その日は―――各大陸の代表者である「評議員」が、各大陸で提起された議題を持ち寄り、
この地球の未来を、どう云った方向性に決めて行くか・・・その為の会議―――
第百七十四話;評議会
が、開かれていました。
これまでの通例では、「評議長」を務めるジョカリーヌが、各大陸の評議員達からの意見を聞き、纏める・・・と、云った象でした。
それに、それまでは、評議員も「東」と「西」しかおらず、厳密な意味での「地球としての意見」ではなく、云わば足りない部分を補ってきた処がありましたが、
ここに来てようやく、「北」と「南」の評議員が決まり、今回は、そうした意味では、本当の意味での「地球としての意見」が出始める、良い機会でもあったのです。
そうした中で、南の評議員であるリリアは、中央や東と西に比べ、未だ発達していない技術や制度を導入してくれるよう要請し、
そう云った意味では遅れている「北」もまた、南に倣う手続きがなされたモノでした。
それに、その事は、ジョカリーヌ達に措いても急務であり、要請自体は受理されたのですが・・・
同時に、東の評議員であるユリアから提起された議題は、早くも「宙外からのお客」に関する事項でもあったのです。
ユ:リリアさんからの要請も、大切ではあるのですが・・・わたくしが一つ問題としているのは、正当な手続きによって地球に来訪して来ない者達―――に、関してなのですが、
ジョカリーヌ、あなたはこの問題、どのようにお感じなのですか。
ジ:うん・・・以前の、「グワゴゼウス」や「シュトゥエルニダルフ」の件に関しては、まあ・・・百歩譲って「善し」とはしよう―――
だが、整備されていない「北」や「南」ばかりではなく、整えられているはずの「西」に関しても、そうした騒ぎがあったとの報告が上がっているけど・・・
それは間違いないね―――ルリ・・・。
ル:残念ながら・・・私のマグレヴでは、そうした被害により、三か所の集落が壊滅に追い込まれたそうです。
リ:三か所も??
で―――そいつらは・・・
ル:セシルが成敗をしてくれましたが・・・
あの、ジョカリーヌ様―――私のプログラムに、どこか欠損があったのでしょうか?!
ジ:(・・・。)いや、そうした問題は、今の処は見られない。
現に、今も通常に走査している。
ただ―――犯行を重ねる者と、それを取り締まる側は、云わば日進月歩・・・ルリからの定期的なプログラム更新の配信よりも、
彼らの技術の方が優っていた・・・そう見るべきだろう。
イ:では、ジョカリーヌ様は、そうした者を容認すべきだと?!
ジ:そうは云っていない―――が・・・
「開かれた」と云う事は、何もかもが善き方向に―――と、捉われがちになるようではありますが、
そうした反面性の弊害も、ないわけではなかったのです。
それが、地球にやってくる者達が、必ずしも友好的な関係を求めてはいない―――と、云うこと・・・
それに、ジョカリーヌが喩えに挙げて出した二者も、ここ500年の間、地球側が張り巡らせている網の目を掻い潜り、
雌伏・潜伏していた輩の類でもあっただけに、ジョカリーヌも苦慮するしかなかったのです。
ですが、ここ数カ月の間で、そうした設備が整えられている「ランド・マーヴル」に賊が降下し、付近の集落三つを荒らしまわったようなのです。
その賊も、間も無くしてルリの側近であるセシルによって討伐されたのですが・・・問題としていたのはそんな処ではなく、
ルリ自身が構築したプログラム・システムを掻い潜り、悪事を働いていた者が存在した―――と、云う、その一点だったのです。
しかし、過ぎた事を云っていても始まらない・・・だからこそジョカリーヌは、異例とも思える発言をしたのです。
ジ:当面の間は、地球内部の警戒態勢を強化させよう。
しかし、それだけで十分でないのは、周知の事実だ。
そこで私は、外部からの監視並びに警戒は、「UP」に委託する事も、検討視野に入れている。
ユ:「UP」・・・宇宙警察機構―――ですか、大丈夫なのでしょうか。
ジ:・・・正直な事を云ってしまうと、私もそれだけでは十分に足る事だとは思ってはいない・・・。
先程も述べた様に、「当面」―――と、云う、期間での話しだ。
ユ:(・・・。)ではやはり―――「彼女達」に・・・
ジ:そこの処は、一つ頼むとするよ・・・ユリア。
地球上に措いては自分達で・・・しかし、宙外からの監視・警戒を、第三者である「UP」に委託する・・・
実は、地球は、まだそこの処の設備や制度が、充分に整えられておらず・・・
だからこそ―――少しばかりレベルの高い賊達にしてみれば、一時凌ぎに隠れるのに最適な「穴場」でもあったのです。
(けれども、ユリアやジョカリーヌが感じていた様に、どうやらUPも、自分達が手放しで信頼しきれるほど・・・と、云った感じではなく、
明らかに、「何か」に補填させるような動きや発言が、この二人の間だけで取り交わされていたのです。)
それはそうと―――リリア達「評議員」が、議論を白熱させている一方で、こちらの方も・・・
現在、たまもがいる部屋は、本会議が行われている部屋とは別室で、そこにはリリアを補佐するたまも以外にも、各大陸の評議員の補佐役達がいたのです。
しかし―――この内では、「新顔」はたまもだけらしく、それと云うのも、他の補佐員達は、互いの顔を見知っているモノと見え、雑談に華を咲かせていたのです。
タ:セシル殿、賊撃退の武勇伝、聞き及びましたぞ。
セ:先生―――お褒め頂きありがとうございます。
けれど・・・私が駆け付けるまでに、被害の方は甚大で・・・
ス:その噂、私の方でも耳にしている・・・。
それで、どう云った連中だったのだ、ブリジット―――
ミ:ただの・・・一言で片づけてしまえば、躾のなっていない連中だ―――
しかし、こうも私達の地球を、ああした下衆な連中が土足で上がり込むのは、我慢のならない話でもあると、そう認識している。
事の発端は、本会議でも取り上げられた、「ランド・マーヴル」のマグレヴ王国に措ける、賊撃退の一件でした。
その一件を耳にするも、どう云った者達かは判らなかった為、すかさずスターシアが聞こうとした処、
予め調査をしていたミトラからは、「他人の家に土足で上がり込む、不届きな者」と論じ、決して赦してはおけないとしていたのです。
こうして見ると、各大陸・勢力に分散しているとは云うけれども、大元を辿れば、彼らは一つの意志の下に集う者達・・・
ですが、リリアの補佐をするたまもだけは、そんな彼らとは別でもあったのです。
それに、たまもにしてみても、自分以外のこの四人が、どう云った関係でもあるのかを知る、いい機会だとも思っていたので・・・
セ:―――それに私は・・・ああしたトラブルを、未だに武力によって解決しようとしている・・・
事実―――生かして捕えるように・・・と、デルフィーネ様からの通達がありましたが・・・
私は、彼らを一人として生かしてはおかなかった・・・
お陰でルリは、その後問責に問われてしまって・・・
本当は、私は・・・褒められるべき立場にはないんです。
セシルが、自分の国で乱暴狼藉を働いている賊が出没したとの報を聞き、急いでその地点に駆け付けた時―――筆舌し難い光景を目の当たりにしてしまった・・・
その為、ジィルガから予め云われていたにも拘らず、我を忘れてしまい、賊を一人残らず誅殺してしまったのです。
それからというモノは、ご多聞に漏れず、セシルの主であるルリが、その監督責任を問われる事になり、
存外に、自分のしてしまった事の重大さに、セシルは責任感を感じてしまっていたのです。
それを聞いたたまもは―――・・・
た:ふんむ・・・それは、違うと思いますぞ―――
まあ確かに、そうした連中は、所詮現場には出向かん手合いが多い事だしのう。
ミ:フフ・・・全くだ―――
その事を、あなたは良く判っているように見受けられるのですが・・・。
た:まあ、それは当然じゃろ。
