助けを乞われたアイドルを、無様に(かどわか)され―――

ライヴ会場までの途上で、まさにそう云った雰囲気に似つかわしい者達に、すっかりと周囲(ま わ)りを取り囲まれてしまったミリヤとメイベル。

 

これでは、アイドルから依頼された件は、不履行(インポシブル)に終わってしまい、「ディーヴァ」の経歴にも傷を付けてしまうモノか・・・と、思われたのでしたが、

 

もし・・・これが―――総てミリヤの予測と、寸分違わなかった・・・と、したらば・・・

それに・・・「七人の魔女(彼  の  者  達)」の、「ディーヴァ(自  分  達)」に対する認識が、甘い・・・と、したらば・・・

 

だからこそ、絶体絶命の瞬間であろうと(千載一遇の好機だからこそ)―――ミリヤは・・・

 

 

 

ミ:あらあら・・・すっかりと囲まれてしまいましたわね・・・。

  こんな時には、定番通り、泣き叫べば、それなりの画になってくるのでしょうけれど・・・

  でもね、残念な事に・・・私、判ってしまいましたの。

 

  あなたが描いていた謀略―――

  あなた自身が、さも「被害者」であるかのように振る舞い・・・そして私達に接触する―――

  今回の依頼も、あなた自身を護るように・・・でしたけれども、本来の目的は、私達を誘拐すること―――

  そうなのでしょう・・・「クレシダ」―――

 

 

 

第百八十一話;剥がれ落ちた仮面

 

 

 

ミリヤは、まさにその時が訪れるまで、自分が把握をしていた真実を吐露する事はありませんでした。

 

本当は・・・畏れ忌むべき「テロリスト」が、自分に近付いてきた「アイドル本人」であることを。

 

それに、それを指し示すかのように、テロリスト本人が操っていた者達により、テロリスト本人は手厚く護られるかのように退場・・・

その場には、以前、自分の計画を台無しにしてくれた、「ディーヴァ」と云う秘密組織の一員が、残されるモノだと「クレシダ」は推測していました。

 

けれど・・・それこそが浅慮(せんりょ)―――

「クレシダ」は・・・「ディーヴァ」達の真の姿を、知らずにいた・・・

 

しかし「ディーヴァ」達は、僅かに入手していた情報から、「クレシダ」が所属している「組織」の全容を、露わにさえしようとしていたのです。

 

その事を明確にするモノが、現在、オンドゥでもなされていたのでした―――・・・

 

 

 

マ:ナティア=リヘンツェル=プシーキン?

  誰なんです・・・コレ―――

バ:驚くなかれ、今をときめく「トップ・アイドル」様―――と、云う事らしい。

 

マ:トップ・アイドル・・・??

バ:フッ―――ハハハ! 相変わらず、そちらの方は(うと)いと見えるな。

  「プリン」様・・・だよ。

 

マ:(・・・。)

  ―――ええ〜〜っ?! あの・・・プリティーでコケティッシュでキュートなぁ??

  ぜ・・・全然イメージとそぐわないじゃないですかぁ!

バ:だから・・・なんだろうな。

  こんないかつい本名ではなく―――字列変換(ア ナ グ ラ ム)で、プシーキンの「Pu」、リヘンツェルの「Li」、ナディアの「N」・・・と、

  これで「アイドル・プリン」様の出来上がり・・・と、云うわけだ。

 

 

 

今回、組織のNo,2である「ラクシュミ」からの指示で、「サラスヴァティ」が弾き出した情報・・・

それこそは、数多(あ ま た)いるプリンのフアンでも、ディープな連中しか知らない、プリン本人の「本名」なのでした。

 

しかも、今回ジゼルが入手していたのは、それだけではなく・・・

 

 

 

バ:しかも―――まだ驚かされた事に、プリンのライヴがあった会場で、その事後に起こった「テロ工作」も、彼女自身が企てた事らしい。

マ:なあ? なぜそんな・・・

 

バ:さてな・・・そこの処は、捕まえて直接ご本人様の口から、聞き出すより他はあるまい。

  だが、そう簡単に口を割るとも思えないし・・・な。

マ:(?)それはまた・・・どうして―――

 

バ:(・・・。)

  お前・・・「七人の魔女(セヴン・シスターズ)」の事は知っているか―――

マ:(・・・。)

  いいえ・・・初めて耳にします。

 

バ:その名の通り、「七人」で構成されている、恐ろしく悪知恵の働く連中・・・「魔女」と云う事だ。

  そして、「プリン」―――ナディアも、その「七人」を構成する内の一人、「クレシダ」でもある・・・。

 

 

 

そこで明かされた驚愕の事実―――それこそは、自分のライヴ・イベントがあった場所で、必ずと云っていいほど、その直後に起こされていた「テロ事件」・・・

それそのモノを企てていたのは、「アイドル本人」だと云う事でした。

 

