「評議長」である、大皇(おおきみ)・ジョカリーヌからの依頼を受け、地球を出発する、ユリアとイリス・・・

そんな二人を、見送ったリリアの胸中とは、いかがなモノだったのでしょうか。

 

 

 

リ:ああ〜なんか、ちょっと「ほっ」としたぁ〜〜

  ・・・なんて事は、間違ってもあいつの前じゃ、云えやしないし・・・な。

  それに、正直云うと、今回あれから、あいつの云う「お食事会」に、付き合わされそうだったからなぁ〜。

 

た:「いや」だったら、いやだと云えばよかろうに・・・

 

リ:それが云えたら、簡単なんだよ・・・

  それよかジョカリーヌさん、あいつらどこへ行ったんだ?

 

ジ:あんな事は云っていても、結局の処は心配なんだね・・・

  そうだね―――取り敢えずは、この地球を宙外(そ と)からの侵略から護ってくれるように、「ある処」に頼みに行ったんだよ。

 

リ:ああ・・・あの―――「UP」ってとこに?

ス:(!)ジョカリーヌ様、それは本当に・・・

 

ジ:ああ、それだけは嘘を()いても始まらない。

ス:しかし―――・・・

 

ジ:もう決めたことだ。

  それに、ユリアも賛成してくれた。

ス:あいつ・・全く―――

 

ジ:けれど、一応彼女からも釘を差されたよ。

  だから、「その上で・・・」と、云う事でもある。

リ:ああ―――そう云えば・・・終わった後に、二人で何やら話しこんでいたよな。

 

ミ:ほぉう―――と、云う事は、「彼女達」に、協力を仰ごうと云うワケですか。

  しかし・・・果たしてそう巧く行きますかな。

 

ジ:―――そこはユリアに一任してある。

  それでどう転ぶかは判らないが・・・取り敢えずは、適任は彼女しかいない―――と、私がそう判断をした。

  イリスには、その(かん)の対応を見納めるように云ってある。

  まあ・・・(てい)のいい「研修」だね。

 

 

 

月の裏側にある、地球の宇宙港より、遠ざかる機影を見送り、一時(ひととき)を安堵するリリア。

 

しかし今回の出航には、今回の評議会で取り決められた、ほんの一部を成就させるための重要事項であるだけに、各補佐官の間でも、議論は湧いたモノだったのです。

 

その(なか)も取り分け、「UP」なる組織の現状に詳しいかのようなスターシアの口調に、ジョカリーヌの口からは、今回の計画が二段構えである事を仄めかせていたのです。

 

つまりは・・・現在のUPが、全幅(ぜんぷく)を寄せるだけの信頼を得ておらず、そんな機関に頼ろうとしている危険性を、スターシアは述べようとしたのですが、

ふとミトラの口から洩れた「彼女達」・・・

そう云えば、ユリアもその存在の事を口にしていた―――・・・

ならば、「彼女達」とは、何の事を指しているのだろう・・・

 

リリアは、そこの処を気にはしていたのですが、思い当たる節がなく、その時はそこで考えるのを止めてしまったのです。

 

 

それよりも、これからは、国に帰って、やるべき事が山積(さんせき)している・・・

現在も、各都市間を繋いでいる幹線道路はあるけれど、これからは、各大陸の主要都市を繋げる「経路」を、構築しないといけない・・・

それには、莫大な経費と人員を投じなければならないので、その事をテラ国の女王であるソフィアに、相談を持ちかけようとしていた・・・

そんな時の出来事だったのです。

 

 

第百八十四話;予期せぬ災害(できごと)

 

 

それは・・・リリアが、ソフィアに、今回の評議会で決まった事を、相談しよう―――と、

テラ国の首都城である、ユーニス城・正面大門を潜り抜けた・・・その直後の出来事だったのです。

 

 

 

リ:(・・・?!)

  う・・・うわ・・・っ!?

た:(!!)

  な・・・なんじゃ・・・これは―――っ!!

 

 

 

違和を感じた瞬間―――自分の足下が蠢いた・・・

まるで、大きな生き物が、寝返りを打ったかのような―――そんな感覚でした。

 

しかし次には、立ってもいられない様な、横に揺さぶられるような感覚に陥り―――

その直後、下から突き上げられ―――それが間断なく続いたのです。

 

その・・・時間にして、約数十分―――・・・

 

日頃では、そんなには長く感じてはいなかった「時間」なのに、

その時だけは、「数時間」のようにも感じられてしまった・・・

 

目の前では、崩落していく城壁―――逃げ惑う人々の声・・・

そんな惨状に、見るに耐えられなくなり、リリアはその場で、頭を抱えながら(うずくま)ってしまったのです。

 

 

そして、次にリリアが目にしたのは―――

テラ国の首都城である、ユーニス城の、変わり果てた姿・・・

 

幸いにも、リリア自身は無事でしたが、付き添っていたたまもは、瓦礫の一部が飛んで来て直撃を受けたのか、頭から血を流していたのです。

その事に、リリアは急いでたまもの気を確かめ、傷口の手当をしていた処・・・

 

 

 

