ヘレン=サピロス=カーネギーは、「グレスゴール修道会」に所属する、修道女(シ ス タ ー)の一人。

 

ですが・・・彼女ほど戒律を護らない宗教人はいないし、非道徳的な人間はいないでしょう。

 

それと云うのも、ヘレンにはもう一つの裏の顔が・・・

それが、その「首」に「賞金」を掛けられた者達を追う、「賞金稼ぎ(バウンティ・ハンター)」なのです。

 

 

第百七十七話;逆さ十字を背負いし者(ク    ル    セ    イ    ダ    ー)

 

 

とは云え・・・ヘレンも「一応は」宗教人なのだから、一周期に数回あると云う、「集会(ミ サ)」に出席をしなければならないのです。

 

ではなぜ、ヘレンは、そんな「表向き」な行為をするのでしょうか。

 

その理由と云うのは、簡潔にして明瞭。

 

なにより「宗教活動(そ     れ)」が、一番の隠れ蓑になっていたからなのです。

 

 

それに・・・忘れてはいませんでしょうか。

 

ヘレンと同じく―――いや、それ以上に、血と火薬と死臭を漂わせている人物も、また・・・同じ修道会の人間だったと云う事を。

 

 

それは、ある時期の「集会(ミ サ)」―――それも、直近に両者が顔を合わせてから後のお話し・・・

 

両者が意図をして、その時期の「集会(ミ サ)」に出席をしたのでなければ・・・

出来る事ならば、あの時以来、直接会うのを避けようとすらしていた―――・・・

けれど、それは、「何者か(第 三 者)」の意図が介入をしたからなのか、果てまたは、全くの偶然なのか・・・

 

 

 

ヘ:あら―――シスター・フランソワ、お久しぶりですわね。

  あなたと同じ集会(ミ サ)に出席できるなんて・・・。

フ:そのお声は・・・誰かと思いましたら、シスター・ヘレンですね。

  私も、同じような心境です・・・。

 

ヘ:・・・はっ―――よくもまあ・・・。

  こっちはね、あんたと会ってた事を知られたから、お陰で大目玉よ。

  それに・・・そんな事は、これっぽッちも思ってもいやしないくせに。

フ:・・・なんの事を仰られているやら、見当が付きません。

 

ヘ:(!)あんたのねぇ・・・そのスカした態度が気に喰わないのよ!

 

 

 

当初は、「表向き」の顔をして、一宗教団体に属する、同じ修道会の修道女(シ ス タ ー)に対し、紳士的な振る舞いをしていたモノでしたが、

けれどその仮面は、瞬くの間に剥がれ落ちてしまったのです。

 

それもそのはず―――彼女達は、お互いを「何者であるか」を認識していたのですから。

 

しかしそこは、「忍耐」の差―――「堅忍不抜」を必要とするフランソワは、ヘレンからの挑発めいた言動に対しても、少しも動ずる事はなく・・・

ですがその態度が、ヘレンを苛立たせている原因でもあったわけなのです。

 

とは云え、今は「集会(ミ サ)」の場・・・二人の修道女(シ ス タ ー)が云い争っているのは、すぐにでも「ある者達」の耳に届き―――

 

 

 

異:そこのお二人・・・何をされているのです―――

 

ヘ:(げ!「異端審問員(イ ン ク ィ ジ タ ー)」!)

   ち・・・厄介な事になってきたわね―――

フ:いえ・・・なんでも・・・。

  懐かしいお顔を拝見したもので、つい―――・・・

 

異:・・・わたくしが、遠くから拝見させて頂いた時は、そんな風には見えませんでしたが・・・

  お二人とも、あとで「祈祷所(オラトリオ)」へ・・・そこで、お二人の主張を訊きましょう。

 

 

 

ヘレンとフランソワが云い争っているのを嗅ぎつけてきたのは―――

宗教団体の内部で、宗教団体の教義に反した・・・またはしようとしている者を(ただ)し、取り締まる役目を担う者―――それが「異端審問員(イ ン ク ィ ジ タ ー)」なのでした。

 

そう、つまりは、ヘレンやフランソワの様な、聖職に全く相応しくない者達ばかりではなく、

ここにはこうした―――敬虔な人間もいたのです。

 

 

こうして―――「集会(ミ サ)」が終了した後、小一時間こってりと絞られたヘレンは・・・

 

 

 

ヘ:(はあ〜あ・・・全く、ついてないったら。)

  (あいつに知り合ってからと云うモノは、私の人生、波風立ちまくりなのよね〜。)

  (それにあいつときたら、世渡り上手で―――その点、私ときたら〜・・・)

  あ゛〜あ゛! 全く・・・ウジウジと悩んだって始まんないから、手頃な奴を狩って、少しばかり気を紛らわせますか・・・

 

 

 

フランソワは、今までにもそうした「事情聴取」には手慣れていると云った処で、、時間も、そう、さしてかからなかったのですが・・・

ヘレンは性格上、「社交辞令」のような、上辺の顔をつくろうのが苦手だったので、

そうした面が、異端審問員(イ ン ク ィ ジ タ ー)である「レイア某」と衝突してしまい、挙句、聴取の時間も長引いてしまった―――と、云う処の様です。

 

 

そうした憂さを晴らす為、ヘレンはもう一つの生業(なりわい)―――賞金稼ぎ(バウンティ・ハント)に出向いた処・・・

 

 

 

犯:ひ・・・ひいぃ〜〜! ハ―――ハンターだ!!

  し、しかも、「クルセイダー」がやってきやがったぁ〜〜!!