何より証拠に、プリン自身は、そのテロ事件によって、被災をしているわけではなく―――

彼女自身が、その会場から離れた時に・・・と、来れば、ライヴ・イベント会場ともなった惑星に居住する者達にしてみれば、未曽有の人為災害であり、

そんな住人達が、恐怖に顔が引きつり―――逃げ惑う様を、高見の見物とばかりに愉しんでいた・・・

 

けれどそれは、「アイドル」としてのプリンとは、著しくかけ離れたことであり、いきなりそんな事実を突き付けられたところで、信じきれるモノではなかったのです。

 

 

だが・・・しかし―――・・・

 

ここに、その事を確信し、敢えて火中の栗を拾うべく、相手の謀略にかかったふりをした人物は―――・・・

 

 

 

ク:フフフフ・・・なぁ〜んだ・・・私の事、判っちゃってたわけ。

  でも・・・だとしたら、なぜ敢えて私の謀略に乗っかってくれたわけ?

 

ミ:そうね・・・云える事は只一つ、「ネットは広大」―――

  「点」と「点」も、「線」で繋がり合えば「面」となり、やがては欲しい情報(モ ノ)を手に入れられる・・・

  実は、私も私なりに、あなたに興味を持って調べさせて貰ったの。

  そうしたら・・・「共用サイト」の連中ときたら、あなたの情報(コ ト)にお詳しくて、私が知りたい情報を連々(つらつら)と綴ってくれたわ。

 

  まあ・・・あなた自身が「七人の魔女(セヴン・シスターズ)」の一人、「クレシダ」である・・・と、云う事は、私の推測の範疇ではありましたが・・・。

 

ク:そう・・・なんだか、サービスし過ぎちゃったようね。

  でも、現在のあなたは、私の手の内にある―――それでも、透かした余裕を・・・いつまで見せれるモノなのかしら。

 

 

 

先程とはうって変わり、可愛らしさなどは一分も見せない言動に早変わりをした「魔女」の一人は、

自分の個人情報を引き出して見せた「ディーヴァ」の一人を、脅迫したモノでした。

 

確かに・・・そう・・・その現場の状況には、明らかなる事実―――

敵中に深く潜り込んでしまったが為に、虜囚寸前の「車椅子の美少女」がいたわけであり・・・

 

ですが―――肝心の情報を、クレシダは欠落させていたのです・・・。

 

そう・・・ミリヤの側には、常に―――・・・

 

 

 

ミ:フフフ・・・「余裕」―――そうね、あなたがそう思いたくなるのも、判る・・・と、云った処よ。

  なにしろ私は、見てくれの通り、足が不自由で、満足に動けはしないのだから・・・

  だからと云って、私が動揺しているように見える?

  そう見えない・・・と、云うのは、未だそうするに足らない―――と、云う事実があるだけ・・・

  私には、「手」であり「足」であり、そして「剣」であり「刃」であり「盾」である、私の忠実なる下僕(メ イ ド)・・・

  メイ・・・その事を判らせて差し上げなさい―――!

 

メ:ご主人様の、御心のままに・・・

 

 

 

そう・・・自分の「主」からの指令が下ると、途端に―――その者のメイド服の上腕部が裂け、鋭い刃の付いた鉤爪が現れてきました・・・。

そして、瞬くの間に―――その場に血風が降り(そそ)ぐ・・・

 

その者は―――「主」だけの指令を忠実に守り・・・

その者は―――「主」だけの声にのみ反応する・・・

その者は―――「主」に飼い慣らされてはいるけれども・・・

その者は―――本性は、とても獰猛にして残忍なのでした・・・

 

(しか)して、「その者」の正体とは―――奇しくも「ウイッチ(魔    女)」と呼ばれた、「暗殺者」なのです。

 

 

けれどメイベルは、ミリヤに飼われる前、「ある契約」を結んでいました。

それが・・・「(みだ)りに生命を奪わない事」―――

 

しかし、現在、この現場に措いては、動かなくなった冷たい(むくろ)が、至る処に散逸しているわけであり・・・

ならばメイベルは、「主」であるミリヤのいる前で、重大なる「契約違反」を犯したことになるのですが・・・

 

 

 

ミ:この()にはね―――「(みだ)りに生命を奪うな」・・・と、以前から云いつけているの。

  でもね、この()の性分は、「流血」を求めて已まない・・・

  だからこそ、未だ「現役の暗殺者」でいられるの・・・

 

  矛盾しているでしょ―――けれど、もういいの・・・

  私自身、こんな日常(コ ト)に慣れてしまったから・・・

 

  だから―――あなたの、その捻じ曲がってしまった思想も判る・・・

  だって、あなたも私も、究極の処では「似た者同士」・・・

  『人の皮を被った(おおかみ)』なのだから・・・

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと