると云う、「聚楽第」まで進むのでした。
リ:随分と又、立派な建物だったんだなぁ・・・
蓮:いかにも、この建物も、前の伏見城と同様、太閤殿が造られた別邸にございますれば。
市:ですが・・・ここも、最早、人の住まう処ではございませぬ。
秋:ち・・・この澱み方、尋常じゃあねえな・・・。
平:まさに・・・邪なる者の巣窟に、似つかわしゅうござるな。
し:―――たまちゃん?
前回までは、別件で穢戸にいた「鬼平」も、敵の首領を追い詰めたことで、洛中にいる秋定達と合流し、
現在では、「道鏡」がその本拠として構える「聚楽第」の前に佇むのですが・・・
かつては、栄華を誇った豊家の別邸だったはずが、当家の凋落と共に荒廃が進み、
今では、野犬やならず者が、その塒としている・・・と、云う表現が、丁度似合いの風合いを醸していたのです。
そこで各々―――思いの丈を言葉にしてみるのですが、ただ一人・・・たまもだけは、別の事に思案に暮れていたのです。
た:(ふぅ〜む・・・それにしても気になる―――此度の「道鏡」が、現世に復活したと云う噂を、耳にした時も不思議に思うておったが・・・
よもや、手引きをした者が、あの「朱天」じゃったとはな・・・。
それ以上に問題とせねばならんのは、その「朱天」を、何奴が復活させたのか・・・或いは―――)
たまもが、いま一つ得心行かなかった事は、今回の標的である「道鏡」の復活は、自分と同じ「三大悪妖怪」の一人である「朱天童子」の仕業である・・・と、しても、
ならば、その「朱天童子」の封を、誰が解いたのか・・・その事にあったのです。
妖物や神々は、「八百万」と云われるほどに、沢山いたモノですが―――
「三大悪妖怪」のように、代表されて名指しを受けるような存在は、そうざらにはいなかった・・・
だからその封印も、最上級のモノが使用されていたのです。
斯く云う、たまも自身も、自分の妖力が最小限となった時、「殺生石」に封じられ、
それから1000年間は優に、満足に外界へと出て来られなかったのですから。
だから、その事について、思案に明け暮れていると―――・・・
リ:ちょいや―――!
た:ぬほっ?! な・・・なにをするか!馬鹿モン!!
リ:へっ、何、眉間に皺寄せてんだよ。
これからブッ潰す奴を前に、悩むのもあったもんじゃねえぜ!
た:〜〜む―――・・・何もお主に云われんでも判っとるわい!
このぉ〜これより縮んてくれたらどうしてくれるつもりじゃ!
し:(プw)た〜〜たまちゃん・・・結構、巧い事云うよねw
市:ええ・・・でもお陰で、少しは緊張が解れました。
た:は? いや・・・その・・・そう云うつもりで、云ったのではないのだがな・・・。
いきなり、背後ろから、強烈な手刀を頭頂部に喰らい、悶絶寸前のたまも・・・
すると、振り返ってみると、いつも自分にちょっかいばかり掛けてくる、リリアの姿が。
その事に、たまもも、戒める意味で注意をするのですが、それが逆の効果となってしまい、
暫しの和みの雰囲気が、その現場に漂ってきたのでした。
(しかも、たまもの狙いかどうかはともかく、全員の緊張が解れたようですが―――・・・)
その事を、慌てて弁明するたまもではありましたが、ここは既に敵地―――思案に暮れるのは後回し・・・と、云う事で、
今は取り敢えず、「道鏡」の下へと急がなければならないのです。
それはそうと―――ミリヤとメイベルは・・・と、云うと。
リ:そう云えばあの二人、「後の事は任せます。」・・・って、いなくなっちまったけど―――
た:ま、あちらはあちらの事情でもあるのじゃろう・・・。
そう―――彼女達二人は、今回の自分達の目的が達成された事で、すぐに別れてしまった・・・
―――と、云うのではなく、ミリヤの優れた感応で捉えていた、今回の黒幕と云うべき存在について、
これからは、自分達の行動原理に基づいて行動をすると主張し、リリア達よりも先に「大江山」に向かったのです。
それにしてもどうして・・・ミリヤ達は、リリア達と歩調を合わせなかったのか―――
それは至って簡単、前回のお話しの冒頭で、何が行われていたか・・・
そう―――ミリヤ達の仲間、「ドゥルガー」と「パールヴァティ」が、標的確保のため、地球へと向かっている事を、
同じく、仲間である「サラスヴァティ」からの定期連絡により、既に知っていたのです。
つまり・・・今回の事態は、「同時進行」をしていた―――
「洛中」にて、猛威を振るっている「道鏡」を、秋定を中心とする「妖改方」と、リリア達が協力して相手をし―――
「大江山」に潜む、「朱天童子」こと―――ベラスケス=トロン=シュトゥエルニダルフを、ミリヤを中心とする「ディーヴァ」の面々が、身柄を確保するために動いていた・・・
しかし―――現実は、そう甘くはなかったのです。
それと云うのも、今まで謎なままだった「道鏡」の正体が、現物を見るに至り、はっきりとしたのですから・・・
そう―――「彼」は、何一つ知らない存在ではなかった・・・
その事は、「道鏡」の正体を見て、驚きの声を揚げた、リリアの言葉の内にあったのです。
第百五十二話;遁れえぬ因縁
リ:そ―――・・・そんな・・・な、なぜお前が・・・どうして常磐にいる!