なにしろ、一時期には、「そちら側」だった事もあるしなw
ス:ほおう・・・では、そんなあなたが、なぜ―――
た:いや、なに。
わしの友が云う事よ、アレは耳が痛い―――と、云うモノではなかったぞ。
それにな・・・そうした環境に身を置かなんだと云うのも、そんなモノは云い訳に過ぎん。
だったらば、身を置いてみるのも一つの手・・・経験のありとなしとでは、モノの捉え方からして違うからの。
それに・・・今わしが付き添うておる奴は、そこの処をよう弁えておる。
だからわしも、そのことを「善し」としたのじゃよ。
それまでは、四人が固まって談義をしていたモノでしたが・・・
そこを、自分なりの感想を述べるに至り、四人の視線は、一人の女児に注がれる事に・・・
その―――白髪の巫女装束をした女児こそ、「玉藻前」・・・
現在では「たまも」と名乗り、過去には常磐の宮中を掌握していた存在でもあったのです。
それに、だからこそたまもには判っていたのです。
どちらの云い分にも、「理」と云うモノがあったと云う事を・・・
しかしながら、自分の友でもある「しの」から苦言を呈されるに及び、
以前の価値観は淘汰され・・・だからこそ、現在セシルが抱えている責任も、「そんな必要はない」としていたのです。
そして―――そこで初めて、五人が会することとなり、お互いの存在同志を交わしあったのです。
タ:以前はどうも・・・そなた達の協力もあり、「北」統一の時期を早める事になりました。
セ:(!)では・・・先生が以前云っていた―――
タ:はい。
あの頃は丁度、リリア殿が南の評議員に成り立ての頃でしたかな。
ミ:それで思い出した・・・。
そう云えば確か―――ジョカリーヌが云っていた事があったな・・・
ほら、ラゼッタ・・・お前の処のユリアが、自らの「アーティファクト」を・・・
ス:おお!そう云えばそんな事があったな・・・。
それが、その時のお児―――
タ:残念ながら、それは違います。
「金毛白面九尾」―――形は幼く見えても、その実は何千年と生きているようですよ。
そうした時に、口火を切ったのはタケル―――
実は彼以外の四人は、実際には会っていないながらも、その噂だけは聞き及んでいたようで・・・
ここで改めて、タケルから真相が語られたのです。
そして、その口伝をして、自分達が聞いていた事と、照合させていくセシル達・・・
幼いながらも、経験―――知識等の豊富さに、改める処もあったようなのです。
・・・こうして、一日目は終了―――
次の二日目には、本格的にどんな相手と付き合っていくか―――が話し合われ、
そして、最終日の三日目には・・・
リ:くっはあぁ〜〜お・・・終わった―――
なんだか、決めなきゃなんない事、多すぎ・・・
ジ:ハハハ・・・まあ、最初が肝心だからね。
見切り発車をしてしまっては、後で大変な事になる。
ル:それにしても・・・上手くやって行けるのでしょうか、私達・・・
ユ:心配する事はありません。
但し、やり方を間違わなければ・・・の、話しになりますけれどね。
イ:姉さま―――久方ぶりなのですし、これから私とお食事に行きませんか。
リ:え? あ―――・・・ああ・・・そうだな・・・。
真面目にして、お難い討論ばかり続いた所為もあるのか、リリアもここの処やつれ気味になっていました。
事実、今回の「評議会」では、今までにも自分達がしてこなかった「手続き」や「制度改正」が、多種多様にしてあり、
その事を一通り覚えるだけでも、リリアには一苦労―――だったようなのです。
そんな自分のアレロパシーを見かねてなのか、北の評議員であるイリスが、自分達の親交を温めようと提案した処・・・
ジ:ああ―――すまないが、ユリアにイリス・・・あとで私の部屋に来てくれないかな。
「評議長」であるジョカリーヌから、指名されて呼ばれる二人・・・
そして、この後、ユリアとイリスの二人は、慌ただしく地球から発することとなるのです。
=続く=