第百六十七話;追儺・鬼やらい
リリアの記憶は戻った―――けれど、状況は相変わらず最悪でした。
今も、友の快復を悦ぶ市子に、背後から迫りくる茨木童子の爪牙・・・
それを目撃したリリアの反応は―――
リ:てんめぇら・・・私の大事な友に、なにしやがる!!
その瞬間―――リリアは、最強の剣を創造し、瞬くの間に市子の傍らまで行くと、すぐ背後まで迫っていた茨木童子を、
一刀の下に両断―――いえ、消滅させてしまったのです。
(「両断」は、屍体が残るが、リリアの剣によって斬られた者は、剣の特性により「无」に帰されたのである。)
これにより、リリアの完全復活は証明されたのです・・・が、寧ろ今は危険だと云えたのです。
それもそのはず、「元」のリリアは、血の気が多く、何より「闘争」を愛した「戦士」―――
しかも今は、興奮状態にあり、「手負いの獣」同然だったのです。
リ:ケッ・・・なんだお前ら、ああなりてぇのか―――
だったら、そいつらじゃなく私にかかってきな!
楽に潰してやんからよ・・・心配しなくたって、いいんだぜぇ〜?w
見覚えのある、仲の良かった者達を、襲おうとしている連中がいる・・・
それを見るなり、瞬時に「敵」「味方」の区別を判断したリリアは、
これまたいつもの口調で―――どちらが悪役なのか、判らない口調で、
それでいて「ぬたり」と不敵に笑い、後に残る前鬼・後鬼達に近付いてきたのです。
これを見ると、流石の鬼達と云えども、恐怖を覚えたモノと見え、大江山の館まで引き上げたのです。
しかし―――取り敢えずは、リリアが無事、元に戻った事を全員が喜び・・・
リ:ち・・・なんでぇ、ちっと脅しただけで、尻尾巻いて逃げるなんてよ。
し:良かったぁ〜でも、本当に良かったよ。
リリアさんが元に戻って。
リ:しの・・・泣くんじゃないよ。
それにしても、心配を掛けたようだな。
市:リリアさん―――
リ:どーしたよ、市子。
そんなシケた顔をすんなって。
蓮:リリア殿・・・
リ:蓮也―――そか、あんたも私の心配をしてくれてたんだな、私ゃ嬉しいよ。
た:リリアよ・・・
リ:たまか・・・判ってるよ。
あんた達が云いたい事、それにミリヤさん、ユリアさんを解放してくれないか。
ミ:(・・・。)ですが、この者の疑いは、未だ晴らされていませんから―――
リ:ふ〜ん・・・それよりもいいのか、今、この山を覆っていたバリアは、消えちまってるんだぜ。
そのリリアの言葉を聞いた途端、少なくとも、ミリヤ・たまもの二人は、ある事を理解しました。
そう・・・「今」の、リリアの状態を―――
彼女は「ただ」、元に戻ったわけではなかったと云う事を。
しかし、それが「どこまで」なのか判らなかった為、二人とも口を噤まざるを得なかったのです。
ですが・・・これから、その「どこまで」かが、判ろうとしていたのです。
とは云え、この一件を落着させる為、大江山にある朱天童子の館を目指した処・・・
すると、その門前で、鬼達に出迎えられるのでした。
しかも・・・皆、何かに怒り狂っていたようなのです。
けれども、こちらにしてみれば―――
リ:・・・へっ、気に入らねえなぁ、そう云う目で見られるのは。
けど、いいぜぇ? かかってこいよ・・・仇敵を取りたいんだろ、取らしてやるよ。
但し・・・担保は、手前ぇら自身になるがな!!
その口調は、明らかに、「何か」・・・或いは、「何があったか」を、知っているかのような一言でした。
しかし、その事により、ある事が判明した人物が、二人いたのです。
そう・・・「超一流のプロ」に、大江山に巣食う鬼を抹殺してくれるよう、依頼をしたユリアと、
「月詠」により、存在を感知できる、ミリヤの二人・・・
ミ:(!)そんな・・・シュトゥエルニダルフの、生体反応が―――感知できない??
た:なんと? では―――・・・
ユ:フフ・・・お陰で、確認を取る事が出来ました。
ミ:(!)まさかあなた・・・それで、態と―――
ユ:しかもあなたは、このような状況下で、嘘を吐く事が出来ない・・・
なぜなら、あなたの部下にも、危険が及ぶ事になりますからね。
ミ:・・・マリア―――すぐにユリアを、電磁拘束!