犯:くっ・・・なんでここが―――

  いいかお前ら! 抵抗はするな・・・そうすればヤツとて―――

 

 

 

その者・・・背に、「逆さ十字(ハング・ド・クルス)」を背負い、数多の修羅場を跋扈して来たモノでした・・・。

 

その両手には銃を・・・その「首」に「賞金」を懸けられ、逃げ惑う者達を狩っていたのです。

 

そして、その者に狙われた者達は云う・・・

 

「クルセイダー」が、自分達の前に現れたと云う事は、「抵抗」と云う行為は全くの無意味なモノであるとし、

ある意味で、「命あっての(もの)(だね)」だと云わんばかりに、彼らは抵抗しない意志を、ヘレンの前に示したのです。

 

 

しかし―――・・・

 

 

 

ヘ:お〜や、おやおや・・・こいつはお笑いね。

  事もあろうに、『極悪非道』を謳っている「フィボルグ」ともあろう者達が、この私に命乞いを・・・?

  よくも、空々しい真似が出来たものね。

 

  自分達の意にそぐわない者には、喩え女子供ですら容赦のないお前達が・・・

  お笑いよ―――こいつはとんだ、茶番だわ!

 

  だけど・・・それで、この私が立ち止まる理由なんて、どこにもない―――

  もし、私に赦しを乞うならば、もう少し私の関心を惹くべきね・・・

  それを、そんな三文芝居で! 心を動かせるほど、私は人情家ではないのでね・・・

 

 

 

そう云うと「ハンター」は、両手の銃の引き金を引き絞り―――

交互に発射される銃弾・・・なのでしたが、なぜかその凶弾は、賞金首達の身体を傷つけてはいなかったのです。

 

ただ、賞金首達の近くには着弾していたようで、その事に怯え、慌てふためく者達に対して、揶揄や冷笑が飛び交うのでした。

 

こうした背景には、「ハンターは、いかなる事情があろうとも、賞金首を傷つけたり、殺害してはならない」と云う、『ハンター協会』の掟があったからなのでしたが・・・

ヘレンのそうした行為は、一部の規定に引っかかっていた為、賞金首達を換金する際、そうした聴取を取られる際に・・・

 

 

 

マ:ヘレン―――あなた、また無茶をしたようね。

ヘ:はあ〜? いいぢゃないのよ・・・別に―――

 

マ:良くないわよ―――彼らを聴取する、こちらの身にもなってみなさい・・・。

  けど・・・まあ〜? 偶々今回は、うちの署が当番なわけだしぃ〜、別に、そこんところまでの事情(コ ト)聴取(き か)ないんだけどねぇ〜?♪

 

ヘ:あ゛? ・・・なんであいつ、あんなに機嫌が好さげなわけ?

署A:先日の件・・・ですよ―――

 

ヘ:「先日」・・・って―――「アイドル」とか云う、あのジャリガキの??

  ・・・あんなのと、なんの関係が―――

署B:それが、大ありなんですよ。

   ほら、あの時、署長・・・えらく楽しみにしていた事があったでしょう。

 

ヘ:ああ・・・クラウドマンとのお食事会―――

署A;そ・・・あれから、ドタキャンしたお詫びにと、埋め合わせをしようと奔走してるんですが―――

署B:そ〜云う時に限って、無情なもんでね・・・中々奴さんを捕まえられないことから、ストレスやらフラストレーションばっかが溜まって・・・

 

ヘ:ちょっ・・・それ――――って・・・

 

 

 

丁度この時、ヘレンが賞金首達を換金しようと、当番の「警察署」を訪れたら、

それが偶々、知り合い・・・と、云うか、現在ヘレンが居住している惑星「オンドゥ」にある、「13分署」だった・・・

しかも、そこの「署長」は、ヘレンの裏の事情と云うモノを、知り過ぎるくらいに知り過ぎていた為、ある部分では都合が良かったのでしたが・・・

 

「13分署署長」であるマリアは、賞金首達への聴取を始める際、そうした事情に精通しただけあり、ヘレンに諸注意を促しただけでした。

 

それに、そう・・・注意を促した「だけ」・・・

本来ならば、「訓戒」やら、悪くすれば「賞金の大幅減俸」まであり得たわけなのでしたが、

それにしてもなぜか、マリアの表情が、どこか晴れやかだった・・・

その理由を、周囲(ま わ)りの署員達に聞いたところ、やはりあの一件・・・

今をときめくアイドルの警護によって、ドタキャンをしなければならなくなった経緯が、尾を引いているらしく、

ヘレンが賞金首達を連れてくる直前まで、機嫌は悪かったようなのでしたが・・・

 

だとしたら、この変わり様は「どうして」―――?

 

 

しかし・・・ある意味、ヘレンもマリアの事情を知り過ぎているくらいに、知り過ぎていた為、マリアの反応(リアクション)を理解していたのでした。

 

そう―――つまり・・・そこは、云い知れ様のない、マリアの負の感情の吹き溜まりのようなものであり・・・

 

 

 

マ:ウ・フ・フ・フ♪

  あなた達も災難よねぇ〜・・・なんと云っても、私―――あいつ・・・ヘレンの様に、優しくないからねぇ?♪

 

  ああ、そうそう―――無理に、本当の事を話さなくたっていいのよ〜?♪

  そうすれば、私のストレスも、無くなるわけなんだしぃ〜♪

  だから・・・精々―――愉しみましょう〜♪

 

 

 

その日―――13分署の地下深くでは、嬌声が鳴りやまなかった・・・と、云います。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと