リ:そうかよ・・・そう云う事かよ―――
つまり、こう云うわけだ・・・今回あんたが頼みたい相手―――ってのは、「私」なんかじゃなくて、「天帝の后である人間」・・・だったってことだ。
ケッ! これだからやってらんねぇゼ! 結局頼るべきは、「高い身分の人間」って事なのがよ!
狭いよなぁ〜狭い狭いw 狭いと思ってた地球と違うかと思っていたら、案外宇宙ってのも狭ぇもんだよな!!
頼ってきたのは「個人」としての「自分」ではなく、「高い身分の人間」に取り入り、そこから強い圧力をかけて貰う・・・そうリリアは理解したのです。
けれど、レヴェッカは―――・・・
レ:ほほ〜う・・・興味深い事を云う姉ちゃんじゃわいのう・・・。
ナグゾスサールの腐れ外道の名を名乗り寄るけん、どがいな奴か思いよったら・・・こりゃ、ええ掘り出しモンを見つけたわい!
リ:(・・・は?)「ナグゾスサール」が「クサレゲドウ」??
あんた・・・この私に喧嘩売ってんのか!?
レ:カッカッカw こいつは豪い誤解を招いてしもうたようじゃわいw そこんところは謝っちょこう。
わてが云うたんはの、「グリフォン」のシュトロム=ドミチェリ=ナグゾスサールの事じゃ。
あんの腐れ外道ときたらのう・・・わてらの縄張りを荒らしまわった挙句、トンずらをこきやがってからに・・・
一辺、このわての手で落とし前をつけちゃろう思うとったんじゃわいや。
そしたらのう、あんたの名が、あんなぁのと同じじゃったけん、つい疑うてしもうたんよ。
悪かったのう・・・
リ:あ・・・あ〜〜―――判りゃいいんだよ、判りゃ・・・
(・・・はて? シュトロム=ドミチェリ=ナグゾスサール? なんかどっかで聞いたことがあるんだけど・・・誰だったっけ?)
やはり、レヴェッカの云っていたのは、あの「グリフォン」の、シュトロム=ドミチェリ=ナグゾスサールなのでした。
・・・とは云っても、このお話しでも随分と前に出て来たので、皆さま方も印象は薄くなってきている事でしょう・・・。
それにリリアも、さほどに気にしていた存在でもなかったので、「彼」の事はすっかりと忘れてしまっていた様子だったのです。
ともあれ―――重要なのは、そこではなく・・・
レ:ああ―――それとのう、もう一つ誤解しとる処があるんじゃが・・・
確かに、今回「天帝の后」に協力願いたいんじゃが、そんなモンはよ、あんたが云うとったように、あそこにある張りぼてにでもくっつけて相手をさせりゃあええ・・・
わてが欲しいんはの、「+α」・・・あんたを見立てた処、腕の方も達ようじゃけん、「あんた」に頼みに来たんよ。
今回の件で重要なのは、「天帝の后」もそうでしたが、何よりレヴェッカが欲していたモノは、「武力に長けた人間」・・・
それに―――だとしたら、一体どこ経由でリリアの事を仕入れたのか、そこは謎なまま・・・なのですが、
存外にも、その人物が見せかけの地位などではなく、自分の「武力」を頼ってきてくれている事に、内心リリアは嬉しくなってきたのです。
しかし、「武力」が本当に必要なのか―――・・・
疑問とすべき点は、本来そこではないのですが・・・
それが、必要だったのです・・・
それと云うのも―――・・・
第二百二話;仁義なき抗争
リ:な、なんかここ・・・殺伐としてんなあ―――
レ:まあ・・・肩の力を抜きない。
無事に終わりゃあ、すぐ済むよ・・・「無事に終わりゃあ」―――なぁ・・・
現在、リリアとレヴェッカが身を置いていたのは、建物の内の一室・・・「事務所」と呼ばれる場所でした。
しかも、その内部の「内装」ときたら、悪趣味の極致で、おまけに自分達を取り巻く数多の男達も、皆いかつい面構えをしていて、
身体の所々には、「刺青」等の紋様を施しており、どこか一触即発の雰囲気を醸してもいたのです。
そんな内に・・・可憐に咲く、華二輪―――
こんなにも儚げで、嫋なる存在を、無為に散らす事もないのだろうに―――・・・
けれどもそうならなかったのは、偏に―――
今回はレヴェッカが、この事務所を持つ「組」に、話し合いを持ちかけたからに他なりませんでした。
穏便なる「話し合い」・・・それがこのまま無事に済めば、問題など起ころうはずもなかったのですが―――・・・
問題としなければならなかった事とは、レヴェッカが、今現在この「組」と、何かしらの「問題」を抱えているからに他ならなかった・・・
つまりは、そこで「なんの問題もない」事の方が不自然なほどに、緊張は高まりつつあったのです。
そして・・・話し合いの席に、「組」側の人間が着く事になり・・・
組:こいつぁ―――レヴェッカさん、お久しゅう・・・
レ:―――・・・
組:は・・・は・は・は―――相変わらずでんな。
で・・・なんです、今更「話し合おう」っちゅんは・・・
レ:・・・実はのぅ―――ここいらで、「麻薬」の横流しをしちょるバカタレがおるそうなんじゃが・・・ワレぁ知らんかいのぅ。
組:(・・・・・・)知りまへんなぁ―――
レ:ほうか・・・
ほうよのぅ―――わての縄張りで、麻薬を取り扱こうたら、どがぁな目に遭わされるか・・・ワレらの前で、証して見せたけんのぅ・・・。
組:(・・・・・・・・・・)そう云う事も・・・ありましたかなぁ―――
レ:それがよ、どう云うワケよ・・・
ここら界隈で、ワレんとこの三下が、麻薬の買い付けを受けた〜ちゅうて、わての耳に入って来とるんでぇ。
組:(・・・・・・・・・・・・・・・・)何かの、間違いじゃねぇんですかねぇ・・・
レ:「間違い」―――か・・・ほうであって欲しいよのう・・・
じゃがのう、こらァどう云うワケよ、一週間ほど前の新聞に、ワレらの系列の、小さい組が潰れたそうじゃないの。
組:(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)――――
レ:・・・いや、間違うた―――ありゃ、潰「された」んと違うんかいのう!
組:(・・・)何が―――仰りたいんで・・・
リリアには最初、レヴェッカの云っている事が判りませんでしたが、相手の方を見てみると、段々と血の気が失せて行く様に、
このレヴェッカの話しが、相手にとって随分と都合の悪い事ではないのか・・・と、察しがついてきました。
しかもそれは少なからず当たっており、黙ってレヴェッカの話しを聞いていた、この「組」の代表とは異なり・・・
やはり、血の気の多い「若衆」が―――・・・
若:てんめぇ〜〜この女ぁ・・・ふざけんなよ、くらぁ―――!!
手に武器を持ち―――リリア達二人に襲いかかろうとする、この「組」の若衆・・・
ですがしかし―――
リリアも、傭兵の経験がある為、こんな修羅場は幾つも踏んできていました。
だからそこで、「不意討ち」にも似たようなコレを―――
リ:・・・あれ? ひょっとしてこれがそう?
レ:(・・・・・・)
リ:いっやあ〜なんかあるなぁ――――って、期待してたのにさぁ・・・ホントにこれがそうなの??
うわっちゃあ・・・なんか悪いことしちゃったかなぁ。
組:バカ野郎! 手前等―――
リ:おいおい、ちょっと待ちなよ―――
あんた、こいつらを束ねてんだろ・・・だったら、判ってるはずだろうが。
この女の側で聞いてても、無茶を申し立てているのは、この私でさえ判ったんだぜ―――
だったらさ・・・いいのかよ・・・嘗められっぱなしで。
そんなんで、お前らの面子―――ってのが、穢されていくんだぜ・・・
組:(〜〜―――)ヤロウ共、やっまいな!!
その者は・・・全く意に介することなどなかった―――
自分に振り下ろされようとしていた刃を、恰も来るのが判っていたかのように余裕の表情で受け止め、剩、挑発までしてきたのです。
しかも、隣りにいた小さき女性も呆れるほどに、血気に逸る若衆を、焚きつけるだけ焚きつけてきた―――
向う見ずな・・・なのか―――それとも、自分の腕に余程の自信があるのか・・・
しかし終に、「組」の代表も、堪忍袋の緒が切れたモノと見え、一斉に襲いかかるよう、指示の号令を下したのですが・・・
実は、コレを待っていたのは、レヴェッカとて同じ事―――・・・
レ:出番じゃあ―――出てこいやあ!!
一体どこに伏せていたのか、レヴェッカ配下の「組員」が、突如として・・・どこからともなく湧いてきて、敵・味方入り乱れての大乱闘となってきたのです。
そして・・・終わってみれば、この「組」の構成員達は、全滅―――
リ:ふぅ・・・なんだよ、ちったぁ期待してたのに・・・つぅまんねえの。
レ:(・・・)あんたあ―――
リ:お? どうしたよ―――まさか、これで終わり・・・てな訳じゃねえんだろ。
レ:(・・・)フッ―――フフフ・・・あんたあ、ええのう・・・気に入ったわい。
リ:えへへ―――そか、気に云って貰えて、何よりだよ♪
その「組」の、総勢13名の血溜りの中で、「后」は嗤う・・・
それを見て、小さき女性は、自分の望みを叶えてくれそうな人物に出会えたのだと、直感したモノだったのです。
自分が可愛がっていた「姪っ子」―――
その娘を、廃人にし・・・殺してくれた「麻薬」を、レヴェッカは激しく憎みました。
嘗ては、自分が率先して、それを商品として取り扱ってきた事実があるのにも拘らず・・・
けれど、身内を亡くした―――そうした事件以来、レヴェッカは自分達の組織は固より、関連する「組」や「事務所」などに、
「取り扱わないように」―――と、禁止を触れこみ、それまで抑えさせていたと云うのに・・・
風の噂で聞くのには、自分の目を逃れた処で、「密売」によって横行させている―――と、知ることができたのです。
今回の出来事も、実はそう云った件の一つであった為、実力行使に出たまで・・・
それに、この組の代表には、自分と、「天帝の后」が同伴することを、予め吹き込んでおいた―――・・・
しかし、蓋を開けてみれば、その「后」こそが、『獰猛なる生物』だったのです。
=続く=