納得がいかず、不満・憤懣の表情を前面に出した、リリアがそこにはいました。

 

こんな自分を、「后」・・・高貴な身分の妻に迎えたい―――と、云われても、

このような手段・・・云わば「誘拐」にも似た行為で迫るのは、どこかお門違いも甚だしいモノだと、リリアは思うのでした。

 

それに・・・一番納得いかないのは、どうしてこんな場所に、この人物がいるのか・・・

 

 

 

リ:そ・・・そ―――だよ、大体なんで、お前がこんな処に・・・?

 

ヨ:耳か―――頭でも悪いのですか・・・

  コレまで既に二度、同じことを繰り返し聞いているのですよ。

 

  私は云ったはずです・・・私が本来いるべき場所にいて、何の不思議があるのでしょうか・・・と。

 

リ:お前が・・・「本来いるべき場所」―――?

  ・・・だって、ここは―――

 

ヨ:そこは理解したのですか。

  不思議な方ですねぇ、あなたは・・・

 

  本来ならば、誰しもが腰を抜かしてしまうような場所に、あなたは身を置いているのですよ。

 

リ:私が「腰を抜かす」??

  なんでだよ―――w

 

ヨ:ですから、先程から何度も申し上げています通り、あなた様は、「天帝の后」に選ばれたのですよ。

 

リ:(・・・。)

  だからだよ―――なんなんだよ・・・その・・・「天帝」?っての・・・

 

ヨ:ヤレヤレ―――根本の基礎から判っていないのでは、その必要もなかった・・・と、云うワケですか。

  なるほど―――これは興味深い(お も し ろ い)・・・

 

リ:ほっとけよ! 悪かったな・・・莫迦で―――

 

 

 

「天帝の后」となってしまったリリアの前に立ちはだかっているのは、監獄惑星・オンドゥの「獄長」であるマリア―――

その彼女が信頼を寄せ、また異性として意識をしている、「副長」のクラウドマンなのでした。

 

その彼が、少しばかりリリアを小馬鹿にした態度に出たため、リリアも憤る寸前まで行くのでしたが、

そこは「大人の対応」・・・今少しばかりは、この男の云い分などを聞いてみよう―――と、していたのです。

 

するとリリアは、どうも根本の事が理解出来ていのだと、会話の(なか)で知った、「クラウドマン」ことヨヴは、

実に判り易く、今現在の、リリアが置かれた立場と云うモノを説明してあげたのです。

 

そう・・・そもそも「天帝」とは―――

 

 

 

ヨ:よろしいですか・・・

  そもそも「天帝」とは、「総ての存在の頂点に立ち売るべく存在」なのです・・・

  その存在なくしては、あなたも―――この私も、ここにこうしていられはしないのです。

 

リ:はああ? なんだよ―――それ・・・それじゃまるっきり・・・

 

ヨ:「神」―――と、勘違いされる方も多いようですが・・・存在意義(レゾン・デートル)が違うのです。

  それに、そうであるとすれば、態々(わざわざ)「天帝」と名乗らなくてもいいはず・・・

 

リ:(!)なるほどなあ―――

  ・・・それで? ナニ―――「天帝」って・・・

 

ヨ:(〜〜・・・)これほど、手強い相手は古今稀に見ますね・・・

 

 

ジ:―――それでは、私から御説明して差し上げましょう・・・

リ:(!!)ジョカリーヌさん!

 

ジ:(・・・)そもそも「天帝」と云うのはですね、総ての天体の「運営」「管理」を任されている存在なのです。

  あなた様も既にご理解頂いているように、私達の地球も、実は「活きて」いる・・・

  だとしたら、他の天体が「そうではない」と云い切れるでしょうか。

 

  つまりは「天体」も、私達と同様に、「産まれ」・・・そして「死んで逝く」・・・

 

  「天帝」と云うのは、つまりはそうした事象の「記録の管理者」であると同時に、絶大な権限を持っていらっしゃるお方の事を云うのですよ。

 

  多寡だか・・・惑星の開拓を推奨している私達「フロンティア」とは、一線を画して余りあるほどなのです・・・

 

 

 

どこか「偉そう」なのは、どうにか判りかけてきた・・・けれど、リリア自身、元王族出身ではあったものの、

彼女自身がそんな事に拘泥・固執してはこなかったので、今一つ踏み込めた理解にまでは至らなかったようなのです。

 

するとここで・・・この度の参賀に招かれているモノと思われるジョカリーヌから、

もう一つ噛み砕いた説明がなされることにより、リリアもようやく理解できるようになったのです。

 

しかし・・・だとすると―――・・・

 

 

 

リ:な・・・なんだか〜〜すんげー大変な事に、なってるぢゃねえか―――

  じ・・・じゃあ、この私が、そんな大層な奴の―――「お嫁さん」・・・てこと? ・・・に、なっちゃうわけ??

 

 

 

そう・・・「后」と云うのは、リリアも王族だったから、判っていたこと―――

それは、「国を治める者の妻」・・・であるのと同時に、時には、「宰相」「摂政」と同等―――

或いは、それ以上の権限を持っている存在であるとの見解に至れるのです。

 

いや・・・それ以上に、今のリリアの頭の中には、「妻」である事の意味合いの方が大きかった―――

その事を、どうやらジョカリーヌの方でも察するに至り・・・

 

 

 

ジ:(なるほど・・・そう云う事だったか―――)

  一つ・・・誤解がないように云っておきたいのですけれど・・・宜しいでしょうか。

 

リ:な・・・なんだよ―――ジョカリーヌさんまでも・・・

  それに、さっきからおかしいぜ? こんな私に、そんな言葉遣い・・・だなんて・・・ なんでそんなに他人行儀なんだよ―――

  やめてくれよ・・・それに、私とあんたとの距離―――って、そんなもんだったのか? 違うだろ?

