『アイドル』―――とは、宗教学的立場から見てみれば、それは崇拝すべき「偶像」であり、また、「アイコン」や「イコン」とも訳される事もある・・・。
そして、「これ」も『アイドル』・・・
老若男女を問わず熱狂し、主に芸能関係で活躍する、「年齢の若い男女」や「ユニット」・・・
その歌声や踊りは、時には数百万・・・億単位の観客や金額を動員し、活動表は「分」単位や「秒」単位が当たり前・・・
それに、そう云った―――云わば、「金の成る木」を抱える大手会社からしてみれば、笑いが止まらないのが現状であり、
容易に手放さないのも、道理に叶っていたのです。
それでも、「彼ら」に「彼女」は、自分を応援してくれる客達の為に、
誰もが真似したくなる様な衣装や髪形・・・果ては、お化粧を施し、
今日もまた、高らかに囀るのです。
第百七十五話;なんてったってアイドル
そして・・・ここにいる、一人の人物も、そうした「アイドル」―――その名も、『プリン』・・・
ス:プリンさーん、本番ですよ―――!
プ:はーい! 判りましたー!
皆さーん! こーんばーんわー! 今日も、私のステージを見に来てくれて・・・ありがとー!
「プリティ」で「コケティッシュ」な幼顔に、またそれに併せたかのような甘ったるい声・・・
しかし、彼女を支援する客は、それだけで満足―――
魅了され、余すことなく声援を送り、そして時には・・・
エスカレートしてしまった客も内にはおり、それが喩え「ライヴ」の最中であろうとも、舞台上に上がり・・・
自分の熱烈な愛情を、アピールする者まで出てくる始末だったのです。
けれど、そうした不心得者は、すぐさま警備の者に取り押さえられ、ライヴ会場から強制退去させられるのですが・・・
マネ:大丈夫―――? この後の事を考えて、今日のライヴは中止にする―――?
プ:・・・ううん―――大丈夫だよ・・・マネージャさん・・・
それに・・・中止なんかしない―――だって、私を身に来てくれた人達を、ガッカリさせたくないから・・・
今は、そうした「暴漢」めいた者から遠ざけられる措置が取られ、楽屋にて、自分のマネージャに、心のケアを受けているプリンの姿が・・・
けれど彼女は気丈に振る舞い、またステージ上に立ったのです。
一時的に中断した際に、楽屋へと戻った時は、怯えた表情を覗かせていたモノでしたが、
自分の使命と云うモノを理解していると判断した、プリンのマネージャは、またいつもの可愛いアイドルとしての表情を取り戻した美少女に、胸を撫で下ろしたモノでしたが・・・
ところが―――なぜか・・・プリンの手の内には、一葉の紙切れが・・・
これは、いつ―――誰が―――どのようにして―――プリンに手渡したモノなのか・・・
それとも、プリンが、こうしたトラブル対処の為、気を落ち着かせる為に、常に持ち歩いているモノなのか・・・
それと・・・奇妙な事実が一つ―――
それは、この数日後・・・偶然か否か、プリンのライヴが行われた惑星が、テロの襲撃に晒されたと云う事実。
しかも、こうした事実は、一度や二度ではなく、過去にも数件、同じような事例があった・・・
けれど、そうした理由でライブを中止すれば、あらぬ誤解を招いてしまう為、敢えてプリンが所属する事務所は、プリンのライヴを中止することはなかったのです。
そして、そうした「スキャンダル」は、根も葉もない噂だと云う事が判った―――・・・
つまり、ある一定期間・・・「プリンが、そうした彼らまで招き入れているのではないか」―――と、云う疑いがあっても、そうした動きは全くなかった・・・
これにより、プリンに掛けられていた疑惑は、一旦は収まったのでしたが・・・
ところが―――噂が収まりかけた矢先、またしても・・・の事態に、
思う処となった、プリンが所属する事務所の、専属マネージャが、ある人物の下を訪れ・・・
ミ:・・・なるほど、つまり―――私達「ディーヴァ」に、彼女の監視・・・及び警護を頼みたい―――と・・・。
マネ:はい―――それにプリンは、現在私が抱えている「トップ・アイドル」でして・・・
ミ:それで―――そうした「金の成る木」を、みすみす失いたくはない・・・と。
―――それにしても、「極秘」であるはずの私達の事が、良く判りましたね・・・。
マネ:この私も・・・プリンの事を「マネジメント」する立場ですからね。
色々と駆けずり回り―――手を尽くしました・・・。
「UP」や「マフィア」など、危ない橋も渡ったモノですよ。
それに、落とした額も半端ではありません・・・一応は「必要経費」と云ってはいますが、それもどこまで通用するモノか・・・
それもこれも、プリンの事を思っての事なのです。
ミ:(・・・。)
まあいいですわ・・・ですが、もうしばらく考えさせて下さい。
プリンのマネージャが訪ねたのは、なんと、あの・・・ミリヤ=アゲット=ロックフェラーその人なのでした。
しかもマネージャは、ミリヤが所属する謎めいた組織―――「ディーヴァ」の事を人伝に聞き及び、今回の依頼に踏み切ったようなのです。
しかし―――ミリヤにしてみれば、今回のマネージャの依頼方法は、正規のルートではなかった為、門前払いにしても良かったのですが・・・
ではなぜ、ミリヤは、正規の手続きを踏まなかった、マネージャからの依頼を保留としたのでしょうか。
それは―――・・・
メ:・・・ミリヤ様、なぜあのような者の依頼を―――
ミ:・・・先日あった、「リュシーダ」でのテロ事件は覚えているわね・・・。
実は―――マエストロから、あの件に関しての調査を依頼されていたの。
けれど、あなたも知っての様に、あの惑星では、直近にプリンのライヴが行われていた・・・
プリンに関しての疑惑は、一旦は否定はされたけれど、すぐにまたこの騒動・・・
あの方の事だから、そこに引っかかったのでしょうね、斯く云う、私もそうなのですけれど・・・。
メ:―――では、ミリヤ様は・・・
ミ:こうなってしまった以上、プリンは、「限りなく黒に近い灰色」と見るべきでしょうね。
メイベルにしてみれば、正規の手続き方法ではない依頼を、受けないまでも保留にした主に、苦言を呈しただけでした。
しかし、それをミリヤは、「ディーヴァ」を創設した人物から、既に依頼を受けており、どうすればよいかを迷っていた処、
以前に疑惑を掛けられていた人物に、再度同じ疑惑が持ち上がってきた―――・・・
これによって、ミリヤも思う処となり、マネージャからの意向を受け入れる象となったのです。
そしてその後―――「サラスヴァティ」からの『コード・アッセンブル』を受理した「ディーヴァ」達は、
今回の依頼の事に関しての役割分担を決め、それぞれの持ち場についたのです。
そんな中・・・どうやら憤懣やるかたない人物が、一人いるようで―――・・・
ヘ:〜ったくぅ・・・なんで私が、あんなジャリガキのお守しなくちゃなんないわけよ。
マリ:そりゃ、あんたが悪いんでしょうに・・・
第一、役割を決める時、生返事だったでしょう。
ヘ:(〜・・・)こんなことなら、もう少し真面目に聞いときゃよかったわ―――
マリ:そんなに腐らないの。
私だって・・・クラウドマンとの、お食事会にさ―――
ヘ:あんな男のどこが好いってのw
センスを疑うわww
マリ:余計なお世話でしょ?!
・・・大体、あんただって―――その歳になっても、悪い虫すら寄り付かないんじゃないのよ!w
ヘ:あんだってぇ〜? 私に向かって、「歳」の事を云ったんか??
上等だマリア! 表へ出ろや、ゴルァ!
マリ:バカ・・・今出たらどーなるか判ってんでしょ! 良く考えなさいよ!!
ヘ:くぉんのお〜〜! バカ云うた奴がバカじゃい! そんな事も判んないのか!バ〜カw
マリ:(・・・。)本当のバカに云われたくはないわね―――ちょっと!訂正しなさいよ!
ヘ:へへ〜んだ! バーカバーカw お前の母ちゃんデ〜べ〜ソww
マリ:云っ・・・云ってはにゃらないことを゛〜〜・・・
ヘレン!覚悟で来てるんでしょうね・・・
今回の依頼で、アイドルの身の保全と、彼女が疑わし気かを調べるため、プリンの近くに張り付いていたのは、「ドゥルガー」と「パールヴァティ」だったようですが・・・
どうやらヘレンは、今回の話し合いで、真面目に聞いていた様子ではなく、ただ機械的に返事をしてしまっていただけのようで、
それを、ミリヤの指令に従ってみれば、いつの間にか、自分は警備の格好をさせられ、半ば「子供のお守」の様な事をさせられている事に、不満をぶちまけていたようです。
その内に、同じ任務についているマリアとも口喧嘩になってしまい、本来ならば、ステージの裏方でアイドルを見護らなければならないはずなのに・・・
つい、いつもの癖で(w)エスカレートしてしまい―――やがて、(喧嘩の)舞台は、アイドルのステージ上まで持ち込まれてしまい、
あわや―――「これ」が、例の「テロの襲撃」なのではないかと、関係者を疑わせたほどだったようです。
・・・と―――それはそれで、嗤い話になるのですが・・・
実は、これが、単なる嗤い話では収まりが付かなくなってしまったのです。
それと云うのも、自分達が引き起こしてしまった騒動の所為で、その時にあったプリンのライヴは中止となってしまい、
その事で、ミリヤ邸に呼ばれて叱責を受けている、マリアにヘレン・・・なのでしたが・・・
ミ:全く―――あなた達ときたら・・・
私達がテロリストと疑われてれば、世話はないわ。
マリ:面目ありません・・・
ですがミリヤ様、実は―――
偶然か否か・・・マリアは、自分達が騒動を引き起こしてしまった会場で、「あるモノ」を拾っていたのでした。
その「あるモノ」とは・・・何かの「メモ」―――
けれど、その文面は、熱烈なフアンからの、「メッセージ」のようにも取れました。
しかし、マリアにしてみれば―――・・・
ミ:・・・これは―――?
マリ:一見して、フアンからの熱いメッセージのようにも取れますが―――
ミ:フ・・・なるほど、「猟犬」と云われたあなたにしてみれば、何かの「臭い」を嗅ぎ取った―――と・・・
判ったわ・・・ではこれは、至急ジゼルに回して、解析させてみる事にしましょう。
かつて「UP」では、「猟犬」の名で通っていた優秀な捜査官・・・マリア=ルヴィ=モルガン―――
そんな彼女にしてみれば、こんなにもありふれた、「フアンからのメッセージ」そのものが、「猟犬」の勘に引っかかったのです。
それに、これも偶然かも知れないけれども・・・
自分達が騒ぎを起こした、アイドルのライヴが行われていた惑星では、テロ事件は起きなかったのです。
まあ・・・一説によれば、彼女達が引き起こした騒ぎの方が、大きかったからではないか―――と、する意見も、なくはなかったようなのですが・・・
やがて、ジゼルから返ってきた驚きの証拠に、やはり、今回はそうしたトラブルによって、テロ事件は未然に防がれたのだという見解に至ったのです。
=続く=