広大なる大宇宙―――その中には、様々な職を手に、縦横無尽に活躍する者達が多くありました。
斯く云う「彼」も、その内の一人・・・
名を―――「ビリー=B=マッコイ」
愛機「摩利支天」を駆る、業界最速の「運び屋」―――
種々様々なDMから、小荷物の配達、更には顧客「等」の、目的地までの送達etc・・・
しかし、同時に彼は、「浪費家」としても知られており、
衣装にしても、一度きりしか袖を通さないのに、銘柄品を購入したり、また趣味も、「賭け事」とくれば、稼いだ金をそのまま右から左へ・・・
だからか、本来なら貯まるモノも貯まろうはずもなく、いつも彼の財布は、秋風が吹き荒んでいた―――
・・・モノと思いきや、何を隠そう彼は、一度たりとてそんな状況に陥った事はなかったのです。
なぜなら・・・
彼は、「表」の収入ではなく、実の処、「裏」社会の収入の方が、遙かにそれに優っており、「そのコト自体」が、彼を有名にしていたのです。
そう・・・彼―――ビリー=B=マッコイこそは、「裏」業界最速の「運び屋」・・・
第百九十七話;RIDEEN
なのです。
しか―――とどのつまり・・・「裏の運び屋」とくれば、取り扱う「品物」も、基本的には「危険な物」が多く、
またそうした場合も、「お金」にしても、ギャングやマフィアの「マネー・ロンダリング」のモノだったり、
「人」にしても、何かしらの理由で浚われ、人質になった身柄の人間だったり・・・等、兎角黒い噂は絶えなかったのです。
ところが、そんな彼も―――・・・
ビ:・・・ああ、オレだ―――なんだ、あんたか。
そうか・・・判った・・・
のっけから、自宅兼事務所に何かしらの連絡が入るも、無愛想な受け答えしかしなしビリー・・・
なにがそんなに、彼を不機嫌にさせるのかと云うと、実を云うと・・・ここの処の数日、「賭け事」の負けが込み、それを「弱味」として握られてしまっていたから・・・
そして、今の連絡も、そうした処からの連絡だったから―――・・・
けれど、だからと云って聞かないわけにはいかなく、渋々ビリーは、指定された場所に向かう事にしたのです。
そこで待ち構えていた、件の「連絡者」とは・・・
連:おお―――よう来たのう。
早ぅ、こっちゃあ来いや。
ビ:・・・で? なんの用なんです―――
驚くほどに小さい・・・ビリーの身長が、190cmあるのに対し、この連絡者は、100cmにも満たないか・・・或いはそれくらいしかないか・・・
しかし、体格は立派な「大人の女性」を形成しており、その容姿が「彼女」の「成体系」である事が判るのです。
それよりも、まだ更に驚くべきは、その「女性」は、言葉遣いが荒いながらも、屈強な男達を、側に幾人も侍らしていると云うこと・・・
しかも、その「男達」も、彼女の趣味でそうされているのではなく、云わば「従僕」・・・「手下」だったのです。
(ここまでの記述で、この「小さき彼女」の正体が、或る程度推察出来ようと云うモノ。
そう・・・つまり「彼女」は―――・・・)
それに、その「小さき彼女」が、自分が見上げなければならない彼を、呼びつけた理由・・・と云うのも―――
連:実はのぉ・・・一つ仕事を請け負うてもらいたいんよ。
ビ:ええ、まあ・・・そう云う約束でしたからね。
それで? なにを・・・
連:おう―――ちょい持ってこいや。
(・・・)これになるんじゃが・・・
ビ:(?!)・・・「コレ」は―――? 「麻薬」じゃないのか??
連:(・・・)そう云う事に、なるんかいの―――
ビ:「そう云う事」ってよ・・・あんたコレ、違うんじゃないのか??
まあ確かに、オレが扱う物は、基本「ヤバめ」なモノばかりだがよ・・・
あんた、オレとの最初の契約ん時に云ったよな、『「麻薬」だけは取り扱わんでくれ―――』って・・・
それが、一体どう云う料簡なんだい?!
単純に行ってしまえば、「仕事の依頼」・・・
しかも、今回依頼された用件と云うのが、ビリーと、この「小さき彼女」との間で、最初に取り交わされた約束事に、「小さき彼女」側から、一方的な違約事項を突き付けられた・・・
だからつい、ビリーも声を荒げてしまうのですが、しばらく「小さな彼女」からの沈黙が続いた後、その重たい口を開くのには・・・
ビ:なあ! どう云うわけなんだい!
あんたらしくもねぇ・・・黙ってないで、何か云ってくれよ!!
確かによ・・・あんたんとこの「縄張り」にある「カジノ」で、オレの負けが込んで―――その因果で、あんたの言い成りになっちまってるけどよ・・・
その前にどうして、今回の事になっちまってるのか―――そのくらいは説明があってもいいんじゃないのかい?!
依:(・・・)ほうじゃの―――黙っとるまんまじゃったら、何のことか判りゃせん・・・
じゃったらよぅ、そんなぁを一辺、試してみてくれんかいの。
ビ:はあ? 益々判んねえ事を―――・・・なんでオレが・・・
依:黙って、試してみないや―――話しはそれからじゃ・・・
「小さき彼女」は、しかし重たい口調で・・・それでいて威圧・高圧的に、その行為をビリーに促せました。
しかし、本来ビリーは、他人からそうされる事を嫌がったモノでしたが、状況が状況・・・
見るからに強面で、屈強な取り巻きの男達に・・・なのか、今回稀に見せる、この「小さき彼女」の沈痛な面持ちがそうさせたのか・・・
そこで、「飲む」タイプの麻薬を服用したのです。
すると―――・・・???
ビ:(・・・・・・)
(―――・・・)
(―――・・・・・・?)
なんだぁ? こりゃあ・・・全然、トリップどころか―――
依:フッフッフ・・・クックック・・・そうじゃろぅのぅ・・・そんないつは、普通の―――「栄養剤」じゃあ・・・
「悪い冗談」―――そうとも取れなくもありませんでした。
事実、思わせぶりな態度をするモノだから、てっきりビリーも、「新薬」を取引先に運ぶモノ・・・とばかり、そう思っていたら、
「それ」は図らずも、何ら人体に害を及ぼすモノではない、単なる「普通の清涼飲料品」だったのです。
しかし―――依頼主である「小さき彼女」からは、この時でさえも「ニコリ」ともせず・・・
つまりは「これ」が、今回の彼女からの依頼内容―――それも、「本気」である事が、ビリーにも伝わってきたのです。
その前に・・・気になってくるのは、「小さき彼女」の取り巻きや、彼女自身の言葉遣いからして、相当の「修羅場」を踏んできていることは判るのですが、
だとしたなら、「そうした組織」の営利にも係わる物品を、「取り扱わない」とした彼女の「真意」とは・・・
実は、彼女自身も、「以前まで」は、率先して取り扱っていた経緯はあったのです。
ですが・・・「或る時」を境に、彼女は―――・・・
依:・・・のぅ、ビリーよ、あんたぁに云うて聞かしちゃったことがある様に、わてのとこでも、こう云うもんは取り扱い寄った・・・
じゃがの―――因果な商売よ・・・わてが可愛がっとった姪っ子がの、こともあろうに・・・麻薬漬けにされて・・・廃人にされてしもうた・・・
わてはの、そん時ほど、こがあなモンを流しよる、わてらの商売を呪うた事はなかったよ・・・。
ビ:(!)そいつは・・・気の毒なこって―――・・・
依:じゃけん! わては決めたんよ!
あん時から、一切の麻薬の取引から手を引くんを!!
じゃがのぅ―――わてらんとこが止めても、一向になくならん・・・じゃったらよぅ、このわてが、全部潰しちゃるまでよ!!
じゃけん云うて、「根絶」ッちゅうのも難しいのはよう判る・・・。
ほならせめて・・・最近のさばっちょる処を、徹底的に潰す・・・要はよぅ、あんたにその一役を買うてもらう・・・「きっかけ」を作って貰おう思うちょるところなんよ。
彼女が、可愛がって已まなかった「姪っ子」の存在・・・
自分の叔母が、反社会的勢力とも云える、「そんな組織」の長だと云う事を、知らなかった存在・・・
ビリーも、彼女の姪っ子なる存在を、嘗て一度だけ写真で見させてもらった事がありました。
それは、彼女とビリーが、最初に契約を取り交わした際に・・・
その当時は、幾分か成長をし、将来は芸能の道を希望しているのだと聞かされた・・・その「姪っ子」が―――
やはり、叔母である彼女の存在が、そうさせたのか・・・或いは、ライバルである、その他の競争相手に妬まれたのか・・・
麻薬漬けにされてしまい、廃人にされた挙句―――無惨にも、ゴミのように棄てられてしまっていた・・・
あんなにも可愛がっていた姪を、こんな目に遭わせた奴らを、赦してはおけない・・・
「小さき彼女」―――レヴェッカ=カストゥール=フェルナンデスは、既に相手の目星は付けていました。
だから要は、「きっかけ」が欲しかった・・・
自分の姪にした様な事を・・・いや、それ以上の重き罰を、「奴ら」に刻みつけてやりたい・・・
その為の「きっかけ」を、ビリーに依頼したのでした。
=続く=