  そんなんじゃなく・・・いつものように―――気軽に接してくれよ・・・

 

ジ:・・・そう云って頂ければ、幸いに存じ上げます―――それでは・・・

 

  そうだね・・・君が誤解をしている点で云えば、「后」とは「妻」であると云う事―――けれどね・・・

  「天帝の后」には、実はそんな意味合いなんて、無いに等しいんだよ。

 

  それを示す一つの例として、実際に天帝は、これまで幾人もの「后」を迎え入れている・・・。

  斯く云う、私や姉さん達も、その内の一人に入るんだ。

 

リ:・・・はい? ―――ちょっと待て??

  それ・・・って、あいつ幾つ「離婚歴(バ   ツ)」があるんだ??

  それに・・・ジョカリーヌさん「達」も???

 

ヨ:ははあ〜〜そう云う事でしたか―――

  私の方も、ようやくこの方の反応の意味する処が判りましたよ。

  つまりこの方は、今回の件を「婚姻」・・・と、捉えていたと―――

 

ジ:そう云う事。

  まあ・・・私も笑えない節があるけれどね。

 

リ:なんだあ?? なんで二人して、判っちゃった様になっちゃってんの・・・私にゃ、全っ然―――判んねぇ〜よ!!

 

ヨ:つまりですね・・・天帝様が后を迎え入れる理由と云うのは、あなた様方で云う処の「婚姻」ではない―――と、云う事なのです。

 

ジ:そう云う事―――だとしたら、理由としてはあと一つ・・・

  君は、膨大にしてある天帝の業務遂行の一つを、任せられる事になったんだよ。

 

 

 

第二百話;「后」の役割

 

 

 

なぜリリアが、これほどまでにも強い拒絶反応を示したか・・・

それは、今までのリリアの言動に表わされていたのです。

 

そう―――自分には既に、心許した異性がいる・・・と、云うのに、こんなにも強引に、また強制的に婚姻を迫り、実行を移したことに得心がいかなかった―――

 

けれど実は、天帝が后を迎え入れるのは、或る事情と云うモノがあり―――

またその条件を満たした者のみが、彼の者に迎え入れられ・・・そう呼ばれる事を赦される―――

 

そしてその意は、万象須らく「天帝のご意思」と同義であるとされる・・・

 

つまり、この事が示す処には、「后」は、天帝の業務・執務の「代理執行者」であり、

実は、「その妻」と云う意味合いは、それほど持ち合わせてはいなかったのです。

 

それに、聞く処によれば、遙かな過去―――それも、ジョカリーヌが地球に辿り着く以前に、彼女は「天帝の后」だった事が知れたのです。

(しかも、姉である「あの二人」も、「そう」であったらしい)

 

ならば、気になってくるのは、「后」が手伝わなければいけない程の、「天帝の業務」―――と、云う事になるのですが・・・

ところがそれは、思ったほどに難しくは、ないことはないのですが―――・・・

 

 

 

ヨ:コレが、その「ほんの一例」―――と、云う事になります。

  この書類に、こちらの「()」を押して貰えるだけで結構です。

 

リ:(・・・)ん? たったこんだけ? たったこんだけの為に―――私は(さら)われてきたのか??

 

ジ:(あはは・・・)そうだよね―――それが普通の反応だと思うよ・・・。

  けれどね、今の君のその反応―――実は私の時でもそうだったんだ。

 

リ:えっ?! ジョカリーヌさんも一緒?!

 

ジ:そう・・・そして、「笑えない事実」がここにある―――

  確かに、業務内容自体としては、そこらにいる児童にでさえ、できるモノなのだけれど・・・その「量」が―――ね・・・。

 

リ:「量」??

 

ジ:ヨヴ―――今期の「后」がこなさなければならない、その「量」に関してなのだけれど・・・

 

ヨ:はい・・・今現在、私の手元にある資料によりますと、ざっと数百―――

リ:(ほ・・・)なんだ、たったそんだけか―――

 

ヨ:「億」になります。

 

リ:(・・・)

  にゃい? す・・・すうひゃく・・・おくぅ〜?!

  な―――なんなんだよ!それ!!

  あいつ・・・そんなに溜めこむまで、サボってやがったって云うのかぁ〜?!

 

 

 

リリアが大爆発を起こしてしまうのも無理はありませんでした・・・。

 

要は、こんな自分にでさえ出来る簡単な業務(し ご と)を、「数百億」と云う単位になるまで溜めこんでいた・・・

それと云うのも、天帝・ダンテが、それまでサボタージュしていた付けだった―――と、云う事と、

こんな自分を「后」に迎え入れ、云わば「尻拭い」同然の事をさせると云うのも、そのツケを自分に押し付けようとさえしているのではないか・・・と、リリアは思う処となったのです。

 

しかし・・・やはりリリアは、まだ知らない―――

 

「天帝の業務」と云うのが、どんなにか多岐に亘り、煩雑し、困難なことであるのか・・・

一つの天体の運営―――と云う単純なモノではなく、大宇宙全体の運営・管理と云うモノが、どれだけ重要であるのか、判らずにいたのです。

 

 

そして・・・やがて知って行くこととなる―――

なぜ天帝・ダンテが、「今期の后」に、リリアを選定したのかと云う事を・・・

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと