市:「二つの大きな内乱」の内容は、現実として参加できませんでしたから、詳しい事までは判りません。
ですが・・・歴史書によれば、過去に亘って二度、この国を二分した「内乱」があった事は、明確な事実なのです。
第百六十四話;応仁の乱
遡る事、現在より2500年も前、常磐を二分してしまう「最初の大乱」がありました。
一方の軍勢は、東の大名を呼集して団結された「東軍」―――
一方の軍勢は、同じように、西の大名を呼集して結成された、「西軍」―――
時に、「東軍」の総大将は、山名家の当主が成り―――
そして、「西軍」の総大将には―――・・・
リ:え・・・「細川」―――って・・・
市:そうです、今はどうであれ、わたしの「家」・・・。
まあ、尤も、私は「分家」の出に過ぎないのですが・・・
リ:そうだったのですか―――・・・
でも、市子さんの身辺は判りましたが、それがどうして蓮也さんも・・・
市:実は、あの方の「家」である「千極家」は、山名家の家臣団の一つでもあったのです。
遠くから見ても、時折、市子と蓮也の仕草は、仲睦まじい様にも見えたモノでした・・・。
それがどうして―――口を揃えて、それ以上の関係にはなれない・・・と、云えるのか。
リリアには、不思議でなりませんでしたが、今こうして、その理由がはっきりとしたのでした。
けれど・・・とは云え、その戦乱が起きたのは、遥か昔の話し―――
それが、なぜ現在までに、影響があると云うのか・・・
思えば―――それこそが、この一件をややこしくしている原因でもあったのです。
それというのも―――・・・
市:先ず―――「応仁」の経緯については、幼い帝を、どちらの陣営が擁護するか・・・その為の無益な争いが、各地に勃発したのです。
これにより、この国の「朝廷」の権威は堕ち、やがてその影響は、この戦を取り仕切っていた、総大将家にも波及してきたのです。
「東」の総大将である、山名持豊は、戦乱が始まってから一月も経たぬうちに、原因不明の病によって没し、
代わりに、台頭してきたのが、当時の「千極家」の惣領だったと聞いています。
一説には―――当時の千極の惣領が、主家に当たる山名様を・・・と、云う噂も囁かれていましたが、まあ、この際は良しとしましょう。
また、「西」を纏めた「細川」は、全く利のない戦に、総力をつぎ込み、やがては没落・・・凋落の一途を辿ってしまったのです。
リ:え・・・でも、それでは―――
市:その通り―――「応仁」の「決着」に関してはついてはおらず。
東西両陣営の総大将家の力が、著しく衰退した事により、各地にある中小の大名が力を付け、やがては群雄の割拠―――「戦国」の世に突入してしまうのです。
そう・・・結論としては、「応仁の乱」は、未だに継続しており、勝利者莫き状況が、現在まで続いていると云うのです。
それに、戦乱を止めるべき朝廷も、最早その事が出来なくなるまでに、権力が無くなってきており、
そのままなし崩し的に、次の「大きな内乱」―――「関ヶ原騒乱」が勃発してしまい、
なんと、蓋を開けてみれば、「応仁の乱」のあった頃には、地方の「地侍」程度でしかなかった「徳川」が、天下を握ってしまった・・・と、云う、少しばかり皮肉な結果になってしまっていたのです。
そう・・・つまりは、現在の両家の代表と云っても差し支えのない、市子に蓮也でしたが、
過去に、当家が引き起こした惣領達の判断を、あまり好くは思ってはおらず、
けれども、自分達の周囲りを見てみれば・・・とのことだったのです。
しかし、やはりそれではいけないと思い、リリアは、次にたまもの下を訪れたのです。
そして、そこで―――・・・
た:なに? 蓮也殿と市子殿の仲を、取り持って貰いたい・・・とな?