た:う・・・うぅ・・・

リ:(!)気が付いた・・・ああ―――良かった・・・

 

た:リ・・・リアか・・・それより、ソフィア殿は・・・

リ:(!!)そうだった・・・でも―――・・・

 

た:わしの事は良い・・・お主の手当てが早かったからな。

  それより、早う行ってやれ。

 

 

 

怪我を()ているけれど、無事を確認して安堵をしたのも束の間、

そのたまもから、この城の主にして、国の女王であるソフィアの安否を問われたところ、思う処となってしまったリリア―――

けれども、ユーニス城は全壊し、これで全員が無事だったならば、笑い話に収まるのでしたが、

リリアがソフィアを探す際にも、各所から聞こえてくる呻き声・・・崩落した壁から、覗いて見える血だまりや(かいな)・・・

「戦争」や「勝負」で、それらは多く目にしてきた事はありましたが、「それ」とはまた違った凄惨な有り様に、リリアは思わず目を背けてしまうのです。

 

そして・・・次第に駆られ、大きくなっていく不安―――

 

もしかすると・・・あいつは・・・もう―――・・・

 

そう思った途端、リリアはソフィアの名を叫んでいました。

 

けれど・・・いくら叫べども、返ってくるモノはない―――・・・

 

そこで、心当たりを隈なく探した処・・・

 

 

 

リ:(!!)ソフィア―――!!

 

 

 

うつ伏せになり、口や鼻腔からは血を流しているのを見るなり―――リリアは生きた心地がしなくなりました・・・。

だから、次第に正常な判断ができなくなり、あともう少しの処で、間違いを犯しそうになっていたのです。

しかし、不幸中の幸い―――その間違いを、事前に(ただ)してくれた存在がいたのです。

 

見るからに重体のソフィアを見つけ、すぐさま側まで駆け寄り、生きているかどうかの判断をする為、揺さぶろうとしていたリリア・・・

けれどそれでは、もし脳内に傷を負っていた場合には、生命の危険となる・・・

そんな事を知らないリリアが、行為に及んでしまった場合―――取り返しのつかない事態になっていた処なのでしたが、

リリアがソフィアの身体に触れる為、手を差し伸べようとした瞬間―――誰かがリリアの腕を掴んでいたのです。

 

その事に、自分の腕を掴んでいる、その先を見つめると―――・・・

 

 

 

リ:サヤさん!!

サ:止めろ・・・そいつだけは、やっちゃいけない。

 

 

 

リリアの間違いを、寸での処で(ただ)してくれたのは、ヴァンパイアの子爵であるサヤなのでした。

それに、サヤが云うのには、予断を許さないまでも、まだ手遅れではない・・・

その事は、それまでにも多くの「死」に直面をしてきたヴァンパイアだからこそ、判断が出来ていたことだったのです。

 

それよりも・・・

 

 

 

リ:ソフィアは・・・ソフィアは・・・?!!

サ:安心しな、私らが来たからには大丈夫だ。

  それより・・・連絡はついたか―――・・・

マ:『はい、今しばらくかかるそうですが、間もなく・・・』

 

サ:急がせろ―――人事不省になりつつある

 

ヘ:子爵様、お待たせを。

サ:大至急だ、一刻を争うぞ!!

 

 

 

心配で、心配で、自分ではどうする事も出来ないモノだから、つい涙ぐんでしまうリリア・・・

そうしたリリアを落ち着かせる為、サヤは安心させる為に(なだ)めたりしたのですが、

所詮サヤ自身も医療の知識は持ち合わせていなかった為、気休め程度の言葉しか出なかったのです。

 

そうしている間に、要請を出していた医療従事者が到着し、簡易的ながらも脳内に傷害がないかを()てもらったところ・・・

 

 

 

ヘ:(・・・。)

  どうやら、大丈夫なようですよ。

  脳震盪(のうしんとう)を起こしているだけです。

  しばらくすると気が付くでしょう。

リ:そうか・・・ああ、良かった・・・良かった・・・

 

ソ:う・・・ん・・・

  ・・・リリア?

リ:ソフィア!! そうか・・・気が付いたか・・・良かった、良かった・・・

 

ソ:一体・・・どうなっ・・・うっ・・・く!

ヘ:今は、安静にしておいた方がよいでしょう。

  それに、ざっと見渡した処では、私一人の手では負い切れないようですし・・・

サ:ああ、判ってるよ・・・。

  そこん処は、目下(も っ か)検討中だ。

  けどまあ・・・この国の女王さんが助かって、何より―――ってとこだよ。

 

 

 

どうにか一命を取り留めたことで、心配するモノから歓喜のモノへと変わって行くリリアの涕・・・

けれど、ソフィアにしてみれば、自分の身に降りかかってきた出来事に、(いま)だ実感は出来てはいなかったのです。

 

それに・・・だからこそ―――なのか・・・

サヤの方でも、核心に迫る事までは云いませんでした。

 

現在のテラ国で、一体何が起こったのか・・・

 

その事を確かめる為、リリアとサヤは、パライソ国のシャクラディア城へと、転移するのでした・・・。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと