これは・・・とある存在の伝説―――

 

その存在は、他の誰よりも「善」を重んじ、世の誰もが、実は清廉潔白なのだ・・・と、信じて()みませんでした。

 

しかし、この世の半数の誰もは、罪を犯し、その存在の「善」なる部分を大いに刺激したモノでした。

けれどその存在は、その「世の半数の誰も」が、悪事に手を染めたりすると云うのは、そうした状況に追い込まれて「仕方なく・・・」と、そう理解していました。

 

そうした教義に、いつしかその存在は、最上の「徳」を与えられ、当時をして「御業を極めたる者」の一人として認められたモノだったのです。

 

ところが・・・それから間もなくして、「罪ある者」とされていた「世の半数の誰も」の内、ごく僅かの一握りの存在達が、その存在を狂わせてしまったのでした。

 

では、その「一握りの存在」とは・・・

「状況による、仕方のなかった悪事」―――などではなく

自らの趣好によるもの・・・

 

つまり、そうした者達の存在とは、その存在の矜持の根幹となる部分を揺るがせ

そして終に、その存在は―――・・・

 

聖職に措いての最高位を極めながらも、失道し

やがて・・・その極めたる御業を、自らの私利私欲のために行使する者の意―――

 

 

第二百六話;セノヴァイト

 

 

・・・と、呼ばれるようになったのです。

 

 

そして―――まだ更には、このような根も葉もない風聞まで飛び交い出したのです。

 

その存在こと「セノヴァイト」は、遥か以前から「呟き」のサイトを利用しており、

そのサイト内の仲間達との、普段の・・・何気ないお喋りで、そうした日常での鬱憤を晴らし、

後日に憂いを残さなかった―――そうなのです。

 

しかし、この「風聞」は、本当にそうなのでしょうか・・・

 

ですが、実に奇妙な事に、「セノヴァイト」が当時利用していた「呟き(ツイッター)」のサイトで、当時書き込まれたログが、今でもそのまま保管されていると云うのです。

しかも、その当時のログが、或る未遂の重大事件の直接要因とみなされ、当局によって差し押さえられるところとなり、

また同時に、その「呟き」のサイト・・・「魔女達の呟き」の、閉鎖の原因ともなった、「動かぬ証拠」でもあったのです。

 

では・・・その「当時のログ」―――とは・・・

 

 

 

マ:『お前達は(ケダモノ)だ・・・』

  『(ケダモノ)は・・・』

  『666(ビースト・オブ・ナンバー)の烙印を押されし者は・・・』

  『(いず)れ排除しなければならない・・・』

 

ス:『ちょ・・・「マーリーン」!』

イ:『いけません・・・明らかに暴走をしようとしています!』

ガ:『あわわ〜〜どーしよ〜!!』

ジ:『少し落ち着け!うろたえるな、「ガブリエ・セレスタ」!!』

 

マ:『我が道を阻まんとする者達よ・・・』

 

ぺ:『「スカータハ」! 「イセリア・クィーン」!』

 

マ:『これから・・・この「マーリーン」が、公正にして正大なる判決を申し渡す・・・』

 

イ:『・・・そう云えば、この大事な時に―――「エキドナ」はどこへと行ったの?』

 

マ:『全員死刑―――』

 

 

 

「全員死刑」―――そのショッキングな書き込みを最後に、これ以後、その「ツイッター」での利用が出来なくなり、

これが原因で、そのサイトは強制閉鎖・・・その代わりとして、このログが表示された「エキドナ」の端末は、当局によって差し押さえられたのです。

 

その事は、「エキドナ」自らが別の端末を使い、また別の交流サイトを通じて、当時の「七人の魔女(セヴン ・ シスターズ)」と呼ばれた仲間達5名に、釈明の義務を果たしていたのです。

 

而して、その「エキドナ」とは、誰あろう―――・・・

 

 

 

レ:(レヴェッカ=「イセリア・クィーン」)

  『くぅおら! ジル―――! おんどれは、なにをしくさっとんなら!!』

 

ガ:(ガラティア=「スカータハ」)

  『よしなよ―――レヴィ・・・それにしても、良かったのかい、あれで・・・』

 

エ:(エリーゼ=「ガブリエ・セレスタ」)

  『ジルさぁ〜ん、少し強引じゃったんじゃないんね〜?』

 

ジ:(ジィルガ=「エキドナ」)

  『・・・少し前から、彼女の書き込みに疑惑を抱いていましたら―――』

  『やはり、そうした書き込みの数日前に、「エヴァマ」で起こった大虐殺―――』

  『アレに端を発している事が判ってきたのです。』

 