リ:はい―――あのお二人の、お家の事情と云うのは、知る事が出来ました・・・
けれど、あのお二人を、このままの関係にしておいて、いいものなのでしょうか。
た:そうか・・・つまり、総ての事を知った上での、判断なのじゃな。
それで―――お主はどうするのじゃ・・・
リ:私―――ですか・・・
私・・・は・・・
た:あの二人、仲睦まじき事は、わしやお主をして、知るべくもない・・・
況してや、お主は蓮也殿の事を好いておるのじゃろう。
無理をするでない・・・お主には、何も出来はせんよ。
判っている―――自分の気持ち・・・
その気持ちを隠してまで、市子と蓮也の仲を取り持とうとしていると云うのは、少し前のリリアでは、考えられる事ではありませんでした。
が―――・・・喩えそうであっても、リリアはその為に奔走し、そこの処を、たまもは一定の評価をしていたのです。
それに、こう云った前例は、ないわけではなかった―――とは云え、結果としては、悲話に纏められるモノでしたが、
この一件だけは、どうやら前例には収まりそうにもない事を、或いは、たまもは直感していたのかもしれません。
しかし―――たまもからの協力が、得られないと判ったリリアが、次に頼った人物が・・・
ユ:はい―――どなた・・・あら、リリアさんではありませんか。
リ:あの・・・折り入って、聞いて頂きたい事があるのですが・・・
同じ「評議員」ということもあり、ユリアならば、協力してくれるものと思って、彼女の処に相談を持ちかけてみたのですが・・・
ユリアからは、この問題は、当事者同士のモノであり、自分達が間に入っても、事態が好転するモノではない―――と、断られてしまったのです。
(ですが、実は・・・この時のユリアの胸中には、この問題どころではない、大問題を抱えており、とてもリリアからの相談に乗ってやれる気分ではなかったようである。)
こうして―――八方塞の状況に陥ってしまったリリアは、膝を抱えて悩んでしまうのでしたが・・・
すると、そんな時に―――
ポ:おや、どうしたんだい―――そんなところで、考え込んじゃったりして。
リ:あっ・・・あなたは―――
ダメね・・・私って・・・本当は、私ですら、見ていて羨ましいと思えるくらい、仲が良い二人なのに・・・
遠い過去にあったと云う、二人の家の関係で、それ以上は踏み込めない―――って・・・
不便だよね・・・そんな事って・・・。
でも・・・私は―――・・・
正直、その事を知ってしまって、「ほっ」としてしまっている自分がいる・・・
その事が、判ってしまった途端、私は―――・・・
今まで、どこで何をしていたのか―――「謎の少年」であるポールが、一人で悩んでいるリリアの前に現れ、
そこで声を掛けた途端・・・リリアの口からは、今迄にため込んでしまっていた、自分の「想い」と云うモノを、ポールの前で吐いてしまったのです。
こんなにも自分が―――二人がもっと、仲良くなる事を望んでいる・・・
その反面、過去の柵が禍いをして、それ以上の関係にはなれない事が判ると、安堵してしまう自分がいる事を知り、
その狭間で、苦悩・葛藤している・・・その事を。
そんなリリアの悩みを知った、ポールは―――
ポ:やっぱり・・・僕が思っていた通りだね、君は・・・
今の君が悩めるのは、君が本当は、優しい人だからなんだよ。
それに・・・君が、本当にそう願うのであれば、僕が何とかして見せよう。
リ:えっ・・・本当に?嬉し―――
ポ:但し―――条件がある・・・
リリアが抱える悩みを、ポール自身が解決して見せよう・・・と、云ってくれた―――
その事は、本当に嬉しかったのでしたが、その直後、ポールは、「ある条件」と引き換えに、リリアの問題を引き受けると云ってきたのです。
困難な問題の壁に当たってしまった時、親身になって救いの手を差し伸べてくれる・・・
それはそれで、あり難かった事なのですが、「条件」と引き換えにする―――と、云うのは、問題があった為、リリアは躊躇してしまったのです。
ですが・・・この時、ポールが提示して来た「条件」と云うのが―――
ポ:大ぁ〜い丈夫―――そんなに心配しなくても、何も難しい事を云うんじゃないよ。
僕が提案する「条件」と云うのはね・・・
喩えこの先、何があったとしても、今の様な曇った顔はしない事―――
リ:・・・え? そんな事でいいの?
ポ:いいの、いいの―――♪
君には、今の様な、そんな表情じゃなくってさ、以前みたいな・・・お陽サマの様に、明るく朗らかなモノが、お似合いなのさ―――
なにか・・・途方もない事を云ってくるのかもしれない―――
けれど、ポールがリリアに示してきた「条件」とは、存外、容易く感じられたモノでした。
それに、この時に云ってくれた言葉に、リリアの胸の内には安堵が広がり、もう少しで涙ぐみそうにもなるのでした。
しかし―――とは云っても、これからどうやって、ポールはリリアが抱える悩みを、解決していくのでしょうか・・・
その為に、先ずポールがした事とは・・・
今回の件で、自分が「依頼」した事の成り行きを、監視っている、あの人物の下へ・・・
ポ:ちょいと―――お邪魔しちゃうよ・・・
ユ:(!!)あなた―――は・・・!
ポ:フフフ―――どうやら、驚かせちゃったようだね・・・
今までは、どんな問題や障害があろうとも、関わろうとしなかった僕が・・・どうして―――なんだろうね・・・。
「東の評議員」であるのと同時に、「フロンティア」の上級幹部である「ガラティア」の側近でもある、ユリア―――
その彼女の下に、誰に知られるでもなく現れたポールに、ユリアは、彼が何の目的で、自分の前に現れたか・・・瞬時に理解をしました。
そして、「ある問題」に、戦慄きもしました―――
この「謎の彼」が―――「宇宙に君臨する主」が、「自らの意思をして動いた」・・・と、云う事が、何を意味するモノなのか―――
そして、「ある問題」と云うのも、この謎多き人物―――「ポール」の、存在意義のあり方に、起因していたのです。
=続く=