ユ:では・・・ご機嫌よう―――
ミリヤが、「月詠」によって感知出来ていたのは、「存在」としては感知出来ていても、「生体反応」がない・・・
つまり、意識も、心拍の鼓動も、況してや呼吸もしていない・・・元は、シュトゥエルニダルフ「だった」と云う、肉塊だけ。
その事に、仲間の鬼達は怒り狂い、そしてまた、リリアも「その事」を仄めかせた・・・
「仇敵」―――つまり、仲間の鬼達が、これから指示を仰ごうと、シュトゥエルニダルフの近くまで寄った時、
座台の肘掛の上に頬杖をつき、そのまま亡くなっている―――自分達の頭の事を知ったのです。
けれど、誰が殺ったのかは判らなかった為、取り敢えずは、今まで火花を散らしていたリリア達を、怪しむほかはなかったのですが・・・
それを―――恰も「知っていた」かのような、リリアの科白に・・・
それによって、鬼達の怒りの矛先は、自然とリリア一人のみになったのです。
それと同時に、依頼が完遂した事を知ったユリアは、立ち所にその場から消え去って行きました。
それによって、ユリアが、大人しく「ディーヴァ」達に拘束されたのも、「依頼完遂」の事実を知るためだと、ミリヤは気付いたのですが・・・
時既に遅し―――ミリヤは、自分の手によって、その事実を公表してしまった・・・
しかも、シュトゥエルニダルフを「狙撃」した、「実行犯」には、誰も張りつかせていない・・・
つまり、ユリアは、「実行犯」の逃走を助ける上での、「囮役」も買って出ていたのです。
そう・・・総ての疑惑を、自分に向ける事によって―――
その事については、ミリヤも悔しさを滲ませたモノでしたが、リリアが鬼達を「无」に帰した後、事実を確かめる為に、館の奥へと進んだ処―――
そこではやはり、現実としての事実―――朱天童子の屍を拝むだけとなったのです。
これにより、常磐の騒動も鎮静―――目出度く平安が訪れることとなったのですが、
まだ彼女達には、やらなければならない事が、山積していたのです。
そして、不本意ながらも、今回の標的の逮捕に失敗してしまった、ミリア達「ディーヴァ」は、この事実の報告を纏める為、自分達の惑星へと戻り、
彼女達を見送ったリリアは、少し前に問題になっていた、「あの事」に関して、着手しようとしていたのです。
リ:なんだかドタバタしたけども―――取り敢えずは、落ち着くところに落ち着いたようだな。
た:ほんとにの・・・それにしても、心配ばかりかけおって―――
リ:へヘッ、悪い―――悪い―――
それはそうとよ、お前に一つ、頼みがあるんだが・・・
その「あの事」とは―――あの二人のこと・・・
まだ更に云うには、未だ終結宣言がされていない、「最初の内乱」についてなのでした。
しかしその事は・・・記憶のあった時分には、触れた事のなかったことであり、記憶を失った時に、偶然知ってしまった事実・・・
それに、リリアは、その事について奔走した事もあり、けれども、記憶を取り戻した今となっては、知るはずもない事・・・だろうとは、思っていたのですが、
その事について述べてきたリリアに、たまもは思う処となり―――・・・
た:お主・・・よもやとは思うが、ここ数日の事を―――
リ:(・・・。)ああ―――そうさ・・・知っていたし、見ていた・・・
もどかしかったぜ、まるで女の子の様な、自分が・・・な。
た:フ・・・わしとしては、どちらかと云うと、女の子らしいお主の方が、好かったが・・・な。
なにより、わしに対しても、優しかったしぃ〜?
リ:止めてくれよ・・・恥ずかしくなっちまう―――
それより・・・出来るのか、出来ないのか。
た:ふぅ〜む・・・
実はの・・・手立てが「ない」―――わけではない・・・。
だがの〜〜ある意味では、これはお主の件より、難しいやもしれんぞ。
やはりリリアは、ここ数日の事を―――「道鏡」だったゼンウから呪を掛けられ、以前からの記憶を一切失わされてしまった・・・
自分なのに、自分ではなかったような時に、あった出来事の事を明確に覚えてもいたし、また知ってもいました。
だからこそ、記憶を取り戻したあと、それまでに何があったかを知っていた口調にも、合点がいくのです。
そこで、リリアが切りだしてきたのは、紛れもなく「あの事」・・・。
市子と一緒の湯に浸かり、細川と千極の家の確執や―――未だに終わってさえいない、「最初の内乱」の事について、知ることとなった・・・
だからこそ、「行動力」の戻った自分が、その事について解決してやろうと、本格的に動くことにしたのです。
=続く=