それも、どうして・・・「道鏡」なんて云う、全く別の名を名乗っている・・・答えろ―――ゼンウ!!
そう・・・リリアは、今回の騒動の引き金ともなっている、「道鏡」の「顔」というモノを、見知っていました。
今でさえ、エクステナー大陸は、旧オデッセイア国と旧サライ国の合併により、新たに「テラ国」という一つの国に生まれ変わったのでしたが、
実は、そうなる数年前まで、その両国家共に、脅威を感じていた「プロメテウス」と云う、強国が存在していたのです。
そして、ゼンウ=メフメト=ゲルトフォルグこそは、プロメテウスの国主だった―――
けれど、その国の滅亡以後は、依然杳として行方は知れないままだったのです。
それが・・・なぜか今、常磐の世を、闇から支配しようとしている・・・妖物と、成り果ててしまっていたのです。
それに、ゼンウの事は、リリアのみならず、蓮也も市子も知っていたのです。
つまり・・・彼女達は、今回の件に関して云えば、「全く関係がない」・・・と、云えなくなってしまった―――
しかも―――・・・
道:くっくっくっ・・・久しいぞ〜ぉ? 随分と又、会っていなかったような気がする・・・
リ:なぜだ―――なぜ・・・お前が、市子や蓮也の故郷にいる!
道:ふっふっふっ・・・「なぜだ」? 教えてやろうでわないか・・・
オレ様が、人間ではなくなった経緯を!!
「人間」・・・そう、厳密に云うと、ゼンウは最早、「人間」ではなくなっていました・・・。
それに、その経緯を聞いて行く内、どことなく得心が行った―――と、云う声が・・・
道:オレ様はなぁ―――お前達に、討ち平らげられ、国を失ったた後・・・行く宛てもなく彷徨い続けたのだ。
そして、オレ様が行き倒れる間際、「エフェメロプテラ」の「ゲルツェン」と名乗る奴が、オレ様の目の前に現れてな・・・
サ:・・・へえ〜―――奴が・・・ねぇ。
秋:ぅおわっ?! さ―――小夜?! お前ぇ・・・一体どこから・・・
サ:よ♪w
それよりさぁ―――もそっとばかし、詳しく教えて貰えないもんかねぇ〜。
ちょいと、確認したい事があってさ・・・。
道:ふん・・・モノ好きが―――だが、まあいいだろう。
そこでオレ様は、ゲルツェンに拾われ、奴の組織の一員になったんだが、
今回の一件で、ゲルツェンと昵懇の間柄だった、「シュトゥエルニダルフ」とか抜かす奴を助け出す為、
そいつが拘束されている「オオエヤマ」を探し出し、奴を出す為の間、このオレ様が「囮役」に抜擢されたわけよ。
それに、この「姿」になったのも、「シュトゥエルニダルフ」の組織である、「ウロボロス」の奴らからの協力もあってな・・・。
だがまあ・・・容姿如何より、遙かにパワー・アップに改造して貰ったからなぁ、贅沢は云わねえ事にしたんだよ。
そしたらよぉ・・・ククク―――奇遇だよなぁ・・・リリア・・・
オレ様の方も、もう二度と貴様の面を拝めないモノと思っていたが、ここにこうして会えるなんてよぅ!
ああ!たまらねえ!! 早く貴様を、殺したくて仕方がねえぇ!!
今回の騒動の渦中にある人物「道鏡」―――ことゼンウは、現在の自分の身の上の事について語り出しました。
元々は、「その気」になりさえすれば、旧オデッセイア国も、旧サライ国も、武力の蹂躙において、征服できた・・・
けれど、中々そうしなかったツケを、払わされてしまった―――・・・
まさか・・・一息で併呑出来る弱小の勢力が、自分達よりも強力な国家と連携を取り、自分達の国家を滅ぼしてしまうとは・・・
一夜にしてゼンウは、亡国の王となり、そしてまた、どこに行く宛てもなく彷徨い続けました。
そして―――気が付けば・・・
いつしかゼンウは、見知らぬ場所にいた・・・
なにもかもが、目新しい場所―――
いや、それよりも・・・ここは、自分達の国家があった、エクステナー大陸なのか―――?
いえ、実は・・・
彼は・・・
この時、正しくは、地球上にすらいなかったのです。
彼は彷徨いました―――行く宛てもなく―――・・・
そこを、永き間交流を深めてきた・・・云わば、「友」と等しき存在である「シュトゥエルニダルフ」の所在を突き止めた、ゲルツェンに見初められ―――
そう・・・ゼンウは、意識も朦朧としている最中、ゲルツェンに誘拐われてしまった・・・
それに、ゲルツェンにしてみれば、「地球人」の協力者が、どうしても欲しかった・・・
そこで、ゼンウに白羽の矢を立て、憔悴している彼を快復させる一方で、ゼンウの過去の記憶を覗き、
「リリア某」と、彼女に纏わる仲間達に対し、激しい憎悪の念を抱いている事を知った・・・
そこでゲルツェンは、このゼンウの感情を利用しない手はないと思い、加えて、「友」救出の計画を打ち明け、
自分達が「友」を探し出し、救出するまでの間、騒ぎを起こして周囲りの眼を逸らして欲しい・・・と、依頼したのです。
それに、ゼンウが騒ぎを起こしてくれさえすれば、いずれ「リリア某」達が、ゼンウの事を嗅ぎつけてくるだろう・・・との、打算もありました。
そして―――ゲルツェンの思惑通り・・・こうして、またもや因縁の対決は、避けられない処となったのです。
=続く=