ク:(クラリス=「ジェノヴァ」)

  『!! 無抵抗の者達を、殺戮した―――と、云うアレですか・・・!』

 

ル:(ルーシア=「ペイトリアーク」)

  『なかには・・・「純粋無垢」なるこどもも おられらるかし・・・』

  『いとあはれ(大変 哀しい)・・・なりにけり』

 

ガ:『しかし―――だからと云って、あいつほどの人間が、その事によって失道してしまった・・・とは、私はそうは思えない。』

  『誰か・・・いたんだね、少なくとも、私達が知っている「顔」が・・・』

 

 

 

すると、ジィルガからは、「ザッハーク」とだけ云うと、そのホット・ラインに出席していた者達の顔色が変わり始めました。

 

そう・・・彼女達は知っていたのです。

 

孤児であり、無垢であり、穢れを知らない一人の少年・・・

その彼を、「マーリーン」であるレイア=ゼノ=メーテルリンクが育て、

彼女自身が参加をしていた交流サイト―――「魔女達の呟き」に彼の成長を・・・少し惚気(の ろ け)ながらも、嬉しそうに書き込むレイアがいたのを、仲間の誰もが知っていたのです。

 

しかし・・・幸せは、そう長くは続きませんでした―――

 

それに、今にして思えば、破滅への階段は、既にこの時に始まっていたのではないか・・・とさえ、思われていたのです。

 

それと云うのも、レイアが手塩にかけ、大事に育ててきた「彼」が、

何も云わず・・・育ての親でもあるレイアの下より、離れてしまった・・・

 

その事に、最初は悲観に暮れたモノだったのですが、仲間の一人である「スカータハ」ことガラティアから、

「巣立ち」ではないのか・・・と、諭され、どうにかその時は、収まりを見せたモノだったのです。

 

それからと云うモノは、以前の通り愉しいお喋りに花を咲かせたモノでしたが、

例の事件―――「エヴァマの大虐殺」により、事態は一変してしまったのです。

 

そう・・・あの事件を、各報道により全宇宙の誰もが知る処となりましたが、

不思議と、実行者と見られる「虐殺者」本人の全容は、判らずじまいだった・・・

 

ただ一つだけ―――現場に遺された、不可解な紋様・・・

 

しかも「それ」は、虐殺された、その惑星の住人の血で綴られたモノ・・・

 

けれど、「スカータハ」を含める、他の「七人の魔女(セヴン ・ シスターズ)」達・・・

そして、全宇宙の誰もが、この「血で綴られた紋様」の「意味」までは、理解するには至らなかったのです。

 

ただ一人・・・「マーリーン」である、レイアを除いては―――

 

 

そう・・・皮肉にも、レイアだけは知っていたのです―――

その「紋様の意味」―――とある聖人を、その弟子の一人でありながら、裏切り、聖人を磔刑にまで及ばせた者・・・

「ユダ」―――

 

そう云えば・・・自分が育てた少年も、その紋様に異状なまでの興味を示していた―――

 

そこで、「もしかしたら」・・・との想いで、例の事件直後に、「彼」に会っていたのかもしれない・・・

そして・・・変わり果ててしまった、「彼」の姿を、直視してしまったのかも、しれない・・・

 

あんなにも無垢で―――あんなにも無邪気で―――あんなにも穢れを知らなかった存在が・・・

 

どうした経緯で、「悪堕ち」をしてしまったのか―――

 

ただ一つ云えた事とは、「純白は、何色にも染められてしまう」・・・

 

もしそれが、「聖人」や「善なる者」を騙りし悪―――だった場合・・・どうであるのか。

それは最早、語るまでもなかったことでしょう・・・

 

それに、最悪の事態は避けられませんでした―――

 

さある事実・・・自分が手塩にかけ、育ててきた者の仕業であると知った聖職者は、その一件以来変貌してしまい、

この世の総てを、破滅へと導くシナリオを描き始めた―――・・・

 

その第一歩として、自らが共有交流サイトを立ち上げ、奇しくも―――そのサイトの名も、利用者も、

以前自分が利用した事のあるモノと同じ仕様に仕立て上げたのです。

 

そう・・・「魔女達の呟き」然り―――「七人の魔女(セヴン ・ シスターズ)」然り―――

 

けれど、彼女自身は、以前使用していた「マーリーン」から、「ヴィヴィアン」と代えて名乗り始めた・・・

 

こうして、現在存在する彼女達は、以前の魔女達とはその趣を変え・・・

世界を破滅に導かんとする「罪ある者」と認定されたのです。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと